INTERVIEW わたしの#OneMoreChoice

女性が心地よく生きるための
新しい選択肢についてお話を伺いました。
いろいろな選択肢から、あなたにとっての
#OneMoreChoiceをみつけませんか?

#010

高山都さんが自分らしく
いるために
心がけている、
「ポジティブな放棄」とは?

高山 都さん / モデル

多くの女性が「隠れ我慢」を抱えていると
いわれています。
「隠れ我慢」とは、不調を我慢して
仕事や家事をしてしまうこと。
ツムラが実施した調査では、全国20~50代女性の
約8割が「隠れ我慢」を抱えながら
日々過ごしていることが分かりました。
モデルの高山都さんは「自分のための行動指針」を
持つことが、我慢を解消する第一歩だといいます。
「ダメだったらまたやればいいじゃん」
…その発想にたどり着くまでの葛藤とは?

多くの女性が「隠れ我慢」を抱えているといわれています。
「隠れ我慢」とは、不調を我慢して仕事や家事をしてしまうこと。
ツムラが実施した調査では、全国20~50代女性の約8割が「隠れ我慢」を抱えながら日々過ごしていることが分かりました。
モデルの高山都さんは「自分のための行動指針」を持つことが、我慢を解消する第一歩だといいます。
「ダメだったらまたやればいいじゃん」…その発想にたどり着くまでの葛藤とは?

「我慢」も仕事の一つだと
思っていた

――高山さんご自身は「隠れ我慢」を
したことがありますか?

小さい頃から頭痛持ちだったので、
痛みとは長く付き合ってきました。
モデルの仕事も体力勝負で、真冬でも真夏の格好をする
撮影が普通です。
でもそこで「寒い」とか「つらい」と
言ってもどうしようもないな、と。
「これが私の仕事、
自分が選んだことだからしょうがない」と、
我慢することも一つの仕事だと捉えていました。

それが当たり前なので、「痛い」「つらい」と
口にする方が、勇気が要ること。
周りに心配をかけて
しまうかもしれないとネガティブに捉えて、
だったら自分一人で抱えられるなら
我慢したほうが早いと思っていました。

――そうした中で、2020年末くらいに
ご体調を崩されて、
考え方が変わったそうですね。

同世代の皆さんそうだと思うんですけど、
「NOと言わないことが正しい」という思い込みが
ずっとあったんです。
仕事が来るのはうれしいし
ありがたいし、「何でもやります、がんばります」
という
気持ちで一生懸命やってきたんですけど、
急に忙しさが増してきて。
そうすると、自分のやりたい
ことができてうれしい気持ちとは裏腹に、
周囲のスピードに体がついてこなくなってしまいました。

理想としていた状況が現実になったうれしさと、
でも忙しさとで
「あれ、自分の体や心がついてこないぞ」
っていう。
自分自身がどこにいるのかが
分からなくなって、
自分の軸がブレブレになって
しまったんです。
それが体調を崩すサインでした。
「自分はまだいける、やれる」と
思っていても、
我慢の限界だった。それで仕事関係や友達など、
周囲の人たちにも迷惑をかけてしまって……。
反省しながらも、
一度ボロボロになっちゃうと、
なかなかそこからはい上がれないんですよ。
本当につらかったですね。

――そこから復調するまで、
いろんな葛藤があったと思います。

そうですね。お休みをもらって心療内科に通って、
先生からアドバイスをもらったり薬をもらったり
しました。
でも、最終的には自分でどうにかするしかない
と気付いたんですよ。
いろんな選択肢があっても、
それを選ぶのも自分自身ですし、
やっぱりこれは
「自分のためになんとかしなきゃ」と。
待っていても誰も引き上げてくれないですから。

ボロボロでいるのも、立ち上がるのも、結局は自分次第。
助けてくれる人はいるけど、「自分で、自分のために」
動かないと、
何も次に進まないな、と思って。
その結果「自分のために行動をする」
という、
一つの答えが導き出されたんです。
それが大きなシフトチェンジのきっかけでした。

「できること」だけ見て、
あとは「ポジティブな放棄」を

――読者の皆さんも、普段から仕事や家事など
「やるべきこと」を
たくさん抱えている中で
「何が自分のための行動なのか」を
考えられて
いない人も多いと思います。
高山さんの言う
「自分のため」の行動指針は、どんなものですか?

私は常に、やることの順番をつけるようにしています。
今自分は何がしたいのか、何をするべきなのか。
やることがたくさんたまっていくと優先順位が
分からなくなってくるので、
ToDoリストをつけるように
しています。たまっていることが可視化されると、
だいぶ冷静になれますよ。「よし、まずはこれが先だな」
とか
「これはもうちょっと後でもいいな」と
判断できるようになります。
ただ焦っても自分の気持ちが
分散してしまうだけですし、
私はそんなに全部を均等に
できるタイプの人間ではないので
「今一番エネルギーを
注がなきゃいけないのは、これ」と決めてしまうのが
大事だな、と。

あと、自分がちょっと手詰まりになりかけたら、
自分にとって大事なことを口にするようにもしています。
「今日やるべきことは、これだ」と、
繰り返し言っています。
口に出して言うとインプットされますし、
自分自身のマインドになっていきます。

