INTERVIEW わたしの#OneMoreChoice

女性が心地よく生きるための
新しい選択肢についてお話を伺いました。
いろいろな選択肢から、あなたにとっての
#OneMoreChoiceをみつけませんか?

#006

すべての人に重要なライフがある
小室淑恵さんが重要視する
多様な働き方とは?

小室淑恵さん /
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長

多くの女性が「隠れ我慢」を抱えていると
いわれています。
「隠れ我慢」とは、不調を我慢して仕事や家事をして
しまうこと。ツムラが実施した調査では、
全国20~50代女性の約8割が「隠れ我慢」を抱えながら
日々過ごしていることが分かりました。
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の
小室淑恵さんは、完璧主義で責任感の強い女性が
「新たな我慢層になっている」と言います。

多くの女性が「隠れ我慢」を抱えているといわれています。
「隠れ我慢」とは、不調を我慢して仕事や家事をしてしまうこと。
ツムラが実施した調査では、全国20~50代女性の約8割が「隠れ我慢」を抱えながら日々過ごしていることが分かりました。
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵さんは、完璧主義で責任感の強い女性が
「新たな我慢層になっている」と言います。

すべての人に
重要なライフがある

──小室さんご自身は「隠れ我慢」をしたこと、
ありますか?

産後3週間で復帰して起業したので、その時期は
我慢しっぱなしで
本当に大変でした。2時間おきに
授乳し、フラフラになりながら日中は
経営者として
振る舞い、睡眠不足でメンタルの状態が悪化して……。
少しのことで深く傷ついたり、口調が厳しくなったりも
しました。自分が
大変だとうまく伝えられなかったため
周囲も事情が分からず、その結果
また自分が
傷つくといった悪循環が起きていましたね。

──その状況を、どう打破しましたか?

なるべく早い段階で周囲に状況の共有をするように
なりました。

それと同時に、会社のメンバーとの日常の会話量を
増やしていきました。
自分がつらいことや
大変なことって、普段の会話量が少ない中で言うのは
ハードルが高くなりますよね。いつでも何でも話せる
関係になれるように、
普段から何げない会話をしながら
「お子さんは大丈夫?」「今日は
体調つらくない?」
など、ちょっとでもつらいことや大変そうなことが
あれば
どんどん聞くようにしていったんです。

そうした経験から生まれたのが、私たちが提供する
ソリューションの一つ
「朝メールドットコム」という
アプリです。朝イチで上司や同僚に一日の
業務報告をする
仕組みなのですが、そこにコメント欄がついていて、
「今日はちょっと頭痛です」「もしかしたら午後くらいに
保育園から
お熱コールが来るかもしれません」といった
普段の何げない状況も
共有できるんです。そうすると、
周囲も急にメールの返事が来なくなっても
「体調悪化したのかも」「お熱コールが
来ちゃったのかも」と
気付けるようになります。

これまでは直接顔を見て「体調が悪そう」「大変そう」と
理解できていたのがリモートワークで
見えなくなりましたよね。
そうした課題にも適応できる
利点もあり、コロナ禍でこのアプリの導入が
7倍に
増えました。

──その他にも取り入れている仕組みや制度は
ありますか?


さまざま取り入れていますが特に大事にしているのは
「理由を言わずに
取れる休み」です。休む理由を全く
言わなくていいお休みとして15分単位で
使え、弊社では
これが有給休暇の他に年間36日間分あります。
体調が悪い日の当日の朝にもすぐ使ったりできますし、
例えば介護を
している人は朝夜と施設への送り迎えの
時間として30分ずつ使ったり。
あとは不妊治療を
している人は理由が言いづらいこともあるので、
こうした休みは使いやすいです。
また、この休みをまとめて使って
アメリカ横断旅行に
行った人もいました。

