PMDD(月経前不快気分障害)

PMDD(月経前不快気分障害)

まとめ

PMDD(月経前不快気分障害)とは

PMS(月経前症候群)の中でもとくに精神症状が強く現れる病態のことをPMDD(月経前不快気分障害)といいます。月経(生理)の3日~10日前から落ち込みやイライラ、不安感といった精神症状が目立つようになり、月経開始とともに消失します。

PMDD(月経前不快気分障害)の治療

低用量ピルが第一選択で、症状を抑えるために精神安定剤や抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、睡眠導入剤などを使うこともあります。

病院での診察

漢方医学の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、ご自身の症状とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも病気の原因を探るために必要な診察です。また、漢方薬には精神症状に効果がある処方がたくさんあります。西洋薬と漢方薬を併用して治療することも可能です。

PMDD(月経前不快気分障害)のメカニズム

月経(生理)が始まる3~10日ぐらい前から起こるさまざまな症状を、「月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome 月経前緊張症とも)」といいます。PMS(月経前症候群)の中でも特に落ち込みやイライラ、不安感などの精神症状が強く、日常生活に大きな支障をきたすほどの状態を「月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)」と呼んでいます。
月経のある女性の多くがPMS(月経前症候群)を経験するといわれていますが、PMDD(月経前不快気分障害)は全体の約3~5%と報告されています。

PMDDの症状

  • 不安、緊張
  • イライラ、怒り
  • 抑うつ状態、絶望感、死にたくなる
  • やる気が出ない、仕事や友だち関係、趣味などに対して興味が減る
  • 集中力がない
  • 攻撃的になり、自分をコントロールできない

少々の集中力の低下やイライラは、誰にでもあることです。しかしPMDDの場合は、ふだんの仕事に支障が出てしまうほど集中力を欠いたり、イライラが高じて周囲に当り散らして家族や同僚とトラブルになったりするなど、日常生活に支障を来たします。
PMDDの症状は月経開始から数日後には消失し、普通の精神状態に戻るのが特徴です。
症状が出る期間は限られているとはいえ、人間関係が壊れたり、会社を解雇されたりするなど、深刻な影響を及ぼすこともあります。

PMDDの原因

PMDDの原因ははっきりとは解明されていませんが、女性ホルモンの一つである「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が大きく関わっているといわれています。
月経周期の中で、黄体ホルモンの分泌は排卵をすると盛んになり、妊娠が成立しなかったときは減少して月経を迎えます。こうした黄体ホルモンの変化が強い精神症状を引き起こすと考えられています。

PMDDの症状は月経が始まれば楽になるので、ついつい我慢をしてしまいがちです。しかし日常生活に支障を来たしている場合は婦人科を受診し、治療を受けましょう。
治療は、PMSと同じように、低用量ピルや低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)で排卵を止め、女性ホルモンの変動を抑える方法が第一選択です。低用量ピルは服用している間だけ一時的に排卵を止めるもの。服用をやめれば排卵は回復しますし、その後の妊娠に影響が出ることはありません。
症状を抑える対症療法として、精神安定剤や抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、睡眠導入剤などが使われることもあります。

漢方薬による治療

基本的には低用量ピルが第一選択ですが、病気など何らかの理由でピルが飲めない、あるいはピルは飲みたくないという女性もいらっしゃいます。このような方たちは、漢方薬を試してみるといいでしょう。

漢方には「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方があり、「気・血・水」が過不足なく、バランスをとりながら体内を巡っていることで、健康な状態が保たれるとされています。
PMSは気・血・水の異常と考えられ、その乱れ方によって症状が異なります。中でも精神症状が強く現れるPMDDは、主に「」の異常によるものと考えられています。

一口に「気」の異常といってもさまざまですが、イライラを引き起こす「気滞(きうつ)」は、気の巡りが悪く停滞している状態で、自律神経系が緊張し、不安定になります。一方、「気逆(きぎゃく)」は、本来下降しなければならない気の流れが上に向かい、感情をコントロールしにくくなります。
症状に合わせて、以下のような漢方薬を処方します。

PMDD(月経前不快気分障害)の諸症によく使われる漢方薬

落ち込みが強い

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

イライラで困っている

抑肝散(よくかんさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

落ち込みもイライラもある

加味逍遙散(かみしょうようさん)

神経質、不安が強い、眠れない

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

興奮しやすい、感情が爆発して抑えられない

甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)

PMDDは、腹部膨満感や便秘、頭痛、乳房の痛み、むくみ、食欲不振(あるいは過食)といったPMSの身体症状を伴っていることが少なくありません。漢方薬は「一剤でいくつもの症状に効く」という特徴があるので、こうした多彩な身体症状も同時に改善できることはよくあります。
また、漢方薬と西洋薬を併用して治療することも可能です。たとえば「漢方薬を継続的に服用しつつ、とくに症状が強い時期には抗うつ薬をプラスする」というように、それぞれの特徴を上手に生かした治療もおこなわれます。

心身の負担を減らす生活を

精神症状は、ストレスや体の疲れとも密接に関連しています。ふだんから心と体に負担をかけないような生活を心がけることも大事。とくに月経前は、過ごし方を工夫してみましょう。

PMDD(月経前症候群)の症状を軽くする対策

  • 睡眠と休息をたっぷりとって心身を休める
  • 自分なりのリラックス法を見つける
  • 無理をしない
  • 一日の終わりはゆっくりとお風呂に浸かってリラックスする
  • カフェイン・アルコール・タバコを控える
  • 鉄・亜鉛・たんぱく質・ビタミン・ミネラル類をきちんととる

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

監修医師

藤沢女性のクリニック もんま 院長

門間 美佳先生

女子学院高校、山梨医科大学医学部卒業。国保旭中央病院、湘南鎌倉総合病院、湘南藤沢徳洲会病院、女性医療クリニック元町LUNA、湘南記念病院を経て、2019年藤沢女性のクリニックもんまを開設。第1土曜日14~17時にオープンユースクリニックを行っています。

Keywords

  • PMDD
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  • ストレス
  • 女性ホルモン
  • 月経(生理)
  • 気血水
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