東邦大学
医学部外科学第三講座
長尾 二郎 氏
外科漢方研究会では,本年5月10日から6月3日にかけて,臨床外科領域における漢方使用実態と漢方外来に関するアンケート調査を実施した(図1).長尾氏の発表は同調査の結果報告である.
調査対象は全国臨床研修指定病院1,068施設で,381施設が回答,回収率は36%であった(表1).回答者の外科専門分野は,消化器外科が87%(重複回答あり)と最も多い(図2).
アンケート実施要綱
アンケート回答者の外科分野(重複あり)
漢方外来の現状
外科診療科として既に漢方外来が設置されている施設はみられなかった.しかし,「設置予定」「将来的に設置したい」との回答は計43施設(11%)から得られている.また,21施設(5%)では,外科診療科以外の他部門で漢方外来が設置されているとのことであった.
漢方薬は治療成績の向上に貢献
漢方薬の使用状況については,「大部分の例で使用」と「使用する例もある」を合わせて,90%以上の施設で使用されていることがわかった(図3).全外科患者における使用頻度は,5%および10%が多い(図4).
漢方薬の使用状況
漢方使用施設における漢方薬の使用頻度
漢方薬に対する印象としては,「有効な例が多い」との回答が23施設(7%),「症例によっては有効である」が287施設(86%)であった.また,治療成績に対する漢方薬の影響については,80%以上の施設で成績向上に貢献していることがうかがえる(図5).
漢方薬の治療成績に対する影響
一番人気は大建中湯
最も汎用されている処方は大建中湯(TJ-100)で,使用施設の割合は87%に達しており,対象疾患は術後イレウス(68%),術後腸管麻痺(43%),術後便通異常(37%)などであった.TJ-100と同じく消化器疾患に用いられる六君子湯(TJ-43)は,32%の施設で使用されており,主な対象疾患は胃切除後の逆流症状と腹部不定愁訴(それぞれ18%)である.
TJ-100に次いで使用頻度が高いのは,十全大補湯(TJ-48)と補中益気湯(TJ-41)の補剤で,それぞれ61%,55%の施設で使用されていた.主な使用目的は,いずれも術後QOL改善と抗癌剤副作用軽減である.
その他の方剤については表2に示すとおりで,イリノテカン由来の下痢に対する半夏瀉心湯(TJ-14)など,文献で報告されたエビデンスに基づいて使用されているものも散見された.
処方・疾患別の使用施設割合
今回のアンケートでは,臨床外科領域の様々な場面で様々な漢方薬が応用されている実態を明らかにできた,と長尾氏は結論している.
漢方外来のメリットとは
長尾氏の勤務する東邦大学医療センター大橋病院では,本年5月より漢方外来が開設されている.本シンポジウムの総合討論では,同外来のメリットとして,急性期疾患などへの対応に追われることなく,じっくりと時間をかけて患者に向き合えることが同氏によって指摘された.まだ漢方外来を導入していない施設の医師にとって,示唆に富む発言であろう.
編集・制作:株式会社ライフ・サイエンス