INTERVIEW #08

ダイレクトに
患者様の役に立てる
臨床研究という道。

ダイレクトに
患者様の役に立てる
臨床研究という道。

Profile

研究開発本部 ツムラ漢方研究所
漢方研究三部 (臨床研究グループ)
生命科学研究科バイオサイエンス専攻修了

  • # 研究(臨床)
  • # 2018年入社

入社理由

もともと学校の先生になりたかったんです。しかし、社会経験がないなかでは生徒にキャリア指導はしにくいと考え、企業への就職を決めました。大学では理学部系の研究室で、生殖細胞と体細胞の違いについて研究していました。その延長で研究職をはじめ営業や生産の仕事にも目を向けて、命に関われること、成長できる環境があること、将来性があること、この3つの条件をもとに企業を選びました。ツムラを選んだ理由は、何千年も前から存在しているのにもかかわらず、いまだ解明されていない作用機序について、自分自らが解明の一端を担ってみたいと考えたからです。
西洋薬よりも漢方薬に将来性を感じたのは、すでに市場で活用されている129処方を一つひとつ研究することで、ダイレクトに患者様の役に立てると思ったからです。比べて西洋薬の新薬は20〜30年のスパンで1つ開発できるかどうかの世界です。短いスパンでたくさん役に立てるところが魅力でした。配属されたのは「基礎研究」ではなく「臨床研究」の部門で、想像していた研究とは異なり、全国の医師と共同研究するというまったく新しい世界に挑戦しています。

現在の仕事内容

今、取り組んでいる臨床研究は、月経前症候群(PMS)に対する『加味逍遥散』の効果検証です。レスポンダー(漢方薬の効果が得やすい患者背景)を明確にすることこそが漢方の臨床研究の重要な部分と考えており、個別化医療の実現につながると信じております。以前、更年期障害研究を実施した結果、層別解析により閉経前・不眠の方がレスポンダーである可能性が見えてきました。ここから着想を得て、PMSの臨床研究を企画しました。
研究において苦労した点は、研究対象者を集めることや人によって感じ方の異なる症状をどのような形で表現するかです。客観的な生体情報を取得するためにスマートウォッチのFitbitを着用してもらうことにしたのですが、そこにも壁がありました。こうしたデバイスを導入した研究事例が社内になく、データの抽出や保管方法にも課題があったことも分かりました。研究結果を通じて、「隠れ我慢」といって病院に行く必要がないと考えていた女性が「私も病院に行って漢方薬を処方してもらいたい」と思ってもらえたら嬉しいですね。

仕事で意識していること

高度な専門性を軸に医療関係者との情報交流、ニーズ調査による企画、研究コーディネートを支援する側面を兼ねそなえた仕事だと思います。ほかにも臨床研究と同時進行で「基礎研究のマネジメント」を行っているのですが、これも自分で手を動かして研究するのではなく、医師が行う基礎研究をサポートする仕事なんですね。先生が「面白い、ぜひ解明してみたい」と思えるテーマを提示し、人を動かすという難しさがあります。
また常に「面白い着眼点」を提案することを大事にしています。チームの仲間は薬剤師の資格を持っていたり、薬学部出身者が多いのですが、薬の専門知識がない私だからこそ見つけられる観点があると信じて取り組んでいます。研究結果は5年に1度くらいのスパンで論文化することが求められますし、作成する論文はツムラの営業支援活動における重要なツールです。自分で考え組み立てて、社内外に貢献する面白さがあります。

次なる挑戦

もっと多くの臨床研究を経験したいですね。新しいデバイスの活用にも積極的に取り組んでいきたいです。たとえば、汗からホルモンの値が分かるデバイスが開発されているそうで、血液検査を行う必要がなくなれば、病院での検査が必要なくなり、自宅でデータを収集できるようになります。患者様の負担だけでなく、研究コストも削減できると思っています。
研究職は、自社にとっても業界にとっても肝心な情報、誰も知らない情報を、誰よりも先に知ることができる立場だと思うんですね。もちろんその分、背負っている責務は大きいと思いますが、何事にも変え難い醍醐味があります。だからでしょうか、今は学校の先生になりたいと思わなくなりました。週末にはボーイスカウトの活動に参加して、子どもたちと触れ合っていますし、教師以外にも子どもの教育に携わる選択肢はありますから。この先も、臨床研究でダイレクトに患者様の役に立ちたいと思います。