
2019.05.01
漢方ブログ
不眠・不眠症の原因とおすすめの漢方薬
私たちの体には、朝に目覚め、夜に眠るという睡眠リズムが備わっています。しかし、何らかの原因でこのリズムが狂ってしまうと、「眠れない」状態が続くことがあります。それが精神的に不安定になっている場合もあれば、冷え症から起きている場合もあります。
不眠・不眠症とは?
不眠または不眠症は、本人が満足できる睡眠時間や睡眠の質が得られない状態が続いている場合をいいます。
たとえば、自分では意識していなくても、次のような状態が続くことはありませんか?

- 眠ろうとしているのに、ささいなことが気になって眠れない
- 夜中に何度も起きてしまう
- 睡眠はとったのにぐっすり眠った感じがしない
- 早朝に目覚めてしまい、再び寝ようとしても眠れない
- 神経が高ぶってしまい、寝つきが悪い
不眠・不眠症の原因
不眠症になる原因としては、次のような要因があげられます。
- 騒音や振動、明るさ、気温、寝具の状態といった環境的な要因
- ストレスなどの精神的な要因
- 痛みなどの肉体的な要因
- 病気
- 薬や成分(カフェイン、アルコールなど)の影響
- 年齢(高齢になるほど眠りにくくなる) など
このなかでも、最近はストレスによる精神的な要因がかかわっているケースが多いようです。また、心の病気が原因で不眠症になっているケースもあります。
漢方医学の考え方
漢方では、不眠・不眠症の原因を、主に「気・血・水(き・けつ・すい)」(※)のめぐりが悪くなっていることだと考え、全身のバランスを整えることを重視します。たとえば、ストレスなどで「気」のめぐりが悪いと、イライラや不安などの精神的な症状が現れ、不眠につながります。また、「血」のめぐりが悪いと、体が冷え、布団に入っても手足の末梢血管が収縮した状態が続き、「寝つきが悪い」「熟睡できない」などの睡眠障害が起こりやすくなります。
※体を維持するための3要素「気・血・水」
気(き):体をめぐっているエネルギーを表します。
血(けつ):血液や血液によって運ばれる栄養素、熱を表します。
水(すい):体内の液体のうち、「血」を除いたもののこと。
不眠・不眠症を改善するには?
不眠を改善するためにまず行うことは、不眠の原因を取り除き、眠りにつきやすい環境を整えることです。
また、不眠に悩む人は、ほかにも何らかの不調を抱えている傾向があります。この場合は、不眠以外の症状を含めて、生活習慣を改善していくことで、体全体のバランスを整えていきましょう。それでも眠れない場合は、漢方薬の服用を検討することも一つの方法です。
十分な睡眠のための生活習慣
不眠を改善するための第一歩は、まず生活習慣から不眠の原因を取り除くことです。それと同時に、自分なりに眠りにつきやすい方法を工夫する必要もあります。
起きる・寝る時間を一定に
人には1日周期でリズムを刻む「体内時計」が備わっているといわれます。そのため、意識しなくても日中は活動、夜間は休息という状態に切り替わります。このはたらきにより、人は夜になるのと自然に眠くなります。週末の夜ふかしや休日の寝坊、昼寝のし過ぎは体内時計を乱すことになるため、平日・週末にかかわらず、同じ時刻に起きる、寝るという習慣を心がけることが大切です。

睡眠時間に目標を作らない
睡眠時間が足りていれば、体が十分に休息できるというわけではありません。重要なのは脳や体が休まる質の高い眠りがいかに得られるかということ。睡眠中は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」を、4~5回繰り返します。ノンレム睡眠には深さのレベルがあり、最も深く質の高い眠りを得られるのが最初の1~2回。眠ってから約3時間の間にノンレム睡眠に達すれば、脳も体も休ませることができるため、朝起きた時に「ぐっすり寝た」という満足感を得ることができるのです。がんばって何時間眠ろう、というような目標は立てる必要はありません。寝つきが悪いまま、横になっている時間が長過ぎるとかえって熟眠感が減ることがあります。何時間も寝られないときは、布団から出て、読書やストレッチなど、ほかのことをしてみましょう。
軽めの運動をする
ほどよい筋肉の疲労は心地よい睡眠を促してくれます。しかし、激しい運動は交感神経を優位にして寝つきを悪くするため、日中に軽い運動を行うようにするとよいでしょう。また、短期間の集中的な運動よりも、負担にならない程度の有酸素運動を長時間継続することが効果的なようです。

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自分流のストレス解消法を
ストレスは、心地よい睡眠を妨げる要因の一つ。ときには心配ごとやイライラがあって一晩中よく眠れなかったということもあるでしょう。寝る前には副交感神経を優位にさせるのが良い睡眠を促すコツです。好きな音楽や読書などでリラックスする時間をとり、心身の緊張をほぐしましょう。
また、日ごろからストレスをためないためには、自分に合った趣味をみつけて、ストレスをためない工夫が必要です。また、気持ちをうまくリセットしたり、イライラがあるときは気分転換に運動をしたりと、セルフケアをしていきましょう。
寝る前に体を温める
質のよい睡眠のためには、体を温めることが大切です。体を温める習慣をつけることで、寝つきが良くなる場合があります。おすすめはやはり毎日の入浴。40度くらいのぬるめのお湯にゆっくりつかって、とくに手足を温めるのが効果的です。

睡眠のとき、体は熱を外に逃がし、体の深部や脳の温度を下げることで、眠りに入ります。体を温めてから布団に入ると、血流が良くなった手足から熱が逃げていき、体温が下がって寝つきやすくなるのです。お風呂上がりに手首や足首を伸ばすといった軽いストレッチを行うことも、質のいい睡眠をあと押ししてくれます。

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不眠・不眠症におすすめの漢方薬
「眠れない」状態の人は、ほかにも不調を抱えていることが多く、漢方では、全身のはたらきを整えて改善を目指します。そのため、「眠れない」以外の症状や体質にあわせて漢方薬を選択していきます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
ホルモンバランスの乱れなどによるイライラや不安感がある方に
効能・効果
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症(※)、不眠症
※血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。
こんな漢方薬です
気のめぐりが悪くなり起こった、イライラや不安感を鎮める漢方薬です。また、「血」も同時に巡らせることで冷え症も改善します。
更年期や生理などホルモンバランスが乱れ、イライラや不安感があり眠れない方や体が冷えて眠れないという方に適しています。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
ストレスなどによる不安感やイライラがある方に
効能・効果
体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘
こんな漢方薬です
ストレスなどにより気のめぐりが悪くなったことで起きる不安感やイライラを鎮める漢方薬です。仕事や家庭、人付き合いなどで不安がある方の高血圧を伴う不眠に適しています。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
ちょっとしたことが気になる方に
効能・効果
体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの次の諸症:神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症
こんな漢方薬です
ストレスなどによる不安感やイライラを鎮める漢方薬です。疲れやすく、ちょっとしたことが気になって落ち着かずなかなか眠れないという方に適しています。
不眠におすすめの食べ物
眠れない日が続いてストレスを感じる場合は、気分をリフレッシュしたり、リラックスさせたりする食べ物をとることも効果的です。
心を落ちつかせる食材
卵の黄身(白身と混ぜない)、牛乳、豆乳、なつめ、はちみつ

香りでリフレッシュできる食材
青じそ、春菊、セロリ、このほかの香りがある野菜
