情報収集・提供活動、研究・開発について

当社は「国内のどの医療機関・診療科においても、患者さまが必要に応じて“漢方”を取り入れた治療を受けられる医療現場の実現に貢献する」ことを目指しています。そのために、大学医学部・医科大学における医学生への漢方医学教育の支援、臨床研修指定病院における研修医への漢方説明会での支援、医療担当者への各種漢方セミナーやプロモーション活動を体系立てて継続実施していきます。

"漢方"のツムラに向けた取り組み

活動の全体像(卒前・卒直後・卒後の一貫した漢方医学教育)

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漢方医学の確立

当社は、漢方医学の確立のため、全国82の大学医学部・医科大学における漢方医学教育の実施に向け、 医学生への漢方医学教育の支援や臨床研修指定病院※1における研修医への漢方勉強会の支援、 医療従事者への各種漢方セミナーやプロモーション活動を体系化して取り組んでいます。 また、より多くの医師に漢方を取り入れた治療を行っていただくためには、卒前・卒直後・卒後と、 一貫した漢方教育が重要であると考え、次のような活動を進めてきました。
その結果、2019年度には82の大学医学部・医科大学で漢方教育が実施されるようになり、 78の大学に漢方外来※2が設置されています。 さらに、4つの医療系教育モデル・コア・カリキュラムのすべてにおいて、漢方医学教育に関する内容が盛り込まれる等、 大学での漢方医学教育は着実に定着しています。

※1臨床研修指定病院:医学部を卒業し、医師免許を取得した医師に、卒後2年間、実地研修を受ける場を提供する病院

※2漢方外来:漢方医学的な診察・治療を行う漢方専門の外来

医療担当者への情報提供活動

情報提供活動の推進

2019年から始めたKampoMega Web講演会は、2020年上期には4回開催しており、ご視聴いただく医師数も増加しています。 エリア活動では、地域特性・施設の特徴を考慮したきめ細かい情報提供を行い、 漢方を学びたい医師へのニーズに応えるために、各営業拠点による企画を開催しています。
また、MRによる施策を積極的に展開し、各エリア、医療圏の状況に合わせた新たな活動も開始しています。 WEBを活用したセミナーを大幅に増やす等、オンラインによる活動と訪問型活動を使い分けるハイブリッド型の活動に加え、 e-プロモーションをさらに充実させ、積極的かつ効果的な情報提供活動を推進しています。

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活動の原点

当社の医療用漢方製剤は、1976年に33処方が薬価基準に収載されました。 その後、段階的に収載処方数が増え1987年には129処方となり、現在に至っています。 薬価基準収載以降、医療用漢方製剤の売上は着実に伸長、1991年度には約1,000億円に達しました。 そのような中、当時の主力製品であった小柴胡湯(ショウサイコトウ)に副作用問題が発生。 安全性を不安視する声が広がり、医療用漢方製剤全体の売上が低迷しました。 この背景として、漢方製剤にも副作用はあるということが、医療現場で十分に認識されていなかったことなどが考えられます。 漢方製剤の普及が進む一方で、漢方医学的な診断や有効性・安全性を含めた「漢方医学」そのものが、 医療現場や国民の皆さまに十分に浸透していなかったことが一因でした。 その後、それまでの営業方針を大きく転換し1997年度から「漢方医学の確立」、 2004年度から「育薬」をスタートさせるなど、さまざまな施策を実行してきました。 2019年度の実績は数量ベースで2,200万本(実売)を超えました。

医療用漢方製剤129処方の実績推移
(実売数量の伸び)

漢方市場の拡大と安定成長

漢方市場拡大のための戦略

漢方市場拡大のための基本戦略として、「高齢者関連領域」「がん領域(支持療法)」「女性関連領域」を重点3領域として活動を集中させています。これら領域の基礎・臨床エビデンス、漢方掲載の診療ガイドラインおよび漢方医学的な処方の使い分け等に関する情報提供を継続的に実施しています。

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この重点3領域では、現状において治療満足度が低い疾患に対する医療ニーズ等を重点課題として取り組んでいます。具体的にはBPSD、フレイル(虚弱)、がん支持療法、更年期障害などに対応した処方の売上拡大を目指します。

※ BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(興奮、焦燥感、睡眠障害など認知症の行動・心理症状)

エビデンス・パッケージの充実

エビデンス・パッケージとは、添付文書の充実、診療ガイドラインへの掲載とともに、臨床エビデンス・作用機序・副作用発現頻度調査・薬物動態(ADME)・医療経済学的データを揃えることです。
なお、臨床エビデンスは、メタ解析(複数の研究結果を統合し、より高い見地から分析する)とRCT(ランダム化比較試験)のデータとしています。

※ ADME:Absorption(吸収)、Distribution(分布)、Metabolism(代謝)、Excretion(排泄)の略語。生体に薬物を投与した後に、体内でどのような動態を示すかをみる

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新技術による漢方薬の解明事項

漢方薬は、植物由来の多成分系複合製剤という特性があることから、これまで科学的な解明が困難とされてきました。今後は、有効性・安全性を示す臨床研究やエビデンス構築だけでなく、多成分による作用メカニズムの解明、医療経済学的効果の検証など、漢方薬の有用性を示していく研究なども新たな基軸として実施していきます。
近年、東京大学など最先端アカデミアがもつ新技術が進展し、IT技術や新分析法などを用いた漢方薬の研究や分析が進んでいます。

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※1システムバイオロジー:生体機能を個々に分解するのではなく、統合的に理解するために、AI(人工知能)、生理学や生物工学を利用して、さまざまな役割をもつ組織や遺伝子などがどのように関わりあうかを解明する生物学のアプローチの一種

※2多成分系ネットワーク:漢方薬の場合、多成分が多様な部位に作用し、薬効を示すと考えられる。それらを総合的に解析して見出される関連性(ネットワーク)としての作用メカニズム

※3メタボロミクス:温度や光などの環境変化や食事、薬物摂取などの外部刺激によって、生体内に存在する代謝物質の種類や濃度に変化が起こる。これら代謝物質を、質量分析計などを使って分析・解析する手法のことであり、病気の診断などに応用されている研究領域

※4バイオマーカー:疾患の状態や変化、治癒の程度の評価を可能にする生体由来因子

※5腸内細菌解析:腸内には、多種多様な微生物、細菌などが存在しており、これら細菌などを解析することにより、その由来などを調べる手法、技術

※6レスポンダー・ノンレスポンダー:薬が効く人・薬が効かない人

※7ビッグデータの活用:膨大な日常の医療データを活用した疫学研究から行う医療の質評価、医療経済分析など

TU-100(大建中湯)の米国開発進捗

漢方・生薬事業を通じて培った技術・ノウハウと、 日本国内の「育薬」研究による基礎・臨床の最新データを米国開発に連携させる体制を整え、 TU-100の米国における医療用医薬品としての承認取得・上市を目標に活動しています。
2017年度までに、IBS(過敏性腸症候群)、POI(術後イレウス)、クローン病の3つの疾患領域を対象とした、 前期第二相臨床試験および、それらの医療ニーズの調査を終了しました。 2018年度からは、対象領域をPOIに集約し、その開発を進めていくための日本、米国におけるアドバイザリー・チームを編成しています。 POIは、腹腔鏡手術が広く普及している米国においても、重要な医療ニーズがある領域であり、 大建中湯はその治療薬として有望であるとの評価が得られています。
2019年度はFDA(米国食品医薬品局)とのミーティングやマスタースケジュールの策定に取り組み、 2020年度以降の後期第二相臨床試験の実施と早期完了を目指していきます。