──「理由を言わなくていい」からこそ
自分にとって大事なことに
使えますね。


はい。その上で大切なのは「すべての人にライフがある」

理解することです。育児と介護だけではなく、すべての
人に
それぞれにとって大事なライフがあります。例えば
「資格を取りたい」も、当事者のライフにとっては重要な
出来事です。
でも「ライフ感の格差」みたいなのが
できてしまって、育児と介護だけが
優遇されているように
思われてしまう。ですので、こういう休みが
あれば、
誰でも自分のライフを大事にすることができます。

これまでは組織の中で、事情を言い出せる人から
言い出せない人に仕事を
水平移動させてしまい、しこりに
なってしまっていました。なので、
すべての人のライフが
平等に扱われるために新しい制度を入れると
考えるように
すれば、組織も円滑に運営されて生産性向上にも
つながります。

また、これからの日本では育児や介護などさまざまな
事情を抱えながら
働く人が多数派になります。
「1億総我慢国」とも言えるほど、
みんな何かに我慢を
するのが当たり前。だからこそ、「自分の我慢は
特殊じゃない」と思うことが大切です。本当は誰の我慢も
特殊じゃないのに、みんなで隠し合ってしまう。でも、
つらいときの
タイミングが違うだけで、みんな何かしらの
我慢をしています。
そう理解するとお互いの相互理解も
進むのではないかと思います。

── 仕組み化で解決できることもありますよね。
一方で、ツール導入を
してもカルチャーやトップが
変わらないと変化が浸透しないといった
壁もあります。


そうですね。だからこそ、私は自分から率先して周囲に
声を
掛けにいきます。
私自身、自分がつらかったときに「そもそも私は
これまで、他の人たちの
我慢やつらさにも気付いて
いなかったかもしれない」といった危機感を
抱きました。
それで、マネジメント側から風土を
つくっていかなければと思ったんです。

また私もそうなのですが、女性でリーダーになるタイプの
方は、自分の
つらさを我慢できてしまう「我慢上手」な
人が多く、得てして他人の
我慢やつらさにも少し
気付きづらい傾向があります。だからこそ、
率先して
周囲にどんどん聞いていかないといけないな、と。

新しい「我慢層」は
「任せベタ」が多い

──小室さんは多くの会社を見ていらっしゃると
思うのですが、
職場において
「隠れ我慢」しがちなタイプの人はどんな特徴が
あると
思いますか?


最近は女性リーダー層の「隠れ我慢」が増えてきている
と思います。完璧主義で、
人を信じて任せるのが苦手。
「メンバーに無理をさせるわけにはいかないから
自分が
やるしかない」と考え、メンバーに任せられそうな仕事も
自分で
やってしまう「任せベタ」な方が我慢しがちです。
女性でリーダーになる人が
増えるのと同時に、こうした
「新しい我慢層」も増えています。

当人たちは、後進の女性たちのために
踏ん張っているんですけど、下から見ると
「リーダーは
そんなに我慢しなきゃいけないのか…」と思われていて、
「その我慢、実っていません!」「後輩のために
なっていません!」
という(笑)、切ない感じに
なってしまっていますよね。

──そういう女性たちには、どういうアドバイスを
されるんですか?


長期思考で、チーム全体の戦闘力を上げるメソッドを
お伝えしています。

自分だけで仕事を抱えて、いつまでもメンバーそれぞれが
できるレベル感の
仕事だけを振り分けていると、
チーム全体としては成長しません。例えば戦闘力が
10と8と2のメンバーがいたとして、チーム戦闘力は
20ですが、来年25を目指すには
個々の現在の戦闘力を
上げる必要があります。

じゃあ、今戦闘力2のメンバーが戦闘力4になるには、
どんな仕事なら渡せるか。
いきなり戦闘力7を
目指すのではなく、渡せるものを少しずつ渡し、
少なくとも
今年のうちに3か4にはなるように育てる。
無理のない、
でもちょっとチャレンジングな仕事を託して
成長してもらい、チーム全体の
戦闘力を上げていく。
短期的に考えると「まだこの仕事は渡せない」と
なって
しまいますが、長期思考で考えて判断し、戦略的に仕事を
割り振っていくことが大事だとお伝えしています。

