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皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)・かゆみ

皮膚掻痒症・かゆみのまとめ

<皮膚掻痒症・かゆみとは>

冬の乾いた外気と、皮脂の欠乏、発汗の低下などが合わさって生じる皮膚の病気で、病名の通りかゆみが強いのが特徴です。

<皮膚掻痒症・かゆみの治療>

漢方医学の視点

漢方で皮膚掻痒症は、皮脂の欠乏や皮膚の乾燥が原因となっていることから、「気・血・水」の水の不足により起こっていると思いがちですが、実際は「血虚」が原因であると考えられています。

<病院での診察>

漢方薬の良さは、皮膚のかゆみで生じる皮膚以外の問題を改善できること、また一定期間飲み続けることで、皮膚が乾燥しにくいよう体質改善が望めること、などが挙げられます。

皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)・かゆみのメカニズム・西洋医学の考え方

冬の乾いた外気と、皮脂の欠乏、発汗の低下などが合わさって生じる皮膚の病気で、病名の通りかゆみが強いのが特徴です。皮脂の分泌が少なくなる高齢者や妊娠中の女性に多い病気とされています。
皮膚は乾燥して粉が吹いて、白っぽくなっていることが多く、掻いたあとが赤くなり、掻き壊すことで血がにじんだり、色素沈着が起こったりすることもあります。

皮膚掻痒症をはじめ、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(じんましん)など、皮膚の病気にはかゆみを主訴とするものが数多くあります。
皮膚は、表皮と真皮、皮下組織という3つの層からできています。
表皮の一番外側にあるのが角層で、水分を豊富に含んでいます。真皮には、表皮に栄養や酸素を運ぶ毛細血管が張り巡らされています。表皮と真皮には痛みやかゆみなどを感じる知覚神経が伸びています。毛糸のセーターを着るとチクチクしてかゆくなるのは、この知覚神経の末端が刺激されるためです。
皮膚掻痒症では、皮脂の欠乏や発汗の低下などによる角層の乾燥によって、外部の刺激から皮膚を守るバリア機能が失われるため、知覚神経が刺激を受けやすくなり、かゆみが生じやすいのです。

皮膚掻痒症

皮膚掻痒症の薬物治療

治療は皮膚の乾燥を防ぐため、保湿剤(ヘパリン類似物質やセラミド、ヒアルロン酸など)のクリームやローションを塗る治療が主体となります。かゆみがひどい場合は、一次的にステロイド薬を使うこともあります。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬など、かゆみを止める内服薬を使うこともありますが、効果が十分でないこともあります。
また、室内でエアコンなどの暖房器具を使う際は加湿も欠かさないなど、部屋の湿度を一定に保つ(一般に、室内で快適な湿度は40〜60%とされている)といった環境改善も、症状改善には大切です。

かゆみは痛みと違い、掻くという行為によって解消できる症状です。しかし、一度、掻きはじめると、掻くこと自体が刺激となってさらにかゆみを増すという悪循環が生じてしまいます。強いかゆみは大きなストレスとなり、睡眠障害が起こったり、イライラから人間関係が壊れてしまったりする例もあります。
“たかがかゆみ”とあなどらず、適切な治療を受け、しっかり治すことが大事です。

また、皮膚掻痒症の多くは加齢や体質の変化によって起こる良性の病気ですが、なかには腎臓や肝臓の病気、糖尿病、甲状腺の病気、がん、薬の副作用などが原因となることもあります。一度、専門の医師に診てもらうことをお勧めします。

漢方医学ではこう診る

漢方では、漢方の独特な考え「気・血・水(き・けつ・すい)」から不調を探っていきます。皮膚掻痒症は、皮脂の欠乏や皮膚の乾燥が原因となっていることから、「気・血・水(き・けつ・すい)」の水の不足により起こっていると思いがちですが、実際は「血虚(けっきょ)」が原因であると考えられています。
血は全身に酸素や栄養を行き渡らせる役割があるので、血の循環が滞ると皮膚に栄養が行き渡らなくなり、皮脂や汗の分泌低下が起こってきます。それが皮膚の乾燥をもたらすわけです。

漢方では、こうした皮膚の症状に加え、睡眠障害、精神不安など合わせ持つ症状や、体格、表情などをもとに、その人に適した漢方薬が処方されます。
具体的には、とくに血虚が顕著で乾燥が強い患者さんには当帰飲子(とうきいんし)などを、不眠症や精神不安などメンタル的な要素も加わっている患者さんには加味帰脾湯(かみきひとう)などを、高齢者で体質的に虚弱な患者さんには、人参養栄湯(にんじんようえいとう)などを用いることもあります。
もちろん、漢方薬の服用だけでなく、乾燥を防ぐ保湿剤の使用、環境の改善などは必要です。

皮膚掻痒症・かゆみで用いられるおもな漢方薬

黄連解毒湯
(おうれんげどくとう)
体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色が赤く、いらいらして落ち着かない傾向のある方の湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみなど
消風散
(しょうふうさん)
体力中等度以上で、かゆみが強くて分泌物が多く、
ときに局所の熱感がある方の湿疹・皮膚炎、蕁麻疹など
当帰飲子
(とうきいんし)
体力中等度以下で、冷え症で、皮膚が乾燥する方の湿疹・皮膚炎、かゆみなど
六味地黄丸
(ろくみじおうがん)
体力中等度以下で、疲れやすい方のかゆみ、むくみなど
牛車腎気丸
(ごしゃじんきがん)
体力中等度以下で、疲れやすく、四肢が冷えやすくむくみがある方のかゆみ、しびれなど
真武湯
(しんぶとう)
体力虚弱で、冷えがあって、疲労倦怠のある方の湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみなど
など

漢方薬の良さは、皮膚のかゆみで生じる皮膚以外の問題を改善できること、また一定期間飲み続けることで、皮膚が乾燥しにくいよう体質改善が望めること、などが挙げられます。

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、ご自身の症状とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも病気の原因を探るために必要な診察です。

*すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。

【監修医師】
九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野 教授 古江増隆先生

1980年 3月東京大学医学部 卒業、1986年 2月〜 1988年7月米国National Insititutes of Healthに留学、1988年12月東京大学皮膚科学講師、1992年 2月山梨医科大学皮膚科助教授、1995年 5月東京大学皮膚科助教授1997年10月九州大学皮膚科教授、2002年 4月〜 2004年3月九州大学病院 副院長兼任2008年 4月〜九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター長 兼任、2011年 1月〜2014年12月九州大学医学研究院 副研究院長 兼任 現在に至る。
所属学会・認定・資格 日本皮膚科学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本アレルギー学会指導医