安全性情報

医薬品・医療用具等安全性情報
Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No.200
この医薬品・医療用具等安全性情報は,厚生労働省において収集された副作用情報をもとに,医薬品・医療用具等のより安全な使用に役立てていただくために,医療関係者に対して情報提供されるものです。

平成16年(2004年)4月
厚生労働省医薬食品局

(関係箇所)
2.呼称が類似していることから,誤って輸入された場合に
副作用が問題となる生薬及び製剤について


(1) 概要
 アリストロキア酸はウマノスズクサ科の植物に含有される成分であり,これにより腎障害が引き起こされることは,医薬品・医療用具等安全性情報No.161(平成12年7月号)にて既に注意喚起したところであるが,その後も国内外で,アリストロキア酸による腎障害(アリストロキア腎症,海外ではchinese herb nephropathy:CHNという)が報告されている。これらの報告は,中国や台湾などから個人使用を目的に国内に持ち込まれた伝統薬製剤(中国や台湾では,中薬又は中成薬といわれる),煎じ薬並びにこれらと類似する健康茶などの健康食品によるものである。なお,国内で医薬品として承認されている生薬及び漢方製剤にはアリストロキア酸は含有されていない。
 最近,アリストロキア酸を含有する広防已(現代中国の簡体字では「广防己」と記載)という生薬が誤って漢防已として国内に輸入されて流通し,日本薬局方ボウイとして用いられ,アリストロキア腎症を発症したと思われる事例が報告された。これらの生薬は形態が類似し,かつ,呼称も類似していることが,取り違えを起こしやすい原因の一つと考えられる。したがって,国内で承認された医薬品(生薬及び漢方製剤)では問題とならないものの,渡航先での購入やネット販売による個人輸入の際に,アリストロキア酸の含有が疑われる生薬を用いた製剤を購入して服用する可能性があることから,以下に,参考として,中国などで用いられる生薬であって呼称が類似することにより副作用等が問題となる生薬に関する注意点をまとめた。
 なお,「漢方薬」とは,日本で確立された漢方医学の治療に沿うように生薬を一定の規則により配合したものであり,中国などで販売されている「伝統薬製剤(中薬又は中成薬)」とは品質・規格が異なる。また,以下の「漢方製剤」とは,医薬品(一般用及び医療用)として承認を取得している「漢方薬」を指す。



(1) 注意を要する生薬
1) 木通(モクツウ Mutong)
 日本国内で「生薬として流通している木通」及び「漢方製剤の中で原料として用いられている木通」は日本薬局方で定められているモクツウである。この原植物はアケビ Akebia quinata Decaisne 及びミツバアケビ Akebia trifoliata Koidzumi(Lardizabalaceae)のつる性の茎であり,アリストロキア酸は含有していない。しかし,中国などでは,利尿作用などの薬効が顕著であるとのことから,腎毒性のある関木通(Guanmutong)が用いられることがあるので注意が必要である。
 関木通は現代中国の簡体字では「※木通」と記載されているが,単に「木通」と書いてあるものの実際には関木通が用いられている場合がある。関木通の起源植物は,キダチウマノスズクサ Aristolochia manshuriensis Kom.であり,これはアリストロキア酸を含有している。また,中国などでは,ウマノスズクサ科であるオオバウマノスズクサ Aristolochia kaempferi Willd.(淮通)なども木通として流通することがある。したがって,中国などの製品で「木通」と表示されている場合には注意が必要である。
※・・・「関」からもんがまえを除いた字である。(詳細は医薬品医療機器総合機構サイトのpdf参照)


2) 防已(ボウイ Fangji)
 日本国内で「生薬として流通している防已,漢防已並びに木防已」及び「漢方製剤の中で原料として用いられている防已,漢防已並びに木防已」は,いずれも日本薬局方で定めるボウイである。この原植物は,オオツヅラフジ Sinomenium acutum Rehder et Wilson(Menispermaceae)のつる性の茎及び根茎であり,アリストロキア酸は含有していない。しかし,中国などでは,利尿作用などの薬効が顕著であることから,アリストロキア酸を含有する「广防己(Guangfangji)」(Aristolochia fangchi Y.C. Wu ex L.D. Chow)が用いられている場合があるので注意が必要である。類似した名称で「粉防己」(原植物はツヅラフジ科のシマハスノハカズラ Stephania tetrandra S. Moore)があり,これ自体はアリストロキア酸を含有せず毒性はないが,外国で广防己と取り違えたために多数の腎障害の患者が発生したとの報告がある。また,単に「防己」と記載してあっても,略称表示であり,実際には「广防己」が用いられている場合があるので注意が必要である。
 なお,日本,中国とも歴代の本草書では,防已(ボウイ),防己(ボウギ,ボウキ)の両者を用いているが,現代では日本薬局方では,防已(ボウイ)と規定され,中国では,薬典で防己(Fangji)と規定しており,両国で,以下のとおり漢字表記も異なっている点にも注意が必要である。
ボウイ = 防已  ……日本
ボウキ = 防己  ……中国
(已と己で字が異なる。)


3) 細辛(サイシン Xixin)
 細辛は,日本では地下部の根と根茎を生薬として用いており,腎毒性のあるアリストロキア酸を含有する地上部は,第14改正日本薬局方において用いてはならないこととされている。日本国内で流通している「生薬としての細辛」及び「漢方製剤の中で原料として用いられている細辛」は,日本薬局方で定める細辛である限り,アリストロキア酸を含有していないため問題はない。この原植物は,ケイリンサイシン Asiasarum heterotropoides F. Maekawa var. mandshuricum F. Maekawa(Aristolochiaceae)及びウスバサイシン Asiasarum sieboldii F. Maekawaである。しかし,中国などでは,アリストロキア酸を含有する可能性のある地上部を含めた全草が生薬として流通しており,日本においても混入する可能性があるので注意が必要である。



4) 木香(モッコウ Muxiang)
 木香は,日本薬局方ではSaussurea lappa Clarke(Compositae)の根とされており,アリストロキア酸は含有していない。中国などではアリストロキア酸を含有する「青木香」(ウマノスズクサ Aristolochia debilis Sieb. et Zucc.)及び「南木香」(Aristolochia yunnanensis Franch.)が木香として用いられることがあるので注意が必要である。