INTERVIEW わたしの#OneMoreChoice

女性が心地よく生きるための
新しい選択肢についてお話を伺いました。
いろいろな選択肢から、あなたにとっての
#OneMoreChoiceをみつけませんか?

#005

人生100年時代に考えたい
自分を大切にするための健康管理とは?

穂積桜さん / 産業医

多くの女性が「隠れ我慢」を抱えていると
いわれています。
「隠れ我慢」とは、不調を我慢して仕事や家事をして
しまうこと。ツムラが実施した調査では、
全国20~50代女性の約8割が「隠れ我慢」を抱えながら日
々過ごしていることが分かりました。
産業医の穂積桜さんは、日々の不調や疲れの原因として、
睡眠や天候との関連性を挙げます。外部環境から
内面の変化まで、自分を大切にする健康管理について
聞きました。

多くの女性が「隠れ我慢」を抱えているといわれています。
「隠れ我慢」とは、不調を我慢して仕事や家事をしてしまうこと。
ツムラが実施した調査では、全国20~50代女性の約8割が「隠れ我慢」を抱えながら日々過ごしていることが分かりました。
産業医の穂積桜さんは、日々の不調や疲れの原因として、睡眠や天候との関連性を挙げます。
外部環境から内面の変化まで、自分を大切にする健康管理について聞きました。

心と体の相関性にずっと興味があった

──漢方の専門医の資格を取るきっかけに
なったのは、
ご自身の「隠れ我慢」の経験だった
そうですね。


はい。私自身、35歳くらいまでは「隠れ我慢な人生」
でした。
体調が悪くても我慢するのが当たり
前だったんです。

でももう十分頑張ったなと思って、30代中盤で1年間、
海外旅行に出ました。
そこで一度リセットして、
自分のやりたいことを見直し、漢方の専門医を
取ろうと
決めました。

──なぜ漢方だったんですか?

もともと、ストレスや不調による心と体の相関性にずっと
興味が
ありました。漢方は体と心を一つに捉え、双方に
働き掛け治療する
という考えがあり、学生の頃から
勉強したいと思っていた
分野だったんです。
35歳くらいで
医師としても10年ちょっとのキャリアを
積んだ後だった
ので、このタイミングだろうと発起しました。

自分の体に向き合う
きっかけづくりとは?

──産業医として多くの女性に向き合っていると
思いますが、
「隠れ我慢」をしている方は
多いですか?


「隠れ我慢」をしている女性は本当に
大勢いらっしゃいますし、
我慢をしていることを認識して
いない人もたくさんいます。生理も
「つらくて当たり前」
で、対処法がないと思っている人も多いですよね。

また、ヘルスリテラシーの高さは仕事のパフォーマンスの
高さにも関連し、
ヘルスリテラシーが高い人は積極的に
情報を取りに行って解決できるけれども、
そういう情報に
アクセスできなくて困ったまま不調を抱え続けている人も
たくさんいます。

──「隠れ我慢」をしてしまう人たちに、
共通する特徴などは
ありますか?


一概には言えないのですが、責任感が強い方は自身の
不調を抱えやすい
印象ですし、そういう方には自然と
仕事が集まってきたりして悪循環に
陥ったりしますよね。
女性特有の身体の話だと「恥ずかしくて言えない」
「職場でこういう話題を出してはいけない」と思っている
人もいます。
あと、#OneMoreChoiceの
プロジェクトサイトにもありましたが、
自己肯定感が
低くて「自分が頑張っていないと
認められないんじゃないか」
という人もたくさんいて、
こうした我慢が重なっていった結果、
ストレスがたまって
不調につながってしまいます。

一般的にストレスの反応は、3つの分野で起こります。
1つは「心の変化」で、
イライラしたり気分が
落ち込んだりします。2つ目は「体の変化」で、
眠れなかったり、風邪をひきやすくなったり、
生理が重くなったり。
3つ目は「行動の変化」です。
例えば、過食や飲酒量の増加、
あとは衝動買いなども
含まれます。

これらの対処の第一歩は「気付くこと」。出やすい疲れの
症状は、
意外とパターンがあったりします。例えば私は、
疲れると左耳が
中耳炎ぽくなります。人によってはそれが
便秘や下痢などおなかの調子かも
しれないし、肌荒れや
吹き出物かもしれないし、月経量が増える人もいます。
体のどこかに違和感が出てくるところがあるはず。自分の
体調を
観察してみて、そのパターンに気付くと
対応しやすくなります。その際に、
ご自身が気付いた
小さな心身の変化や症状に対しても、漢方は症状を
改善できます。体の変化に気付き、早めにケアしていく
ことで大きな病気と
なる前に調整できるケースは
多いです。
自分自身のパターンに気付いたら、医師や薬剤師に相談の
上、ご自身に合った
薬を用意しておくことも日々の
「隠れ我慢」への対応につながると思います。
こうやって
定期的に自分の手元にある薬を見直すタイミングを
設けると、
自然と自分の体や心と向き合うきっかけにも
なりますよ。

