品質管理・製造・流通について

品質管理体制の充実

ツムラ品質マネジメントシステム

当社は、品質方針のもと、品質保証システムのさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステム」の体制を整え、品質を重視する取り組みを推進しています。このシステムは、ツムラグループ全体を取り込む包括的なものであり、これによって経営陣の関与をさらに明確にしました。
また、グローバル化(PIC/S対応を含む)や法改正などにも適正に対応できる仕組みとなっています。

ツムラ品質マネジメントシステム

PIC/S:Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Schemeの呼称、医薬品査察協定および医薬品査察共同スキームのことであり、GMP基準などの国際化を推進する枠組み

原料生薬の品質・安全管理

中国各地で調達した原料生薬は、主に深圳津村に集められます。また、日本および中国以外で調達した原料生薬は石岡センターに集められます。両拠点では、同等の品質試験によるチェックを実施しており、ツムラグループで定めた品質基準をクリアした原料生薬だけが、漢方製剤を製造する各工場に供給されます。
とくに、残留農薬・微生物・重金属などの安全性に関わる品質については、分析・製剤研究センターで独自の試験方法を開発するとともに、品質試験を実施し評価しています。
さらに、分析・製剤研究センターで開発した分析技術を深圳津村にも導入し、中国産の原料生薬については、深圳津村で品質試験を実施しています。

サンプル生薬の品質検査
サンプル生薬の品質検査

製品の品質・安全管理

現在の漢方製剤の品質規格は、1980年(薬審第804号)および1985年(薬審2第120号)の厚生省(当時)からの通達に基づき設定されています。
この設定に基づき、機器分析による成分定量試験など多くの試験項目を検査しています。さらに、自社規格として残留農薬、微生物など安全性に関わる品質試験も、分析・製剤研究センターで実施しています。

品質試験
品質試験

品質試験

残留農薬

原料生薬や漢方製剤について、各国の薬局方で規定されている農薬をはじめ、日本および中国・ラオスなどで生薬栽培に使用されるすべての農薬、および各国で使用が禁止されている農薬を対象として、残留農薬分析を実施しています。
生薬および漢方製剤には多種多様な成分が含有されており、ごく微量に残留する農薬を分析するためには、農薬だけを効率よく抽出し分析する工夫が必要です。その技術を独自に開発し、試験・検査を行っています。さらに、土壌への残留、ドリフト(他の農作物などに散布された農薬の飛散)などによる想定外の農薬残留を対象とした技術の開発をすすめています。また、分析結果は栽培現場へフィードバックを行い、農薬管理のさらなる改善に活かしています。

残留農薬検査

微生物

エキス粉末および製剤の全ロットについて、日本薬局方収載の微生物試験に準拠した検査を実施しています。微生物試験においては、検体に含まれるさまざまな成分が微生物の検出を阻害しますが、独自に開発した技術を使い、より信頼性の高い試験を行っています。

重金属・ヒ素

原料生薬およびエキス粉末については、日本薬局方に定められた基準・方法に準拠し、検査を実施しています。加えて、より詳細なリスクを検知し、安心できる漢方製剤を供給するため、有害4元素(カドミウム、鉛、水銀、ヒ素)について、ICP-MSを用いて個別かつ高感度に分析できる方法を開発し、管理しています。

ICP-MS:誘導結合プラズマ‒質量分析計

アフラトキシン

アフラトキシンは一部のカビにより産生されるカビ毒の一種であり、人や動物に対して有害な作用を示します。当社は独自の分析方法を開発し、漢方製剤におけるアフラトキシン汚染リスクを管理しています。

放射性物質

2011年3月の東日本大震災にともなって発生した原子力発電所の事故により、新たに放射性物質の試験管理体制が課題となりました。これに対して、同年12月13日付けで厚生労働省から通知が出され、日本製薬団体連合会が「生薬等の放射性物質測定ガイドライン」を策定しました。このガイドラインに従い、原料生薬や製造用水、さらには漢方製剤の安全性を確認し、品質を管理しています。

生薬等の放射線物質測定ガイドラインについて

生産能力の増強

医療用漢方製剤の販売数量は着実に伸長し続けています。長期的な需要予測をもとに、エキス粉末から顆粒・製品にわたる生産能力の増強・要員確保・人財育成などの計画を立てています。
製品の安定供給体制を維持するために、静岡・茨城・上海の3拠点において、現状の生産能力を最大限に発揮するとともに、計画的・段階的に設備を増強していく方針です。具体的には、既設設備の基礎能力向上に努めるとともに、ロボット技術などの新生産技術の導入を図り、省人化・省力化を推しすすめています。

ロボット技術による省人化・省力化

生産システム改革のひとつとして、ロボット技術などの新生産技術を導入し、製造工程の自動化に取り組んでいます。
さまざまな分野の技術を取り込みながら開発した自社仕様のロボットは、製造工程の搬送設備や原料の投入設備、箱詰設備などに導入しています。
これにより、これまで人が行っていた製造作業が、製造監視へと変わることで、連続24時間生産が可能となりました。生産性が向上するとともに、従業員の労働負荷削減、衛生管理の強化にも寄与しています。

容器を反転させる多軸ロボット
容器を反転させる多軸ロボット

製造工場を知る

●茨城工場

●静岡工場

グループサプライチェーンの最適化

漢方製剤は、原料生薬の栽培も含めた調達から始まり、多くの工程を経て製品化されます。 漢方・生薬事業におけるグループ内の各工程や工程間、グループ外の生薬調達の拠点や製品販売に至るまでのサプライチェーン全体の状況を把握し、業務改革に取り組んできました。
今後、さらなる効率化・最適化を実現するための改革手法であるサプライチェーンマネジメント(SCM※)を取り入れた経営を実施します。グループ横断的なプロジェクトによる活動を通じてSCM改革を実現し、事業環境の変化にも機敏に対応できる基盤を築いていきます。

SCM:当社が目指すSCMは、販売計画、生産計画、原料生薬の栽培・手配・調達・加工・移動および在庫計画までについて、需要を起点として連携させ、自動化・迅速化を実現することが目的

SCM改革のイメージ