INTERVIEW わたしの#OneMoreChoice

誰もが心地よく生きるための
新しい選択肢についてお話を伺いました。
いろいろな選択肢から、あなたにとっての
#OneMoreChoiceをみつけませんか?

#014

「痛みや不調も、
人生の1ページとして考える」
高野志穂さんが備える、更年期の対処法

高野 志穂さん/俳優

2021年から、不調や「隠れ我慢」について
発信をしてきた #OneMoreChoice プロジェクト。
これまでもライフステージごとの健康や、それらを
取りまく課題と対策について対話を重ねてきました。
今回は、更年期世代とその時期の不調に関する
コミュニケーションについて、俳優の北村有起哉さん、
高野志穂さんご夫妻に伺います。
地方での長期の撮影など心身へ負担も多いお仕事を
こなす2人は、日々のストレスや体調不良に
どのような対処をしているのでしょうか。
後編は「その時々の苦しみに翻弄されすぎず、
楽しく生きたい」と話す高野さんにお話を伺います。

2021年から、不調や「隠れ我慢」について発信をしてきた #OneMoreChoice プロジェクト。
これまでもライフステージごとの健康や、それらを取りまく課題と対策について対話を重ねてきました。
今回は、更年期世代とその時期の不調に関するコミュニケーションについて、
俳優の北村有起哉さん、高野志穂さんご夫妻に伺います。地方での長期の撮影など心身へ負担も多いお仕事をこなす2人は、日々のストレスや体調不良にどのような対処をしているのでしょうか。
後編は「その時々の苦しみに翻弄されすぎず、楽しく生きたい」と話す高野さんにお話を伺います。

20代は無頓着。40代になって
体への意識が変わった

──「更年期」という言葉について、
どのようなイメージをお持ちでしょうか。

のぼせやほてり、骨密度の減少、汗をかきやすく
なる、
というイメージがありますね。

私自身はまだ更年期の症状を感じたことは
ありませんが、
20代の頃に若年性更年期かも
しれないと考えたことはあります。

自律神経の問題なのか、
ふとした時に頭からひたすら汗が出てくる状態が
数年続きました。

それ以外は普通だったので、
当時は体調不良だと感じていませんでしたし、
若いから病気だとも思いませんでした。
結局何もせず、
気がついたら症状はなくなっていました。

──忙しいと、自分の体調のことは
後回しになってしまいますよね。

そうですね。今思えば、
20代の頃は体に対して無頓着でした。

一方で、自分に対して気遣うことを覚えてからは、
体の好不調に気づきやすくなったと感じます。

シミができて変わってきた顔も
いいもんだなって思います

──「更年期」は誰もが通るライフステージである
一方、
女性の7割以上がネガティブなイメージを
持っているという調査結果が出ました。
周囲から「更年期」に対するネガティブな情報を
聞くことはありますか?

私は年上の友人が多く、そのうちのひとりから、
更年期の時期に介護をしていて、
当時は症状を感じなかったけど、
ひと段落ついた時に一気に症状が出た
という話を聞いたことがあります。
介護をしている最中は大変すぎて
自分のことを考える余裕がなかったから、
症状が出なかったのだろうと思います。
それから、家にいると気が沈んでしまうから、
とにかく外に出るようにするんだと
話していました。

私自身は、まだ更年期の症状は出ていませんが、
ずっと続けてきたバレエで痛めた
膝の手術をしたこともありますし、
持病の腰痛もあるので、
そうした痛みは割とずっとあります。
生理に伴う不調を毎月のように感じるなど、
不調を抱えている人もいらっしゃいますよね。
そういう不調と向き合いながらも、
ときに自分にご褒美をあげたり、
家族や友人と話したりして、前向きに
進んでいくことができるかなと思います。

また、年齢を重ねると
より多くの不調が出てきます。
仕方がないことですが、誰もが通る道ですよね。
歳を取って痛みやつらさが増えてきても、
そこに意識を持っていかれるんじゃなくて、
それも人生の1ページにすぎないっていう
感覚でいたいですね。

各世代で人生の楽しみ方も変わって、
最近は、顔にできるシミも「味」だなと、
思えるようになりました。
老化現象のひとつかもしれませんが、
変わってきた顔もいいもんだなって。

──年齢を重ねたからこそ、わかることですよね。
高野さんが不調に陥った時には、具体的には
どのように対処していますか?