天気と睡眠も
心身の不調の原因に

──産業医やカウンセラーへの相談は、
気軽に行っても
いいものでしょうか? なんとなく
不調な状態で、まずは
どこへ行けばいいのか
分からないという人も少なくはなさそうです。


総合診療科や総合内科の先生は患者さんの「表現し難い
不調」に
慣れていて、不調を拾うのが得意ですし、それが
専門分野でもあります。
不調だけどどこの科に
行けばいいか分からない場合は、まずそういう領域の
先生を受診するのもいいと思います。

あとは漢方のクリニックも不定愁訴の対処に
慣れていますし、会社の
保健師さんや産業医に
「この症状で病院に行ってもいいものか」と、
まず病院にかかるべきかどうかの相談をする人も
いらっしゃいますよ。

そして実際に相談に行った際には、症状を
うまく伝えようとしなくて
大丈夫です。自分が
どんなことに困っているのか、1日の流れで
体調や
気持ちの変化を振り返ってメモをしておくといいですよ。

──産業医として面談をする際に
気を付けている点などはありますか?


産業医面談をしていると多い相談のひとつに、雨の時期の
不調があります。
片頭痛なども気圧の関係があり、それが
心身に響くことも多いです。
ですので、私はまず、雨や
台風などの天気が悪い日に具合が悪くなるかを
聞きます。

天気の変化に伴う心身のつらさは漢方が得意とする
ところです。
めまいや、むくみがある人の頭痛に用いる漢方薬、
虚弱な方で排卵日から
生理前にかけての不調が
出やすい方に用いる漢方薬など、漢方薬には日常の
不調に
寄り添う選択肢が多いので、対処法としてよく
ご紹介しています。

あと、不調の原因が睡眠にある場合も多いですね。
面談では、就寝や起床の
時間や、入眠や起床の傾向も
聞きますね。私が診療している中でいうと、
なんとなく
不調を訴える方々の7〜8割は、不眠が原因だと
感じています。
よく眠れていないと不調の症状が
悪化して、それでまた眠れなくなり……
という悪循環が
起きたりもします。睡眠から生活を
リセットできるように、
活動量計などで睡眠状態を
モニターしたり、日記のように睡眠記録を
つけたりして、
一緒に生活の見直しを図ります。

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa
取材日=2021.09.29
※掲載内容は、取材時点での情報です

穂積桜・産業医
日本医師会認定産業医、 精神科専門医、
漢方専門医、
臨床心理士。
2001年、札幌医科大学医学部を卒業後、
精神科医としてキャリアをスタート。
また、
国立病院機構東京医療センター、
北里大学東洋医学総合
研究所において、
内科、東洋医学の知識を幅広く習得。
2014年より、
精神科、内科の臨床経験に基づく
知識のみならず、
人事労務、法律の知識を併せ持つ
プロフェッショナル産業医としてご活躍。
現在は、
産業医として19社(2021年11月現在)を
担当する。

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa
取材日=2021.09.29
※掲載内容は、取材時点での情報です

これがわたしの#OneMoreChoice

これがわたしの#OneMoreChoice

「攻めと守りを使い分ける」です。

今は「人生100年時代」といわれます。70歳まで働くと
考えると、
けっこうな長距離走になりますよね。
20〜30代を走り切る
だけじゃなく、長期的にキャリアを
構築し働いていくためにも
「攻めるとき」と
「守るとき」を見極める必要があります。

あるあるだと思うんですが、仕事は責任感が強い人に
集まりやすく
なります。そういう人は会社にとっても
大事な存在ですが、
仕事を受け過ぎてポッキリ折れて
しまわないように「断り上手に
なりましょう」と
伝えたいですね。「自分のリソースを出し切らない」
戦法が有効なときもありますから。

そういうことを、「元気があるとき」に考えておくのも
大切だと
思います。疲れてしまってから考えるのでは
頭が働きません。仕事を
セーブしたくなったらどんな
交渉ができそうか、どういう人に
助けてもらえそうか──
元気なときほど自分の持っている力を
冷静に
見つめることができると思うので、考える時間を
意図的に
設けるといいかもしれませんね。