2024.08.22
漢方ブログ
【医師監修】おなかが張ってつらい...おなかのハリの原因と対処法
おなかのハリとは
おなかのハリとは、腹部に圧迫感を覚え、張ったり重く感じたりすることを指します。専門的にはこうした感覚を「腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)」と呼び、腸ではなく胃に対して苦しさや不快感を覚えることを「胃部膨満感」と呼びます。いずれもおなかのハリとして一括りにされることが多いです。
おなかのハリについて5,000名を対象に実施したアンケート調査では、2人に1人以上が「おなかのハリを経験したことがある」と回答しています。
更に、おなかのハリを経験したことのある方500名を対象に、詳しい調査を実施しました。
3人に1人以上が、「非常に困っている」「困っている」と回答しており、おなかのハリに悩む人は少なくありません。20代で60%以上、30代は約40%に上ります。
おなかのハリの原因
おなかのハリは多くの場合、食べ過ぎ、飲みすぎ、便秘などさまざまな要因によって生じます。病気が原因で感じることもあるため、激しい痛みと吐き気・嘔吐を伴う場合や、なかなかハリが解消されない場合は医療機関の診察を受けるようにしましょう。ここからは、一般的なおなかのハリの原因について紹介します。
1.食べ過ぎ・飲みすぎ
胃もたれがおなかのハリの原因となることがあります。いつもより食べ過ぎたり、飲みすぎたりすると、消化が追い付かず、胃が膨らんで張ったように感じます。
2.便秘
腸に便がたまっていることも、物理的におなかにハリを感じる原因です。排便の頻度には個人差があるため、「いつもの排便頻度と比べて少なくなっているかどうか」で便秘かどうかを判断しましょう。一般的には多くて1日あたり1~3回、少なくとも週に2~3回程度の排便があり、痛みが伴っていない状態が健康的だといわれています。
3.冷えによる消化機能低下
身体の冷えは消化機能の低下を招き、便秘につながります。生活習慣やストレスの影響で自律神経が乱れると、身体の末端が冷えたり、逆に体内だけが冷えたりします。内臓が冷えると腸の動きが鈍くなり、便がなかなか運び出されずに停滞します。便が腸内に長く留まった分、長時間水分を吸収されることでより硬くなり、スムーズな排便が困難になります。
おなかのハリを感じる人の実情
おなかのハリについてのアンケート調査によると、「便秘」や「食後」「食生活が乱れている時」など、胃腸の機能が低下しているタイミングで感じることが多いようです。また5人に1人はストレスがあるときもおなかのハリを感じると回答しています。
食事の直後に感じるおなかのハリであれば、消化によって解消される一時的なものであることが多いです。しかし、生活習慣やストレスから便秘が慢性化することで、慢性的におなかのハリを感じるケースもあります。アンケート調査では、おなかのハリを感じる頻度について「週1回以上」と答えた方が、48.2%であり、約2人に1人が、習慣的におなかのハリを感じていることがわかりました。
おなかのハリへの対処法
では、実際におなかのハリを感じている方はどのように対処しているのでしょうか。
おなかのハリを感じると答えた方の約45%は、困ってはいるものの放置したり、どう対処すればよいかわからずそのままにしているということがわかりました。
ここからは日常生活でできる一般的な対策を紹介します。
日常生活でできるおなかのハリ対策
おなかのハリの原因を大きくまとめると、消化機能の低下にあると考えられます。
次のような習慣をつけ、おなかのハリを予防しましょう。
1.軽い運動をする
腹部をひねる動きのある運動を取り入れましょう。長時間同じ体勢でいることが多い人は、腸の動きが鈍くなりがちです。定期的に休憩をとって、軽く身体をひねって動かしましょう。ラジオ体操やストレッチ、ヨガなど、家でもできる手軽な運動を習慣化してください。ウォーキングやジョギングなどのいわゆる有酸素運動は、おなかのハリを直接改善するわけではありませんが、血行を促し腸管の動きを活発にするため、冷え症の方やおなかが冷えやすい方におすすめです。
2.自律神経のバランスを整える
自律神経は腸の働きにかかわります。ストレスを溜めないことはもちろんのこと、しっかり睡眠を取って、朝に日の光を浴びる、入浴で身体温めるなど、自律神経を整える生活を意識しましょう。
3.食生活を見直す
