インタビュー:高村学(Minimal Inc.)、撮影:藤田由香

2025.04.08

わたしと漢方

「考えすぎずに、素直に生きるように心掛けて」

茅野愛衣(かやのあい) 声優

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の本間芽衣子役を始め、『鬼滅の刃』の胡蝶カナエ役など、人気アニメ番組から劇場作品まで幅広く活躍する声優の茅野愛衣さん。ラジオのパーソナリティやYouTubeチャンネルなど、活躍の場は多方面にわたり、その優しい声と自然体な人柄で多くのファンを癒しています。忙しい毎日を送りながらも、ほとんど風邪をひかないという茅野愛衣さんは、「母からの教えの影響が大きいかもしれません」と話します。「我慢せず素直に生きるように心掛けています」という茅野愛衣さんに、健康への向き合い方と日々の生活で大切にしていることについてお話しを伺いました。

声優の仕事は、時代劇から宇宙空間まで

声優は、キャラクターを演じるだけではなく、いろいろなところに神経を使うお仕事です。シーンとしたスタジオでは、ちょっとした音でもマイクが拾ってしまうので、最小限の動きしかできません。洋服が擦れる音もダメですし、静かに歩くのがすごく上手になって、本当に忍者みたいですよ(笑)。

洋服を買いに行っても、必ず試着して、音がしないか確認してから購入します。収録中は、おなかの音との闘いもあって、空腹でもおなかが鳴りますし、満腹でも消化音が出てしまいます。おなかが鳴らない漢方が作れるなら絶対に作って欲しいです(笑)。

のどのケアももちろん大切ですが、意外かもしれませんが声優の仕事はメンタルも酷使しますので、睡眠や休息もしっかり取るように心掛けています。さっきまで時代劇の役を演じていたのに、今度は宇宙空間にいる役を演じたり、声優は気持ちを瞬時にスイッチすることをつねに求められます。実生活ではやったことがないことを声を使って表現するので、想像する力を求められますし、実写とはまた異なる演技の難しさがありますが、そこが声優の面白いところでもありますね。

それから、仕事中は座り通しや逆に立ったままの姿勢でいることが多いため、血流が滞ったり、なかには収録中にギックリ腰になってしまった声優さんもいます。叫んだり、怒鳴ったりする演技もありますから、酸素をいっぱい吐き出して頭がクラクラすることもあります。やっぱり体幹を鍛えないと声優の仕事は厳しいぞと思い、数年前からジムに通っています。デッドリフトなどの筋力トレーニングに取り組んでいまして、体幹が鍛えられるだけではなく姿勢の改善にもなっています。

筋トレを始めたことで、今までどれだけ自分の身体を上手に使えていなかったかを理解しました。自分の身体をもっとしっかり理解して、うまく使ってあげなくてはいけないと実感しています。トレーニングは1時間くらいですが、オンとオフの切り替えにもなりますし、自分の身体にしっかりと向き合える贅沢な時間にも感じています。気持ちのスイッチには香りも取り入れています。仕事の合間にカフェに行って、コーヒーの香りを楽しんだり、ミントの香りのするものを持ち歩いて、気持ちをリフレッシュさせています。

ただ、こうした事を特別だと意識せず、当たり前だと思うようにしています。声優の仕事が日常の生活のなかに染み付いているように、トレーニングも習慣になれば苦ではなくなりますよね。そうすると体調も自然とよくなるのかもしれません。「考えすぎない、無理はしない」。これは普段から大切にしている事です。きちんと身体と相談して、やれるかやれないか考える。私が私自身のいちばんの味方でありたい。だから、我慢せず素直に生きるように心掛けています。

「心の栄養が、身体に必要な栄養になる」という母の教え

母からは、知らず知らずのうちにいろいろな影響を受けたなと感じています。私の目標にしている体温は36.8度なんですが、それも母からの影響で、若いころ一緒にハーブ蒸しで身体を温めたり、体温を上げる食事を摂ったりしました。いつでもポカポカという程ではありませんが、そのおかげでほとんど風邪をひかなくなりました。

ただ、高校生のころに大事な試験の前に体調を崩したことがあって、母が液体タイプの葛根湯を買ってきてくれたんですが、香りがすごく甘くて、飲みやすく感じました。普段から薬を飲まないせいか、指先までじんわり温まる感覚があったことを覚えています。葛根湯にはシナモン※も入っていますよね。その時の体験が残っているので、ちょっと疲れたなっていう時はシナモンティーやチャイを飲むようにしています。

今、振り返ると母からの「食育」だったんだと思います。母は美容関係のお仕事をしていて、「肌は、内臓の鏡」というように美容も健康も繋がっていると昔から考えていました。冬になればひたすら林檎をむいたり、季節ごとの旬なものを摂るようにしていますが、それも母の教えですね。

