2026.01.26

養生のすすめ

入浴

入浴と睡眠による「疲労回復」のメカニズム(前編)

多くの人が「お風呂に入ると疲れが取れる」と感じた経験があるのではないでしょうか。一方で、「お風呂でダイエットをしたい」と考え、熱いお湯に長時間浸かってエネルギー消費を期待する方もいます。
実際のところ、入浴そのもので消費されるカロリーはそれほど多くありません。安静時よりはやや増えるものの、入浴だけで肉体的な疲労そのものを回復させることは難しいのが現実です。
では、なぜ私たちは「お風呂に入ると疲れが取れた」と実感するのでしょうか。
確かに、入浴によって得られる浮力は関節への負担を一時的に軽減し、温熱作用や水圧によって心身がリラックスします。そのため、精神的な疲労感が和らぐという効果は期待できます。
しかし、傷ついた細胞が修復・再生されるという本来の意味での「疲労回復」は、**入眠直後の深い睡眠中に分泌される「成長ホルモン」**によって行われます。朝、目覚めたときに「疲れが取れた」と感じるのは、この働きによるものです。
湯船に浸かってから眠った日の方が、シャワーだけで済ませた日よりも疲労回復を実感しやすいのは、入浴が良質な睡眠を促しているからだと考えられます。
では、お風呂はどのようにして睡眠の質を高めているのでしょうか。ここからは、そのメカニズムを紐解いていきます。

眠りのスイッチは「睡眠欲求」と「体温のリズム」

現在、睡眠のメカニズムは「2プロセスモデル」で説明されています。

① 脳にたまる「睡眠欲求」

ひとつ目は、覚醒中に脳に蓄積されていく睡眠欲求です。これは、お庭にある「ししおどし」をイメージすると分かりやすいでしょう。
起きて活動している間、竹筒には「睡眠圧」という水が少しずつ溜まっていきます。活動時間が長くなるほど水は増え、満杯になるとカタンと倒れる。これが、私たちが眠りに落ちる瞬間です。
つまり、人は疲れるほど眠くなるという仕組みを持っているのです。

② 体内時計がつくる「体温のリズム」

もうひとつが、「サーカディアンリズム(概日リズム)」と呼ばれる体内時計です。人の体温は24時間周期で変動しており、
•朝4〜5時ごろに最も低く
•日中に向かって上昇し
•夕方18〜20時ごろにピークを迎え
•その後、就寝に向けて再び低下
というリズムを描きます。
人はこの体温が下がるタイミングで眠気を感じるようにできています。
赤ちゃんの様子を思い浮かべてみてください。眠くなると手足がぽかぽか温かくなります。これは、手足の毛細血管が広がり、体の表面から熱を逃がして深部体温(体の内側の温度)を下げようとしている状態です。
このように、深部体温をスムーズに下げられるかどうかが、入眠のしやすさや睡眠の深さを左右する重要なポイントとなります。

お風呂は「体温を下げるために入るもの」

では、なぜお風呂に入ると眠りやすくなり、結果として疲れが取れるのでしょうか。
入浴すると、一時的に深部体温は上昇します。しかし同時に、血液は皮膚表面へと多く巡り、入浴後には熱放散が活発に行われます。その結果、体温は自然でスムーズに低下していくのです。
この体温低下の流れが、入眠を促し、深い睡眠へと導いてくれます。
つまり、お風呂は「体を温めるため」だけでなく、眠るために体温を下げる準備をする行為とも言えるのです。

ポイントは「入浴後の過ごし方」

入浴によって上がった深部体温が下がるまでには、一般的に約1時間30分〜2時間かかるとされています。ただし、この時間はお湯の温度や個人の体質によって多少前後します。
例えば、23時ごろに就寝したい場合は、21時〜21時30分ごろまでに入浴を終え、その後は照明を落とす、スマートフォンを控えるなど、リラックスした時間を過ごすのがおすすめです。
良い睡眠、そして本当の疲労回復のためには、 「今日はシャワーだけでいいや」ではなく、 **「お風呂に入ってから眠ろう」**という意識を持つことが大切なのです。