身体の根本

益軒さんは、『養生訓』の冒頭で、自分の身体は自分のものではない、と説く。

人の身体は父母を根本とし、天地を出発点とする。
身体は天地父母の賜物であるから、よく養生して長命を得るように心がけねばならない。これは天地父母に仕える孝の基本である、とした。

益軒さんは、父母への崇拝と天道に従う順天の思想を冒頭に掲げ、人生哲学を披露した。

・原文「人の身は父母を本(もと)とし、天地を初(はじめ)とす。天地父母の恵をうけて生まれ、又養(やしな)はれたる身なれば、わが私の物にあらず。天地のみたまもの、父母の残せる身なれば、つゝしんでよく養ひて、そこなひやぶらず、天年(てんねん)を長くたもつべし。是(これ)天地父母につかへ奉る孝の本也。」

(巻第 1・総論 上。底本『益軒全集・全 8 巻』益軒会編)