私は食べ物の好き嫌いがありませんし、人の手を感じるものを自然と選ぶようになりました。外食でも作っている方の顔が見えるお店を選ぶように心掛けています。それは、美味しく食べてもらおうという、作り手の気持ちが伝わってくると、料理が栄養として体中に行き渡る気がするからです。心の栄養が、身体に必要な栄養になる、というのも母からの教えですね。

※葛根湯に含まれるものは食品のシナモンとは異なり、生薬名でケイヒと呼びます。

YouTubeチャンネル『かやのみ』では日本全国の美味しいものを発信

日本酒の美味しさを知ってもらいたいと思い、2016年からYouTubeチャンネル『かやのみ』を始めました。トーク番組でもあるんですが、愉快な仲間たちって感じで、私自身もいっぱい笑わせてもらっています。笑うことはとても大事ですよね。腹筋も使いますし、肺活量も増えるので健康にいいかもしれません。

『かやのみ』では、日本中の日本酒と食べ物をいただくのですが、美味しいものが多すぎて、大きくならないように気をつけています(笑)。最近は香川県の「悦凱陣(よろこびがいじん)」がお気に入りです。気持ち的にもポカポカするので温めて飲むことにハマっています。温めると米の香りが感じられて、甘みが少ないのでいろいろな料理に合わせやすい銘柄です。

最近はお米を食べるようになりました。ヒエやアワなどの雑穀が入ったものを選ぶようにしていて、自分でブレンド米にしていただいています。母も一緒に「腸活」を実践中ですが、母も腸内環境はいいみたいです。やっぱり内臓が元気じゃないと肌にも出ますし、腸はすべてを映していると実感します。

山椒も大好きで、実を冷凍してストックしています。身体が冷えないように、出来るだけ飲み物には氷を入れずに飲んでいるのですが、夏場にシュワシュワした冷たい飲み物を飲みたくなった時に山椒を入れています。山椒は、うなぎにふりかけるイメージしかないかもしれませんが、身体を温めてくれる食べ物ですよね。お酒を飲む時も、ハイボールやジンソーダに山椒を入れて飲むことも多いです。

のどのケアのために「温活と睡眠」が大切

長い間、家に加湿器がありませんでしたが、つい先日お仕事で加湿器をいただき、初めて我が家に加湿器がやって来たのですが、しっとりとしたクリーンな空気に感動しています。それまでは暖房器具はオイルヒーターを使って、乾燥しないように極力気をつけていたのですが、もっと早く力を借りれば良かったです。それから、お風呂が大好きで、湯船には必ず入ります。のども潤うので、仕事前には必ず湯船に入るようにしています。先日、ふるさと納税の返礼品で檜の風呂蓋をいただきました。檜の香りに癒されますし、保温効果ももちろんあります。身体を温めることも心掛けていて、家では半纏(はんてん)を着ながら、関節を冷やさないようにウォーマーを巻いて過ごしています。最近、ファンの方からリカバリーウェアを頂いたのですが、母が興味津々だったのでまず母に着用してもらう事に(笑)。それがすごく快適で、私も同じものを購入してしまいました。湯船に浸かるのも、関節を温めるのも、知らず知らず「温活」になっているのかもしれませんね。

そして、もうひとつ大切にしているのが睡眠。寝ることで声の疲労は回復すると聞いて、7時間は睡眠を取るようにしています。睡眠中は、目から入る光も極力避けた方が声には良いと言われて、疲れを感じた時はとにかくすぐ目を閉じるようにしていますし、声をしっかり使った日は睡眠をしっかり取るように心掛けています。また、犬を飼っているのですが、日中1時間くらい散歩で太陽をしっかり浴びているので、そういった日は普段よりもよく眠れると感じます。寒い時期は、寝ていると犬が布団に入ってきて両脇を固めるんですね。ふわふわで暖かくて幸せを感じるんですけど、まったく寝返りをうてなくなるのが最近の困り事です(笑)。こうして健康的な生活が送れているのは、家族や愛犬のおかげだなぁと、日々実感しています。

茅野愛衣/かやのあい

9月13日生まれ。東京都出身。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の本間芽衣子役で注目を集め、その後も「ノーゲーム・ノーライフ」「デリシャスパーティ♡プリキュア」「無職転生」など数多くの人気作品に出演する。またYouTubeチャンネル「かやのみ」に出演し全国の美味しいお酒や食べ物を発信中。
YouTubeチャンネル『かやのみ』 https://www.youtube.com/@kayanomi/

最新記事