――リスト化しても、
やるべきことがたくさんあると圧倒されそうです。

人間なので、どうしても目の前にやるべきことが
たくさんあると
「こんなにあるのか」と圧倒されて
しまって、
できないことが大きく見えてしまいますよね。
まずはできることを選定して、
直近でやらなきゃいけない
ことを決めたら、
あとは一回無視しちゃえばいいんです。
「できないこと」にフォーカスするんじゃなくて、
できることだけを見て、
あとのことはいったん、考えない。
私はこれを「ちょっと不良になってみる」って
表現するんですけど(笑)。

――不良になって、ちょっとはみ出してみる、
みたいな。

そうそう。一生懸命な人って、
多分「こうせねば、こうであらねば」
「はみ出しちゃダメだ」って考えるんですよね。
優しくて真面目で繊細で、
だからこそみんなの意見が
気になってしまう。でも、そういうときこそ、
一回不良になってみる。そうすると「あれ、意外と
大丈夫だな」って
気付くんですよ。はみ出してみても、
そんなに怒られなかったりします。
不良になることで、
自然と自分のキャパシティーが大きくなるというか、
余白ができてくるんです。

仕事でもなんでも「全部自分でやります」じゃなくて、
周囲に少しずつ頼ってみるのは大切だと思います。
私も素直に甘えるのは難しいときもあるのですが、
自分が「ちょっと変わりたいな」と思うタイミングでは、
甘えてみるようにしています。周りをちゃんと信じて、
任せてみる。ポジティブな放棄をしてみるんです。

――ポジティブな放棄、いい言葉ですね。

今はコロナ禍でリモートワークも増えて、
仕事とプライベートの境界線が曖昧になってきて
いますよね。
私もこういう仕事なので昼夜問わず
ひっきりなしに連絡が来ることもあって、
そうすると境界線がどんどんなくなってしまいます。
こういう、線引きが難しい時代だからこそ、
ポジティブな放棄が大事。

例えば私は、ある程度仕事が片付いたら、
マネジャーさんに「今日はもう連絡を返しません」と、
ハッキリ言っちゃいます。そのときに、申し訳なさそうに
伝えるのではなく、
明るくカラッとした雰囲気で
伝えることを心がけています。

生理でつらいときも「今日は本当におなかが痛くて
つらいんです。
この状態で無理にやっても効率は
上がらないから今日は休むけど、
明日にはその分を
取り返します」と、宣言します。
すると周囲も意外と受け入れてくれる。
伝え方って、大事ですよね。

「ダメだったらまたやればいい」
挫折から学んだこと

――それでもどうしても、周囲に迷惑をかけて
しまうのではと
考えがちになってしまう人もいます。
そんな人に、「ポジティブな放棄」への
第一歩として、
どんな声をかけてあげたいですか?

私は「大丈夫だよ、そんなに人は見ていないから」という
ことを、
自分自身にも周囲の人たちにも伝えています。
一生懸命頑張っている人ほど、我慢したり、
はみ出しちゃダメだと思いがちですけど、
人はそんなに
他人のことを見ていないし、
そこまで期待していないよ、と。
だから一回思い切って
ポジティブな放棄をしてみてほしい。それでダメだったら
「またイチから始めればいいんじゃない?」と、
いつも思っています。

コツコツ積み上げてきたことも、
ささいなきっかけで崩れてしまうこともあります。
そういう挫折を経験しているからこそ、
「ダメだったらどうしよう」じゃなくて
「ダメだったらまたやればいいじゃん」という気持ちが、
心のどこかにずっとあります。
人生、生きていれば何回でもチャンスはありますから。

あと、迷ったらワクワクする方を選ぶこと。
ワクワクしないことをやっても疲れるだけですから。
今日着ける腕時計はどれにするか、
ニットは何色にするか、
小さなことから自分の
テンションが上がる方を選ぶんです。
気分が落ちている日だったら新しい服を買ってみるとか、
ハンカチ1枚でも新しい
ものを手にしてみるとか。
好きなものを食べるでもいいし、
ちょっと寄り道をして
みるなど、行動を変えてみるでもいいし。
私も悩んだときはおいしいご飯を食べるって、
決めています。
ささいなことでいいので、
ちょっとしたご褒美を用意するのもいいんじゃないかな。

――そのためにも、
「これをやると自分の機嫌がよくなる」ということを
普段から理解しておくといいですね。

そうですね。好きなことをリストにして書き出して
みるのもいいですよね。
おいしいものとか、
好きなものとか、やりたいことを。自分の欲を知って、
「今日ちょっとダメかも」ってなったときに
自分の欲望のリストを一つ
消化してみる。
そうやってテンションを上げて乗り越えるのも、
いいですよね。

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa
取材日=2022.02.16
※掲載内容は、取材時点での情報です

高山都(たかやま みやこ)
1982 年生まれ。モデル、女優、
ラジオパーソナリティーなど幅広く活動。
趣味は料理とマラソン。
「#みやれゴハン」として料理やうつわなどを
紹介するインスタグラムが人気。
趣味のマラソンでは、横浜マラソン2016を
3時間41分で完走の記録を持っている。
著書『高山都の美食姿』
(双葉社刊)シリーズ1~4も好評発売中。

取材・文=川口あい 撮影=Shin Ishikawa
取材日=2022.02.16
※掲載内容は、取材時点での情報です

これがわたしの#OneMoreChoice

これがわたしの#OneMoreChoice

「ポジテイブな放棄をする」です。

みんな、はみ出ることを恐れないでほしい。
はみ出してみたらきっと次の余白がおのずとできるし、
やるべきことが見えてくるから大丈夫。
捨てることは怖くないよって、伝えたいですね。