撮影:野呂知功

2022.02.09

わたしと漢方

「今日も一日頑張ってくれてありがとう」と心と身体に伝え穏やかな日々だったなと最期に振りかえられるように一日一日を大切に過ごしていく

はいだしょうこ 歌手

NHK『おかあさんといっしょ』の第19代目うたのおねえさんとして絶大な支持を集め、現在は歌手や女優として幅広く活躍しているはいだしょうこさん。2020年にはYouTubeチャンネル『はいだしょうこの歌とか、、、』を立ち上げ、美しい歌声や自作の紙芝居を披露して、ポジティブなエネルギーを日々発信しています。かつては多忙な日々を過ごし、無理をして体調を崩してしまった経験を通して、健康についての考え方やライフスタイルが変化していきました。「自分の身体に『今日も一日頑張ってくれてありがとう』って口に出してみたり、心の中で思ったりします。自分の心と身体は自分にしか分からない事もあるので、自分自身で癒してあげるようにしています」と、語ります。今回、はいだしょうこさんに、心と身体に対する考え方や日々大切にしていることについて話をうかがいました。

自分にあった健康習慣を続ける


私はちょっと面倒くさがり屋なところがあって、例えば酵素ドリンクやスムージーを朝から摂るのは苦手なんですよ(笑)。「朝から野菜しか食べていなさそう」とよく言われるんですけど(笑)体に良いとわかっていてもやっぱりできないんですよね。ただ、とにかく温かいものを摂るようにしています。朝起きたらまず白湯を一杯飲んで、ご飯を食べ終わった後も白湯を一杯飲むようにしています。冷たいものもできるだけ摂らないように心がけています。もともと汗もかきづらい体質なので、身体に負担がかからない温かいものをいただいて、なるべく代謝が下がらないようにしています。

喉のケアも大事にしています。喉は楽器と同じで、使いすぎると擦れますし、乾燥したら良い音が出なくなります。楽器が錆びるように、年齢を重ねれば喉も衰えていきます。それに、物じゃなくて身体の一部だからこそ、身体や心の状態も喉に影響するので、喉を休めるだけじゃなくて身体も心もリラックスさせてあげることが大事ですね。もちろん乾燥させないようにしたり、ハチミツを頂いたり、喉を使ったあとは必ずケアしています。

車移動が多いので、最近はウォーキングを心がけています。ちょっと時間があれば家の近くを歩いていて、いつものコースだと30分から40分くらいですね。でも、無理しすぎると続かなくなってしまうので、今日はここまで行ってみようとか、あの景色を見に行ってみようとか自分のペースでコースを決めています。年齢を重ねると足の筋肉が弱くなっていきますし、それにヘルニアになってしまったことがあるので、腹筋や背筋をしっかり保つためにも歩いて体力をつけることを心がけています。

仕事が忙しくて体調が崩れそうなときには漢方薬を飲んでいます。うたのおねえさん時代には、「あれ、体調が悪くなりそうだな、風邪っぽいな」と思ったときにはすぐ葛根湯を飲んでいましたね。大人になってから咳喘息になることが多くなって、今でも喉の調子が悪い時は、その時の症状で麦門冬湯や桔梗湯などを飲んでいます。胃腸も弱いので普段から漢方で整えるようにしています。

オンオフを切り替えて無理をしないワークスタイルへ

一番のリラックス法はお風呂に浸かることです。お湯の蒸気で喉も潤いますし、自分だけの空間で深呼吸して、その日のモヤモヤした事を全部空気として吐き出して、心と身体を同時にリラックスさせています。私は長時間浸かるのは苦手なので適度に浸かりながら、「今日も一日無事に終わったな」とか、自分の心と身体に「今日も1日頑張ってくれてありがとう」って口に出してみたり、心の中で思ったりします。自分の心と身体は誰かが労ってケアしてくれるわけではないので、自分自身で癒してあげるようにしています。なかなか自分の身体に「ありがとう」と言う機会もないですし、自分自身のことはどうしても後回しになってしまいますよね。自分が無理をしてしまった経験を経て、こうやって心と身体をリラックスする時間を持つようになりましたね。