子育てや仕事、生理前が重なって、
いっぱいいっぱいになる時は当然ありますよね。

昔は気合いと根性で乗り越えていましたが、
特に家事に関しては、
最近は自分を気遣えるようになりました。
今の自分の状態がどうかを
意識するようになってからは、
気をつけ方も自然と変わってきたというか。

例えば掃除をするときも、
疲れていたらいつもよりちょっと
範囲を狭めようとか、
今日はこれくらいでいいかな、とか。
元々は完璧にやらないと
気が済まないタイプでしたが、
それを許せるようになりました。
「ここから先は明日やればいいか」と、
自分に寛容になってきましたね。

私は過去、育児期間中に、
ベッドから起きあがれないくらい
関節が痛む時期があったんです。

その時は本当につらくて。
ベビーカーを押せないくらい痛みが酷かったので、
腰を曲げて肘のあたりで押していたくらいです。
しかもいつまで長引くのか分からないし、
対処方法も分からなかったので、
すごく不安でピリピリしていました。

そんななかでも、楽しみをつくろうと思って、
毎日大変でも、
子供を寝かしつけたあとの
夫婦での晩酌を楽しみにしていました。
晩酌をして、ストレス発散をして、
次の日も痛みはつらいけど、
夜になればまた楽しみがある。
そうやって乗り越えました。

体の痛みも鍼灸をはじめとする東洋医学も
取り入れながら、
少しずつ回復しました。

人間ですから、誰にだってどうしても
苦しい時間はありますよね。
私の場合は、ご褒美の時間を用意して、
とにかく「楽しみを持つ」ことを大事にしました。

それは今でも続けています。
帰ったらキンキンに冷えたビールを飲むぞ!
と思いながら、
現場を乗り切っています(笑)

あとは、家族や友達と話すことも大事だなって、
年を取ってからなおさら思うようになりました。
体調不良でつらい時期を過ごしていたときは
誰にも会いたくなかったけれど、
それは間違っていたな、と。
実際に友達と話してみたら救われましたし、
スッキリもしました。

家族以外の関係性、特に昔からの友達って
すごく大切な存在なんだなと、
最近改めて思いますね。
そういう人たちとオープンに話すことも、
痛みや不調を乗り越えるカギなのかな、と。

更年期がきても、しっかりと
話し合える夫婦の関係性

──更年期を含め、ご家族でお互いの不調について
話すことはありますか?

基本的におしゃべりな夫婦なので、
それこそ子どもを寝かしつけた後に、
2人で晩酌しながらなんでも共有していますね。

「こうやって立つと内転筋に力が入っていい
らしいよ」
といった専門的な話もします(笑)。

生理についてもオープンにしていますし、
その時がきたら、
更年期についても
しっかりと話し合えるだろうなと思っています。

──「更年期」を含む心身の不調について、
家族のように近い存在であるほど、
心配をかけない
ように話しにくいという声も多く聞かれます。
パートナーに更年期症状があらわれた時、
かけてあげたい言葉や、
こうありたいな、
という寄り添い方のイメージはありますか?

更年期に限らず、楽しく過ごせる方法を模索して、
選んでいくと思います。
人生の先輩たちの話を聞いてきて、
いかに2人で楽しくいれるかが
重要だと感じているので。

そもそも更年期は、
歳を取る上で誰もが通る道ですよね。
みんな歳を取って、そのライフステージごとに
人生の過ごし方や楽しみ方は変わっていきます。
なので、「つらさもそのなかの要素のひとつ」
くらいの感覚で、
その時々の苦しみに翻弄されすぎずに、
家族とともに前向きに生きたいと思います。

20代も、30代・40代でも、
節目節目で体や環境の変化はありました。
そういった変化を今まで乗り越えてきた経験が
あるわけだから、
毎回初めての経験になるので
動揺はするでしょうけど、
更年期の症状があらわれても、
その先も必ず乗り越えられる。
自分たちを信じてあげようと、思います。

高野志穂(たかの しほ)
1979年生まれ。東京出身。
幼少時から海外で過ごす。
ロンドン時代には全寮制のエルムハースト・
バレエ・スクールに在学。
バレエ、モダン、タップ、フラメンコなどを
4年間学び、15歳で帰国。
2002年、NHK朝の連続テレビ小説
「さくら」でヒロインデビュー。
主な出演作には、
ドラマ「幸せのかたち」(11/NHK)、
舞台「テンペスト」(14)、「砂の女」(17)、
「消えていくなら朝」(18)、
「白が染まる」(22)などがある。
待機作にNHKスペシャル
「南海トラフ巨大地震」が控える。

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa
取材日=2023.01.31
※掲載内容は、取材時点での情報です

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa
取材日=2023.01.31
※掲載内容は、取材時点での情報です

これがわたしの#OneMoreChoice

これがわたしの#OneMoreChoice

──最後に、高野さんの「わたしの#OneMoreChoice」、
自分なりの選択肢について教えてください。

「楽しむ!」

人生一度きり、楽しんだもん勝ちです。
今回、更年期や今後について真剣に考える機会を
いただいて、
改めて思いました。
忙しい日々を送っていると、
つい自分のことをおろそかにしてしまいますし、
歳を取ると、新しい出会いが難しいと言われます。
それでも私は、当たって砕けろ精神で、
ますます人生を楽しんでいきたいと思います。

高野志穂