1日3食、なるべく決まった時間に食事をとる、夕食が遅くなる場合は、消化のよいものを選ぶなど、食生活を見直すことも大切です。
特に朝食は、体内のリズムを整えたり、消化機能を刺激したりすることで、排便を促す効果も期待できます。
便秘に伴い、おなかのハリが気になるという方は、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑えてくれるヨーグルトや乳酸飲料、発酵食品などを食事に取り入れてみましょう。
漢方から考えるおなかのハリと食養生
漢方では、健康な身体は、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素のバランスが取れている状態であり、何らかの理由でこれらのバランスが崩れることで、さまざまな症状が現れると考えます。
たとえば、おなかが冷えたり、暴飲暴食が続いたり、ストレスがたまったりすると、消化器機能が低下し、腹部にさまざまな症状が現れます。漢方における消化機能の低下は、身体のエネルギーである「気」の量が低下した状態だと捉えられ、「気」が腹部で滞ることで、おなかのハリなどの症状に繋がると考えられるのです。
おなかのハリを改善するためには、足りなくなってしまった「気」を補うとともに、停滞した「気」をめぐらせてあげることが大切です。
「気」を補い、めぐりを整える食養生
シイタケ・しめじなどのキノコ類、オクラ・山芋・納豆などのネバネバした食材、雑穀類は「気」を補う食材です。味噌汁や副菜に使いやすいので、毎日の食事にも意識して取り入れましょう。
春菊などの香味野菜、柑橘類、お酢、ハーブティーなどは「気」のめぐりを整える食材です。お酢単体では摂取しにくいですが、サラダにかけるドレッシングを自作したり、納豆のたれのかわりに使ったりすることで、おいしく摂取できます。
身体の冷えとおなかのハリ
身体の冷えを感じる方や夏場でも一日中冷房がきいた部屋にいる方、冷たいものの摂りすぎの方は注意が必要です。おなかを触ってみてください。手よりもおなかが冷たい場合は、冷えにより、消化機能が低下してしまっている可能性があります。
以下の方法で、身体を温めることも意識しましょう。
・身体を温める食材(生姜、ニンニク、唐辛子、ネギなど)を食事に取り入れる
・温かいスープを食事にプラスする
・腹巻やカイロなどでおなかを温める
・入浴は湯船に浸かる
漢方を取り入れておなかのハリを改善しよう
漢方によっておなかの血流を促し、冷えてしまったおなかを温めれば、腸の動きを助けられます。気温の高い季節でもおなかは意外と冷えているものです。今は、通気性の良い素材でできた腹巻もありますので、上手に活用してみてください。それでもなかなか症状が改善しない場合は、漢方をうまく取り入れ、おなかのハリを改善していきましょう。
【調査概要】
調査手法:インターネットリサーチ(QiQUMO利用)
実施期間:2024年6月19‐20日
調査対象:スクリーニング調査/20代~60代の男女 本調査/おなかのハリの経験がある方
有効回答数:スクリーニング調査6,000名 本調査500名
調査実施機関:株式会社クロス・マーケティング
調査主体:株式会社ツムラ
高座渋谷つばさクリニック 院長 武井 智昭/https://tsubasakai.or.jp/koza/
- 経歴
2002年 慶應義塾大学医学部卒業
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務(内科)
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室兼任
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務 (スマイルこどもクリニック)
2015年 小谷クリニック 内科・小児科(訪問診療部)部長
2017年 「なごみクリニック」内科・小児科・アレルギー科 院長
2020年4月 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任 - 専門医・認定医
小児科専門医・指導医
日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)
臨床研修指導医(日本小児科学会)
抗菌化学療法認定医
プライマリケア学会認定医
認知症サポート医
小児感染症学会認定医
日本臨床内科学会認定医
日本糖尿病学会認定医