漢方製剤の均質性
漢方エキス製剤の均質性の実現
生薬の栽培・調達に始まり、品質試験、ロット(生産・品質の最小単位)ごとのデータの蓄積、独自に開発した製造設備など、当社の漢方エキス製剤に関わるすべてのプロセスでの品質の追求が、天然物を原料とする漢方エキス製剤では難しいとされていた「均質性」を実現しています。
天然物由来の生薬のばらつきを抑制
漢方エキス製剤は、決められたルールに基づき、ほとんどの場合、複数の生薬を組み合わせて作られます。生薬とは天然物で、主に植物のほか、動物、鉱物由来のものがあり、乾燥させたり大きさや形を整えるなどの加工が施されています。
昔は、生薬を土瓶などでコトコトと煎じて服用していましたが、この方法だと火加減や煎じる時間などによって、出来上がりに差異が生じる可能性がありました。 当社の漢方エキス製剤は、生薬を工業的に煎じて得られたエキスを乾燥して作る「エキス剤」であり、煎じ薬に比べると品質が安定しています。しかし、生薬は天然物のため、同じ基原の種や苗から育てても土壌や気候などの条件によって生育状態が変わってきます。ワインに当たり年があるのは、ブドウの出来が年によって異なるためです。生薬にも同じことが言えますが、医薬品である漢方エキス製剤は、常に一定の品質であることが求められています。
漢方エキス製剤の原料である生薬には、天然物由来の素材につきもののばらつきがあります。同じ生薬であっても複数の系統が存在しており、含有成分や成分バランスが異なっています。また、同一基原の生薬であっても、産地や生育環境・採取時期、保管状態などによって成分が変動します。基原の違い、産地、生育環境・採取時期、保管状態などによって大きなばらつきのある生薬を、そのまま原料にすると、製品である漢方エキス製剤の均質性に影響を及ぼします。
ツムラは、常に一定の品質を有する漢方エキス製剤の製造をめざし、原料である生薬を厳選しています。具体的には、ツムラ基準に合格した生薬だけを使用することで、原料のばらつきを抑制しています。そのために、ツムラでは産地の固定化や栽培方法の指導などに継続的に取り組んでいます。同一の系統、栽培地・採取地、生産年、栽培・加工・保管方法で調達された生薬は、ひとつの「ロット」として扱うことが可能です。ツムラは、あらかじめ定めたルールに従ってロットを構成し、ロットごとに生薬の品質や異物、汚染などの検査を行い、ツムラ基準に合格した生薬のみを使用しています。

データとノウハウを活用した生薬の調合
原料として使用する生薬は、検査を行ったロットごとに含有成分のデータを蓄積し、管理しています。これらのデータと長年培ったノウハウをもとに、使用する生薬ロットの割合を事前に指定して調合し、漢方エキス製剤の均質性を確保しています。
ノウハウと技術の粋を集めた漢方エキス製剤の製造工程
ツムラ漢方エキス製剤の均質性の追求は、製剤の製造工程でも続きます。ここで力を発揮するのがツムラの技術力であり、独自の製造ノウハウとそこに基づいて開発された製造設備です(図2、3)。
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図2:抽出 -
図3:乾燥
例えば、調合した生薬からエキス粉末を製造する工程では、伝統的な方法に則って作られた生薬の抽出液を、成分への影響が少ない方法で分離・濃縮し、大型のスプレードライ装置で瞬間的に乾燥させています。また、エキス粉末からエキス顆粒を作る造粒工程でも、成分の変化が極力起こらない手法を採用しています。 こうした製造ラインは、長年培ったノウハウを駆使してツムラが独自に構築したものです。また、製造工程は、漢方エキス製剤ごとの製剤設計に基づき、コンピュータ制御されています。 以上のように、ツムラでは生薬栽培・調達から製造に至るまで、均質性を確保した漢方エキス製剤を作るべく品質マネジメントに注力しています(図4)。


- ※1Good Agricultural and Collection Practice
- ※2Good Manufacturing Practice
製剤における均質性の追求
生薬は天然物であるため、天候、産地などによって品質や成分にばらつきがありますが、最終製品である漢方エキス製剤の均質性の確保に挑戦してきました。ツムラ基準に合格した生薬のみを使用しても、成分にはなおばらつきが残ります。ツムラでは、生薬ロットごとの含有成分のデータを蓄積・管理することにより、製剤の製造において、さらなる均質化を可能にしています。また、エキス粉末中の成分変化を最小限に抑えて製剤化するために、独自の製造ラインを開発するとともに、製剤ごとにコンピュータで制御し、最終製品である漢方エキス製剤の均質性を実現しています(図5、6)。
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図5:【生薬A】乖離度分布 -
図6:【漢方処方A】乖離度分布
- ペオニフロリン乖離度については、(実測値‒平均値)×100/平均値
均質性が支える漢方の科学的エビデンス構築
近年、日本国内のみならず世界各地の研究機関で、ツムラ漢方エキス製剤の作用機序の解明や科学的エビデンスの構築が進んでいます。RCT※をはじめとするエビデンス集積の前提となるのが、漢方エキス製剤の均質性です。ツムラは、漢方エキス製剤の均質性を追求することでエビデンスの構築に寄与しています。
- ランダム化比較試験