ツムラグループ コーポレートレポート 2016
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●対象疾患・症状認知症の行動・心理症状(BPSD※)※ BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia (興奮、焦燥感、睡眠障害など)抑肝散は、2004年度からエビデンス集積に取り組み、作用メカニズムの解明、活性成分が同定され、その成分が血中に吸収されることが健常人で確認されました。臨床では、認知症の行動・心理症状(BPSD)への効果確認や副作用発現頻度調査が行われ、有効性や安全性のエビデンスが集積されています。その結果、『認知症治療ガイドライン2010(日本神経学会監修)』『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(日本老年医学会編集)』に掲載されるなど、広くBPSDの治療方法として知られるようになりました。また最近では、認知症患者様を対象とした睡眠障害の臨床研究結果が、The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease誌に掲載されるなど、不眠症や不安神経症などの精神神経症状を有する疾患に幅広く臨床応用されています。今後も、抑肝散の研究により得られた知見をもとに、BPSDにおける抑肝散類似処方の使い分けや、抑肝散の効果が不十分な患者様に対して、他処方の研究をすすめ、漢方製剤の有効性を追求していきます。 漢方研究は海外でも注目されており、米国消化器病週間(DDW※1)や米国生物学的精神医学会(SOBP※2)で、育薬処方などの研究結果が発表されています。2015年度のDDWでは、11演題(大建中湯2演題、六君子湯9演題)が発表されています。※1 DDW:米国で毎年開催される消化器関連の学術集会(Digestive Disease Week)※2 SOBP:米国生物学的精神医学会(Society of Biological Psychiatry)牛車腎気丸は抗がん剤投与にともなう末梢神経障害(しびれ・痛み・冷感)に対して、半夏瀉心湯は化学療法(抗がん剤投与)や放射線療法にともなう消化管粘膜障害(下痢・口内炎)に対して、それぞれの症状の軽減を目的に研究がすすめられています。その結果として、半夏瀉心湯のがん化学療法中の口内炎に対する有効性を示唆するHANGESHA-G Study論文が、Chemotherapy and Pharmacology(CCP)誌に2015年5月掲載されました。また、六君子湯は抗がん剤投与による悪心や食欲不振に対して、抑肝散はモルヒネ投与や手術直後のせん妄に対してなど、がん領域におけるエビデンス構築に向けて多くの基礎・臨床研究ならびにGCP※に準拠した製造販売後臨床試験が実施されています。さらにがん領域でニーズの高いがん関連疲労における漢方製剤の有効性についても検討がすすめられています。※GCP(Good Clinical Practice):医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令●対象疾患・症状抗がん剤などによる末梢神経障害(しびれなど)●対象疾患・症状抗がん剤などによる粘膜障害(下痢・口内炎)※英国のSpringer-Nature社が発行元、世界的に著名なNature誌の姉妹誌。質の高い広範な科学論文を掲載することで、インパクトファクターも極めて高い。六君子湯の基礎研究で、食欲亢進ホルモンであるグレリンに対する分泌低下抑制・分解抑制・シグナル増強作用などが解明され、がん患者様や高齢者の食欲不振などにも臨床応用されています。2016年2月に国内の大学、研究機関、当社が参加した六君子湯グレリンプロジェクトによる基礎研究の成果がMolecular Psychiatry誌※に掲載されました。今回の実験では、漢方製剤の六君子湯の処置により内因性(生体内の)グレリンを刺激し、老化促進マウスの寿命を延長させたことを見出しました。コーポレートレポート 201641

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