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疲労

疲労のまとめ

<疲労とは>

長時間の運動や労働、精神的な作業をすることによって体に起こる生理的な現象が疲労です。体が重い、だるいなどの全身症状、肩や腰のこり、眼がショボショボして見えにくい、頭痛といった肉体的な症状のほか、やる気が起きない、悲観的になる、集中力がないというように、精神面の症状も起きてきます。疲労を回復するためには、まず栄養をとり、ゆっくり体を休めることが大切。それでも回復できない場合は、がんや甲状腺、肝臓、心臓などの病気の症状として現れている可能性もあります。

<疲労の治療>

漢方医学の視点

漢方では、体内には生命活動をコントロールする「気・血・水(き・けつ・すい)」があり、疲労はこれらの不調和が原因であると考えられています。「気」のアンバランスを整えたり、気を強めたりすることが大切となってきます。加えて、体に栄養を運ぶ「血」を補う必要があります。こうした治療を行なうことで、胃腸も丈夫になって食欲がわき、栄養分の吸収も速やかに。元気な体を取り戻すことができます。

<病院での診察>

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。疲労とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも疲労の根本的な原因を探るために必要な診察です。また、体質改善を目的にする場合は長期服用が必要となりますので、根気よく飲み続けることが、疲労改善の最大の鍵となります。

疲労のメカニズム・西洋医学の考え方

1998年に行われた厚生労働省の疫学調査によると、疲労感を自覚している人の割合は、約60%でした。しかも疲労を感じている人のうち、37%もの人が6ヵ月以上も疲れを感じている、「慢性疲労」であることが分かりました。それほど一般的である疲労ですが、そのメカニズムについてはよく分かっていない点が多いようです。

疲労とは、一般的には心身が消耗し回復のための休息を必要としている状態とされています。つまり、疲労には肉体的なものと精神的なものとがあり、通常はこの双方が複合した状態が疲労として感じられるのです。しかし、現代人の疲労の原因はストレスによる脳の疲れが主と考えられ、身体症状はその結果と考えられます。そして疲労が溜まると、単に「疲れた」という状態にとどまらず、仕事や勉強などの効率を低下させたり、ミスが生じやすくなったりします。
実はこうした症状は脳が発するSOS信号であることが分かってきています。疲労を感じる部分は体の部分、いわゆる筋肉や骨、内臓ではなく脳で、疲れが出てくると、脳は自らの活動水準を下げて、眠気やだるさ、集中力の低下、身体各部の違和感(頭痛や肩こりなど)といった、いわゆる「疲労感」を演出することにより、休息を督促し、体を守っているというのが最近の考え方です。

疲労の治療

このような理由から、一般的には疲労という状態は病気ではないと考えられています(慢性疲労症候群という病的な状態をのぞく)。ですから、基本的に西洋医学では薬などによる治療は行いません。その代わりに日々自分自身が体調に注意をはらい、脳が発信する疲労感というSOS信号を素直に受け入れ、小休止や休息、睡眠、数日間の休養、栄養補給という疲労回復の方法を適宜、とることが必要となります。

疲労のサイン

からだの症状

足やからだ全体がだるい、重い、頭が痛い、ぼんやりする、目が疲れてショボショボする、動作が遅くなる、あくびが頻繁に出る、眠い、腰が痛い、肩がこる、めまいがするなど

精神的な症状

集中力がなくなる、考えがまとまらない、イライラする、根気がなくなる、ミスが多くなるなど

ただしこうした疲労対策を行っていても、疲労が回復できない場合は、がんや甲状腺、肝臓、心臓などの病気の症状として現れている可能性もありますので、必要に応じて検査を受けることをおすすめします。

漢方医学ではこう診る

漢方では、体内には生命活動をコントロールする「気・血・水(き・けつ・すい)」があり、疲労はこれらの不調和が原因であると考えられています。とくに「気」は血と水を統合する生命エネルギーととらえられているため、疲労を解消するには気のアンバランスを整えたり、気を強めたりすることが大切となってきます。加えて、体に栄養を運ぶ「血」を補う必要があります。こうした治療を行なうことで、胃腸も丈夫になって食欲がわき、栄養分の吸収も速やかになり、元気な体を取り戻すことができます。

疲労を改善する目的の漢方薬として代表的なものは、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)で、だるい、気力が出ない、食欲がないといった状態に、使用されます。気力ばかりでなく、体力も回復させてくれる処方です。年齢的な衰え、夏ばてや病後の回復期にもよく用いられる方剤です。
「気虚」に加えて、皮膚がかさついたり体重が減少したりという「血虚」の症状も伴うときは、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)が用いられます。人参養栄湯(にんじんようえいとう)を使うこともあります。

疲労に使われることの多い漢方薬

補中益気湯
(ほちゅうえっきとう)
体力虚弱で、胃腸の働きが衰えて、疲れやすい方の虚弱体質、疲労倦倦怠 など
十全大補湯
(じゅうぜんたいほとう)
体力虚弱な方の病後・術後の体力低下、疲労倦怠など
人参養栄湯
(にんじんようえいとう)
体力虚弱な方の病後・術後の体力低下、疲労倦怠、貧血など

など

胃下垂に伴って疲労感、冷え、無気力がある方の胃腸症状に、四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)などの漢方薬が使われます。

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、疲労とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも疲労の根本的な原因を探るために必要な診察です。また、体質改善を目的にする場合は長期にわたる服用が必要となりますので、忘れずに根気よく飲み続けることが、疲労改善の最大の鍵となります。もちろん漢方薬だけに頼らず、栄養がある食べものをとり、睡眠をたっぷりとり、規則正しい生活習慣を送ることも疲労回復に大切です。

*すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。

【監修医師】
北海道漢方医学センター北大前クリニック 本間 行彦 先生

1936年札幌市生まれ。1961年北海道大学医学部卒業。1966年北海道大学大学院卒業、同学第一内科助手、講師を経て1987年同学医学部・保険診療所・教授となる。1994年北海道大学保健管理センター所長併任。 2000年北海道大学名誉教授、北海道漢方医学センター・北大前クリニックを開設。呼吸器疾患、とくに間質性肺炎・肺線維症の研究を進める傍ら、昭和51年から漢方医学の研究を深め、その正しい理解と普及に精力的に取り組んでいる。著書に『本気で長生きしてみませんか』(北海道出版社)、『漢方 ここまで治る』(共著、北海道出版社)など。