荒井 啓行 氏東北大学大学院医学系研究科 先進漢方治療医学講座 教授
■ 抑肝散のBPSDに対する臨床効果
荒井氏は冒頭、漢方医学における「肝の陽気」の病的亢進は、不随意運動・徘徊などに現れるという成書の記載から、「抑肝散のBPSDに対する効果が推測されました」と抑肝散に注目した最初のきっかけを語り、講演を始めた。
オブザーバーブラインドによる52症例による比較臨床試験では、抑肝散(TJ-54)を投与1週間後より精神症状スコア(Neuropsychiatric Inventory Score;NPI)が平均で18.4下がり(図5)、身体機能、つまりADLの尺度となるBarthel Indexは平均で6.5上昇した(図6)。荒井氏は、抑肝散投与後は妄想、幻覚、徘徊が消失し、介護上の大問題を解決する治療薬として大きな期待ができると述べた。抑肝散は精神症状を抑えながら、しかも身体機能を上向きにするという特長があり、抗精神病薬とは異なる有用な効果が認められた。 |
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■抑肝散を難病“レビー小体病(DLB)”の治療に応用
抑肝散は西洋薬では満足な治療ができないレビー小体病(DLB)にも効果が認められた。幻視体験が特徴であるレビー小体病は抗精神病薬を投与すると過敏な反応(急激な悪化)を示すため、これが使用できない。そこで抑肝散を投与すると幻視に対するスコアが改善し、完全に消失した著効症例も経験した(図7)。 |
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■アルツハイマー病の根本的治療薬
現在のアルツハイマー病治療薬は神経賦活作用が主であり、アミロイド蛋白の除去を目的としたものではないため、アルツハイマー病の根本的治療薬にはなり得ない。そこで荒井氏らは、漢方薬によるアルツハイマー病の治療法の確立を目的とし、アミロイド蛋白の凝集抑制作用および凝集した蛋白の分解作用を有する生薬を探索した。その結果、釣藤鈎にはアミロイド蛋白凝集抑制作用が認められた。凝集したアミロイド蛋白に釣藤鈎の抽出成分(水、メタノール、エタノール抽出)を投与するとアミロイドが溶出していくことが確認された。
荒井氏は「アルツハイマー病の漢方治療がグローバルスタンダードになることが期待できます」と講演を締めくくった。 |