2026.08.26
養生のすすめ
入浴
夏こそ温活!データで見る「入浴習慣」と「夏のPMS(月経前症候群)」の意外な関係性
はじめに:夏とPMSの隠れた関係性
多くの人が「夏は気温が高く、身体が冷えにくい」と思っていることでしょう。しかし、室内では、至る所でエアコンが使用され、外気との温度差は大きく、そのため自律神経は乱れやすい環境でもあります。実は一年で夏が最も「隠れ冷え症」に陥りやすく、同時にPMS(月経前症候群)の症状が悪化しやすい季節なのかもしれません。
月経の数日前から現れるイライラや気分の落ち込み、激しい腹痛や腰痛、眠気、頭痛といったPMS(月経前症候群)の症状は、女性ホルモンの変動だけでなく、自律神経の乱れや血行不良によっても大きく左右されます。特に日本の夏は、屋外の猛烈な暑さと、オフィスや商業施設内の強いエアコンの使用によりによる体感温度のギャップが激しく、私たちの身体は想像以上のストレスに晒されています。
2024年に女子大生227名を対象に実施された最新の入浴実態および月経前症状質問票(MDQ)を用いたPMSに関する調査によると、夏における入浴方法の違いがPMS症状に影響している可能性が分かりました。今回は、暑いからといってシャワーだけで済ませがちな夏のライフスタイルを見直し、健やかな毎日に繋げるためのヒントをお話ししていきます。
夏の入浴実態
まず、女性たちが夏にどのような入浴を行っているのか、その実態を見てみましょう。女子大生227名を対象に行われたアンケート調査によると、季節によって入浴スタイルには極めて顕著な変化が見られます。その結果を図1に示します。
図1.【女子大生227名 入浴実態調査結果】
夏以外: 入浴(浴槽浴)52.4% / シャワー 20.7% / 入浴またはシャワー 26.9%
夏以外の季節においては、半数以上(52.4%)の女性がしっかりと湯船に浸かる「入浴」を選択しているのに対し、夏になるとその割合は32.2%へと大きく減少してしまいます。代わりに「シャワーのみ(46.3%)」が増加し、夏以外では約2割にとどまっていたシャワー派が、2倍以上に膨れ上がっているという結果でした。
「暑いからお風呂につかりたくない」「汗を流せればそれで十分」という心理からか、夏はシャワーだけで済ませてしまう人が増えているのが実情です。
夏の入浴方法の違いとPMS症状の相関関係(MDQを用いた調査より)
次に、夏と夏以外で、湯船につかる女性とシャワーで済ませてしまっている女性のPMS(月経前症候群)の症状について調べました。その結果、夏以外では、PMSの症状の有無に関わらず、約8割の女性が、湯船につかっていることが分かり、入浴スタイルの違いによる症状の違いを見出すことはできませんでした。しかし、夏はシャワーで済ませてしまう女性が多く調査してみると、湯船につかる女性73名を入浴群とし、シャワーで済ませてしまう女性105名をシャワー群として、月経前に現れる様々な症状の強さを、月経随伴症状質問票(MDQ:Menstrual Distress Questionnaire)の回答から検証してみると、以下のような結果となりました。精神状態の結果を図2に、身体的症状の結果を図3に示します。
図2. 精神的症状:「考えがまとまらない」「眠れない」
| 症状と程度 | 月経前:考えがまとまらない | 月経前:眠れない | ||
| 入浴群 | シャワー群 | 入浴群 | シャワー群 | |
| 1.なし | 46.6% | 43.8% | 71.2% | 61.0% |
| 2.よわい | 20.5% | 14.3% | 8.2% | 11.4% |
| 3.中くらい | 17.8% | 19.0% | 9.6% | 14.3% |
| 4.強い | 15.1% | 22.9% | 11.0% | 13.3% |
「考えがまとまらない」という症状において、最も重い「強い」と回答した割合は、入浴群が15.1%であったのに対して、シャワー群では22.9%と7.8%も増えていました。また、「眠れない」という症状でも、入浴群の11.0%に対してシャワー群は13.3%と2.3%上回っていました。
図3. 身体的症状:「腰が痛い」「下腹部が痛い」
| 症状と程度 | 月経前:腰が痛い | 月経前:下腹部が痛い | ||
| 入浴群 | シャワー群 | 入浴群 | シャワー群 | |
| 1.なし | 45.2% | 45.7% | 30.1% | 28.6% |
| 2.よわい | 17.8% | 12.4% | 27.4% | 19.0% |
| 3.中くらい | 19.2% | 14.3% | 17.8% | 21.9% |
| 4.強い | 17.8% | 27.6% | 24.7% | 30.5% |