リーダーが仕事を抱え過ぎないことこそが、メンバーから
見たときに「リーダーに
なりたい」と思わせる新しい
マネジメントをすることになりますから。

人口オーナス期には
「多様な人」の力が必要

──まさに、女性が我慢する理由に
「周りに負担を
かけたくない」といった回答傾向があります。


コロナ禍で変わってきましたが、それ以前では
「ちょっとくらい体調が悪くても
会社に行くべきだ」
「欠席しないことが大事」といった発想がありました。
それがまさに、日本の生産性を下げていたんです。

これを「プレゼンティズム」といいます。その場に
はいるけれど体調が
悪い状態でいるので生産性が低く、
成果が落ちている状態です。
「アブセンティズム(プレゼンティズムの反対。欠席・
いないことで生産性が
落ちる)」よりも
「プレゼンティズム」が与えているコストの方が、
日本では
圧倒的に多かった。「出席していることが
大事だ」という価値観が、「休んで
周囲に負担をかけては
いけない」というプレッシャーになっていたと思います。

一方でこの傾向も、新型コロナ感染拡大の前後では
変化しました。
コロナ前までは「休みたいけど休めない」
と答える人は36%いましたが、現在は
24%まで
減りました。「ちょっとした体調不良でも他人にうつす
可能性がある。
職場のためにも休んだ方がいい」という
考え方が浸透した影響もあると
思いますし、
リモートワークの普及で会社に行かなくても資料や
データに
アクセスできる基盤ができたことも
大きいですよね。

──少しずつ変化している最中ですが、
これからもっと「隠れ我慢」を
しなくていい社会に
なるために、何が必要だと思いますか?


今の日本の労働を巡る状況に沿ったマインドセットを
持つことです。
日本が長時間労働で画一的に働き成果を出していた
60年代から90年代を
「人口ボーナス期」といいます。
若い働き手も多く、均一な商品を大量生産して
海外に
輸出するビジネスモデルでした。この時代に必死に
働いた人たちの
おかげでこの国は成長したことは
事実です。その上で、労働人口が減っていく
これからの
時代はどうするべきか。今は「人口オーナス期」といって
育児や
介護をしながら働くのは当たり前、若い働き手は
減っていく一方です。
だからこそ、今世界で
勝っていくためには「多様な人の手」が必要なんです。

意思決定をする層にいろんな考えの人、多様なタイプの
人がいると、
当たり前だったことを見直すきっかけが
生まれます。するとイノベーションが
起こりやすく
なります。日本でイノベーションが起きづらかったのは、
いつも同じ価値観の人たちが最後の意思決定を
していたから。これからは育児や
介護、病気療養を
しながらマネジメントをする人たちがもっと
増えていきます。
すると多様な価値観が化学反応を
起こすことでイノベーションが生まれ、
働き方も
どんどん多様化されて生産性が高まっていくはずです。

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa

小室淑恵
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長
1000社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、
残業を減らして業績を上げるコンサルティング手法に
定評があり、残業削減した企業では業績と出生率が
向上している。「産業競争力会議」民間議員など
複数の公務を歴任。2児の母。

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa

これがわたしの#OneMoreChoice

これがわたしの#OneMoreChoice

「今日の心と身体に合わせた働き方を選ぶ。
それが生産性アップの秘訣(ひけつ)」

「今日、朝起きたときの体調」で、どういう働き方が
いいのかを
選択できる社会になると、もっともっと
パフォーマンスは上がります。
例えば子どもの
体調不良などは、朝になってわかることが
多いですよね。
朝起きたら貧血がひどい、という時もあると思います。
そういう状況で手段がないとき、無理やり
出社するのではなく、
子どもの状況や自分の体調に
対応しながら働ける選択肢が
持てるようになればな、と。

その一日を無理したことで、かえってその後も数日、
数週間にかけて
影響が出る場合がありますよね。
「今日」のコンディションに合わせて
働き方を
決められることが増えれば、それが長期的に見たら
生産性アップにも繋がるはず。あらゆる選択肢があり、
柔軟に
「今日、決められる」判断を
できるようになることが
大事だと思います。