ツムラグループ コーポレートレポート 2016
41/68

医療用漢方製剤を処方していない医師があげる一番の理由は、科学的根拠がないというものでした。そこで、近年の疾病構造を見据え、医療ニーズの高い領域において新薬治療で難渋している疾患で、医療用漢方製剤が特異的に効果を発揮する疾患に的を絞り、エビデンスを確立することを「育薬」と名付け、2004年度から取り組みを開始しました。現在は、全129処方の中から大ダイケンチュウトウ建中湯・六リッ君クン子シ湯トウ・抑ヨクカンサン肝散・牛ゴ車シャ腎ジンキガン気丸・半ハン夏ゲ瀉シャシントウ心湯の5つを育薬処方とし、エビデンス確立に向けた基礎・臨床研究を推進しています。これら、育薬5処方を中心とした基礎・臨床的エビデンスの確立に加え、副作用発現頻度調査や相互作用といった安全性データの構築、育薬5処方他の主要成分レベルでのADME※(薬物動態)の解明を3つの柱として、活動を推進しています。また、国内外での医療用漢方製剤の基礎・臨床研究および米国における開発をより一層推進することを目的として、2013年度に「製品戦略本部」を設立し、育薬処方をきっかけに使用が広がりつつある他処方の研究体制も整えました。※ADME:Absorption(吸収)、Distribution(分布)、Metabolism(代謝)、Excretion(排泄)の頭文字の略語。生体に薬物を投与した後に、体内でどのような動態を示すかをみる。大建中湯の当該対象疾患・症状における臨床的エビデンス確立を目的として、2007年に「DKTフォーラム」が設立されました。このフォーラムでは、4つの臨床研究(大腸班、肝外科班、胃・食道班、臨床薬理班)と、大建中湯の作用メカニズム解明を目的とした基礎研究が開始されました。この研究結果は国内外の学会などで発表され、2015年には、Journal of the American College of Surgeons(JACS)誌など、すべての結果が英文誌に掲載されました。現在の消化器外科領域では、手術後早期回復の観点から、ERASプロトコル※という考え方が注目されています。大建中湯においても、消化管運動亢進、腸管血流増加、抗炎症などの作用があり、このERASプロトコルに合致する医薬品として、その有効性が検討されています。現在、全国14の施設において、成人肝臓移植後の消化管障害に対する有効性に関する検討が実施されています。また、手術の負担が少なく、手術後早期回復に役立つとされる腹腔鏡下手術における腹部膨満感に対する研究も開始されました。※ERASプロトコル:手術後の早期回復に有効なことが医学的に証明された手法を総合的に導入する管理方法。(ERASは、Enhanced Recovery After Surgeryの頭文字の略)六君子湯においては、これまで実施されたさまざまな臨床研究に基づき、2015年に改訂された『胃食道逆流症診療ガイドライン(日本消化器病学会編集)』に治療手段としてとりあげられました。また、健常人を対象としたADME(薬物動態)臨床試験の結果が、2015年7月医学雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。さらに2016年度から副作用発現頻度調査を開始し、有効性とともに安全性の情報も充実させていく予定です。今後の消化器内科領域の展開として、六君子湯の研究により得られた知見をもとに、六君子湯の効果が不十分な患者様に対して、半夏瀉心湯など他処方の研究をすすめ、漢方製剤の有効性を追求していきます。一方、2016年度~2021年度新中期経営計画における重点3領域のひとつである高齢者関連領域に対して、六君子湯を中心に食欲不振などに対する有効性を確認する臨床研究に着手する予定です。●対象疾患・症状術後イレウス(腸管麻痺)などに伴う腹部膨満感●対象疾患・症状FD(機能性胃腸症)、GERD(胃食道逆流症)などに伴う上腹部不定愁訴、食欲不振コーポレートレポート 201640

元のページ 

page 41

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です