そして、多くの女性を悩ませる痛み(月痛経・月経前痛)に関しては図3で示したように、月経前に「腰が痛い」という症状が「強い」と答えた人は、入浴群では17.8%であるのに対して、シャワー群では27.6%と、9.8%も多く、「下腹部が痛い」という症状でも、入浴群が24.7%に対してシャワー群が30.5%と5.2%も多い結果となっていました。それぞれ、シャワー群の方が痛みを強く感じている傾向が見えています。
これらの調査から言えることは、暑い夏であっても、日常的に湯船につかって入浴している女性の方が、シャワーだけで済ませている女性よりも、PMSの精神的・身体的症状が楽である可能性が高いということです。
では、なぜ夏でも湯船につかった方がPMSの症状を緩和させる可能性があるのでしょうか。その背景にあるのが、夏特有の環境因子と、人間の身体のメカニズムとの関係です。
理由①:室内外の激しい温度差による「自律神経の乱れ」
猛暑の屋外(35℃以上)と、冷房の効いた室内(25℃前後)を行き来すると、体温調節を司る自律神経(交感神経と副交感神経)が過剰に働き、バランスを保つことが難しくなります。そして、自律神経の乱れは、ホルモンバランスの乱れと直結しているため、精神的なイライラや気分の落ち込みといったPMSの精神的症状を悪化させてしまいます。
理由②:エアコンによる「深部体温の低下(隠れ冷え症)」
夏は気温が高く、身体が温まっているように感じられますが、冷房の効いた室内で多くの時間を過ごすため、実は自覚のない「冷え」が進行しやすい季節です。特に薄着でエアコンの風に当たり続けると、身体の「深部」まで冷え切ってしまいます。
身体の冷えは自律神経の乱れからくるPMSの精神的な不調の悪化だけでなく、骨盤内の血流を滞らせてしまいます。生理前や生理中に分泌される子宮収縮物質(プロスタグランジン)は、血行が良い状態であれば自然と流れていきますが、冷えによって骨盤内の血流が滞っていると骨盤内に停滞してしまいます。その結果、子宮の過剰な収縮が続き、激しい下腹部痛や腰痛といった「つらい生理痛」を長引かせる原因になってしまうのです。
シャワーを浴びるだけでは、交感神経が刺激されて身体がリラックスモード(副交感神経優位)に切り替わりにくく、自律神経のバランスを整えることができません。また、皮膚の表面の汚れは落ちても、深部体温を上げて血流をよくすることはできません。心地よい温度のお湯につかる入浴がPMSの緩和につながるということです。
夏のPMS対策におすすめの入浴法とおすすめの入浴剤
夏のPMSを和らげるために、最も手軽で効果的なアプローチは、「夏こそ湯船につかる」ことです。お湯にゆったりつかれば、リラックスして精神が安定し、身体の芯まで温めることで、夏のPMSを緩和できるセルフケアとなります。入浴のポイントは以下の通りとなります。
夏のPMSをケアする入浴のポイント
•お湯の温度は「38℃〜40℃」のぬるめ:
ぬるめのお湯に設定することで、副交感神経を優位にし、心身をリラックス状態へ導きます。熱いお湯につかってしまうと交感神経が優位になり、心身の緊張状態が続いてしまいます。
•時間は「10分〜15分」じっくりと:
じんわりと汗をかくまで湯船につかることで、エアコンによって冷え切った内臓がじわじわと温まり、骨盤内の血液循環が改善されます。その結果痛みを生み出すプロスタグランジンの滞留を改善します。
さらに効果を高めるために:入浴剤活用のすすめ
そんな入浴の効果をより高めるのが入浴剤です。特に生薬成分の入った入浴剤がおすすめです。トウキ、センキュウ、は皮膚からじんわりと働きかけることで、お風呂上がりの湯冷めを防ぎつつ、血管を拡張して身体の芯まで冷えを緩和します。チンピは角質層にのこり保温し、清涼感のあるハッカは湯上がりの肌をすっきりと整え、夏でも不快感なく入浴を愉しむことができます。また、天然生薬が持つ香りは、嗅覚を通じて直接脳に働きかけてリラックスさせるので、月経前の考えがまとまらないイライラ感や、寝付けない夜の睡眠の質をサポートしてくれます。
まとめ:夏こそ「お風呂で温まる」選択を
夏は、シャワーで手軽に済ませたい、という気持ちは非常によく分かります。しかし、女子大生227名の調査データが語るように、夏の「シャワーのみ」の生活は、知らず知らずのうちに自律神経の乱れや冷えの症状をまねき、月経前の辛い症状(イライラ、不眠、腰痛、腹痛)として跳ね返ってきている可能性があります。
ライフスタイルをほんの少し変え、夜のルーティンに「15分間の湯船につかる入浴」を取り入れること、そしてお気に入りの生薬などの入浴剤を味方につけることで、夏のPMSは驚くほど優しくケアすることができます。毎日を健やかに自分らしく過ごすために、この夏はぜひ、心地よい「温活入浴」を始めてみませんか。
【引用文献】
玉田良樹 石川泰弘 今村優里 小杉良子 上條美和子 女性大学生における夏季浴槽浴と月経随伴症状の関連性について―mMDQスコアを用いた横断的観察研究― ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法学 2026




