2026.06.30

漢方ブログ

「溜まった脂肪に効果的なアプローチとは?」
~肥満症への進行を食い止める、低下した「代謝システム」の再起動~

あなたの代謝は適切に機能していますか?

以前と同じ生活をしているのに「ウエストがきつくなった」「ベルトの穴が変わった」と感じることはありませんか?体脂肪が過剰に蓄積すると、高血圧や糖尿病、股関節・膝の痛みなどを発症する肥満症へと進行する可能性があります。これを防ぐには、低下した代謝を再び機能させることが重要です。
ここでは、肥満の方の代謝が低下していくメカニズムと、その対策について紹介します。

肥満の方の代謝が低下している4つのメカニズム

(1)体脂肪の増加でホルモンが変化する

体脂肪の過剰な蓄積は、体の「燃費」や「エネルギー管理」の仕組みにさまざまな影響を及ぼします。その一つが、脂肪細胞から分泌されるホルモンの「レプチン」への影響です。
レプチンは、脳に作用してエネルギー代謝を調節する働きを持っています。体脂肪が過度に増えるとレプチンの分泌量が過剰になります。すると、脳がレプチンに反応しにくくなり、代謝を下げる方向に働いてしまうことがあります。(※1)

(2)急激な減量で代謝が下がる

体重や体形の変化が気になりだし、食事制限で急激に減量すると、内臓や筋肉の量が減り基礎代謝が低下します。すると体は「省エネモード」になって消費エネルギーを抑えようと働きます。これは飢餓から身を守るための自然な反応ですが、結果として代謝の低下につながります。

(3)心理的ストレスも悪影響になる

肥満の方は、「自己管理ができていない」「努力不足」など否定的な目を向けられがちです。こうした偏見は「肥満スティグマ」と呼ばれ、強いストレスになります。ストレスはホルモンバランスを乱して代謝を下げます。(※2)

(4)腸内環境の乱れが代謝低下に関わることも

肥満に伴う代謝の低下には、腸内環境の乱れが影響している可能性が指摘されています。腸内細菌のバランスが崩れると、腸の働きを守るバリア機能が弱くなり、体の中で炎症が起こりやすくなります。こうした慢性的な炎症は、代謝がうまく働かない状態を悪化させる要因の一つと考えられています。(※3)

代謝を改善するための対策3選

対策1:生活習慣を見直して「燃える体」を取り戻す

代謝を整え、「燃える体」を取り戻す上で重要なのが、睡眠、食事、運動といった生活習慣です。睡眠不足や生活リズムの乱れは、代謝やホルモン分泌に影響を与えることが知られています。
十分な睡眠を確保し、起床や就寝時間・食事時間をできるだけ規則正しくしたり、脂肪の燃焼を邪魔する砂糖を多く含む食事やお酒は控えることも大切です。また、ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動で適度に体も動かしましょう。生活習慣が整うことで、エネルギー代謝や食欲調節の機能も安定しやすくなります。

対策2:適正な減量目標を立てる

体脂肪を減らすために減量は重要ですが、その際に基礎代謝を低下させないことが重要です。筋力を保ちながら、無理のないペースで体重を減らし、リバウンドすることなく、長期的に維持できるように心がけましょう。減量後、その体重を1年程度維持すると、代謝機能が安定的に働きやすくなります。
また多くの研究では、現在の体重から3~5%減量することで代謝が改善することが示されています。

対策3:腸内環境を整える

最近では、肥満症や代謝の低下には、腸内環境の乱れが関わっていることが分かってきています。マウスを用いた研究では、特定の漢方薬を投与することで腸内細菌のバランスが変化し、腸のバリア機能が整って糖代謝が改善したことが報告されています。こうしたことから、腸内環境を整えることは、肥満によって低下した代謝機能を立て直すための一つの重要な視点といえます。

変化を感じにくいときは、医学的・漢方的アプローチも活用

生活習慣の見直しだけでは変化を感じにくい場合は、医学的・漢方的な視点を取り入れるという選択肢もあります。食事や運動を基本としながら、必要に応じて医師の診断や医薬品のサポートも活用しましょう。
漢方薬は、体質や体のバランスに目を向けながら、全身の働きを整え、体の内側の状態を見直す一つの方法として取り入れられることもあります。

まとめ:無理のない方法で代謝改善に取り組もう

体脂肪の蓄積を放置すると、代謝が低下した状態が続き、肥満症へと進行する可能性があります。代謝を整えるためには、生活習慣の見直しに加え、腸内環境や心身の状態にも目を向け、必要に応じて医療や漢方の力を取り入れることも大切です。
「生活」「腸」「心」「医療」という複数の視点から代謝を見直し、無理のない肥満改善と健康維持を目指していきましょう。




参考文献
※1 Asgari R, Caceres-Valdiviezo M, Wu S, Hamel L, Humber BE, Agarwal SM, et al.Regulation of energy balance by leptin as an adiposity signal and modulator of the reward system.Molecular Metabolism. 2025;91:102078.
※2 肥満症診療ガイドライン 2022』(日本肥満学会 編集) 「肥満症における心理・社会的背景とスティグマ」の項
※3 Scheithauer TPM, Rampanelli E, Nieuwdorp M, Vallance BA, Verchere CB, van Raalte DH, Herrema H. Gut microbiota as a trigger for metabolic inflammation in obesity and type 2 diabetes. Front Immunol. 2020;11:571731.



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慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)
専任講師 川野 義長(かわの よしなが)


  • 経歴
    2007年4月   慶應義塾大学病院初期臨床研修開始
            1年目:北里研究所病院  2年目:慶應義塾大学病院
    2009年3月   慶應義塾大学病院初期臨床研修修了
    2009年4月   慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)教室入局
            慶應義塾大学病院にて後期内科臨床研修修了、糖尿病専門医取得
    2014年4月   慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)助教
    2017年4月   慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)特任助教
    2018年4月   米国コロンビア大学メディカルセンターに留学
    2022年4月   慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)助教
    2023年10月   慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)講師
    2024年4月   慶應義塾大学病院 先制医療センター 副センター長
    2024年9月   慶應義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)専任講師

  • 資格・役職
    2007年4月   医師免許証
    2010年9月   日本内科学会認定医
    2013年3月   博士(医学)(慶應義塾大学)
    2013年11月   日本糖尿病学会専門医

  • 所属学会
    日本内科学会会員
    日本糖尿病学会会員
    日本肥満学会会員
    日本内分泌学会会員

  • 専門分野
    糖尿病領域

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