それから、自分の中で仕事とプライベートのスイッチをちゃんと作るようにしています。家のドアを出て鍵を閉めた時に「よし、ここからは人から見られるはいだしょうこ、今日も頑張るぞ」と仕事のスイッチを入れています。帰宅して玄関に入ったり、お仕事が終わったタイミングで「よし、今日も頑張った」と仕事のスイッチを切るようにしています。だからといって自分の人格が変わるというわけではないんですけど、そのままなんとなく過ごしていると、仕事とプライベートの境目がなくなって、プライベートまでずっと仕事モードになってしまうので、どこかでスイッチを切り替えるタイミングを作ることが大切だと思っています。家でも仕事用の机とプライベート用の机を分けて使って、オンオフを切り替えています。

でもやっぱり仕事がたくさん詰まっている時は、バランスが取りにくくなってしまうこともあります。そういう時も無理しないように、慌てず穏やかにと自分に言い聞かせて過ごしています。オンオフのスイッチと、自分の心の声を聞き、コントロールできれば仕事に押しつぶされることも少なくなるのではないかなと思います。

体調を崩し、自分の限界を超えてしまった経験をした時に、初めて自分の身体をこんなに酷使していたんだと気づきました。「大丈夫!まだ頑張れる!」と思っていましたけれど、心も身体もある程度までいくと溢れてしまうんですよね。年齢を重ねてきたことで身体が無理できないことを自分でも感じるようになってきました。だから、そうなる前に「ちょっと無理しないでおこう」といつも頭の片隅に置いておくようにしています。「気をつけなきゃ」と一瞬でも頭によぎらせておくことで、身体の構え方が違ってくるかなと思います。

いま生きているこの瞬間が一番若いから

だれでも生きているだけで必ず価値があると思っています。命があって生きているだけでありがたくて、素敵なことだと思います。「悲しいことがなさそう」とか「悲しいことに気づかなそう」と言われることが多いのですが(笑)、もちろん私も人間なので、「自分ってダメだな」とか「ああ、もうだめかも」って思ったことは何回もあります。だれにでも良いときもあれば悪いときもありますし、でも「もうダメだ、これより下はない」と思うようにすると、その後は上がるしかないですし、「絶対この後は大丈夫になるんだ」と何とか踏ん張って前を向いて歩くようにしています。

自分の人生がどうだったかは、命が終わるときにしか分からないことだと思っています。だからこそ、「ああ、幸せな人生だったな」と思えるかどうかは、いま生きている一日一日を大切に過ごすことで見えてくるのかなと思います。何歳になってもいま生きているこの瞬間が一番若いから、ここから何かをやり直そうと思ったり、気持ちを変えようと思えばできますよね。明日はまた新しい朝がきますから。いまこの瞬間を大事にするのか、どうでもいいと思って投げ出して生きるのか。それが大事なんだと思います。いまは生きづらい世の中でもありますから、本当にしんどくて苦しいとか、自分はなんで生きているんだろうと思っている方も多いのかもしれません。でも、歩いていてこんなところに花が咲いていたと気づけたこととか、日常の本当に小さなことでもいいので目標を持って、みんなで一日一日を大切に生きられたらいいなと思います。

はいだしょうこ

3月25日生まれ。東京都出身。作曲家の中田喜直のもと、幼少期より童謡歌手として全国各地のコンサートをまわる。1998年、宝塚歌劇団入団。娘役として活躍。2002年に退団。 2003年、NHK「おかあさんといっしょ」第19代“うたのおねえさん“に就任。2008年、番組卒業後も、役者や歌手活動のほか、テレビ番組への出演多数。NHK大河ドラマ「真田丸」に浅井三姉妹の一人の初役として出演するなど活躍の場を広げている。子どもから大人まで,幅広い年齢層から人気を集めている。ピアニストの実父と共演しているCD「中田喜直の世界 ほしとたんぽぽ」も発売中。最近では、YouTube「はいだしょうこの歌とか、、、」でも数多くの歌を届けている。

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