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育薬5処方の基礎・臨床研究

  • 大建中湯ダイケンチュウトウ 対象疾患・症状 術後イレウス(腸管麻痺)などに伴う腹部膨満感
    大建中湯の当該対象疾患・症状における臨床的エビデンス確立を目的として、2007年に「DKTフォーラム」が設立されました。 このフォーラムでは、4つの臨床研究(大腸班、肝外科班、胃・食道班、臨床薬理班)と、 大建中湯の作用メカニズム解明を目的とした基礎研究が開始されました。 この研究結果は国内外の学会などで発表され、2015年には、Journal of the American College of Surgeons(JACS)誌など、 すべての結果が英文誌に掲載されました。
    現在の消化器外科領域では、手術後早期回復の観点から、ERASプロトコルという考え方が注目されています。
    大建中湯においても、消化管運動亢進、腸管血流増加、抗炎症などの作用があり、このERASプロトコルに合致する医薬品として、 その有効性が検討されています。 ※ERASプロトコル:手術後の早期回復に有効なことが医学的に証明された手法を総合的に導入する管理方法。(ERASは、Enhanced Recovery After Surgeryの頭文字の略)
  • 六君子湯リックンシトウ 対象疾患・症状 FD(機能性胃腸症)、GERD(胃食道逆流症)などに伴う上腹部不定愁訴、食欲不振
    六君子湯においては、これまで実施されたさまざまな臨床研究に基づき、 2015年に改訂された『胃食道逆流症診療ガイドライン(日本消化器病学会編集)』に治療手段としてとりあげられました。
    また、健常人を対象としたADME(薬物動態)臨床試験の結果が、2015年7月医学雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。 さらに2016年度から副作用発現頻度調査を開始し、有効性とともに安全性の情報も充実してきました。
    今後の消化器内科領域の展開として、六君子湯の研究により得られた知見をもとに、 六君子湯の効果が不十分な患者さまに対して、半夏瀉心湯など他処方の研究をすすめ、漢方製剤の有効性を追求していきます。
    一方、新中期経営計画における重点3領域のひとつである高齢者関連領域に対して、 六君子湯を中心に食欲不振などに対する有効性を確認する臨床研究に着手しています。
  • 抑肝散ヨクカンサン 対象疾患・症状 認知症の行動・心理症状(BPSD)
    抑肝散は、2004年度からエビデンス集積に取り組み、作用メカニズムの解明、活性成分が同定され、その成分が血中に吸収されることが健常人で確認されました。
    臨床では、認知症の行動・心理症状(BPSD)への効果確認や副作用発現頻度調査が行われ、有効性や安全性のエビデンスが集積されています。
    その結果、『認知症治療ガイドライン2010(日本神経学会監修)』『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(日本老年医学会編集)』に掲載されるなど、広くBPSDの治療方法として知られるようになりました。
    認知症患者さまを対象とした睡眠障害の臨床研究結果が、The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease誌に掲載されるなど、不眠症や不安神経症などの精神神経症状を有する疾患に幅広く臨床応用されています。
    今後も、抑肝散の研究により得られた知見をもとに、BPSDにおける抑肝散類似処方の使い分けや、抑肝散の効果が不十分な患者さまに対して、他処方の研究をすすめ、漢方製剤の有効性を追求していきます。
  • 牛車腎気丸ゴシャジンキガン 対象疾患・症状 抗がん剤などによる末梢神経障害(しびれなど)
    半夏瀉心湯ハンゲシャシントウ 対象疾患・症状 抗がん剤などによる粘膜障害(下痢・口内炎)
    牛車腎気丸は抗がん剤投与にともなう末梢神経障害(しびれ・痛み・冷感)に対して、半夏瀉心湯は化学療法(抗がん剤投与)や放射線療法にともなう消化管粘膜障害(下痢・口内炎)に対して、それぞれの症状の軽減を目的に研究がすすめられています。
    その結果として、半夏瀉心湯のがん化学療法中の口内炎に対する有効性を示唆するHANGESHA-G Study論文が、Cancer Chemotherapy and Pharmacology(CCP)誌に2015年5月掲載されました。
    また、六君子湯は抗がん剤投与による悪心や食欲不振などに対して、がん領域におけるエビデンス構築に向けて多くの基礎・臨床研究ならびにGCPに準拠した製造販売後臨床試験が実施されています。さらにがん領域でニーズの高いがん関連疲労における漢方製剤の有効性についても検討がすすめられています。

    ※GCP(Good Clinical Practice):医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令

ヒト由来試料・情報等利用研究に関する情報公開

ツムラでは、ヒト由来試料や情報を利用して研究を行っております。
研究の実施にあたっては、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(以下、倫理指針といたします)および 「個人情報の保護に関する法律」(以下、法律といたします)を遵守しております。

研究にヒト由来試料・情報を用いる場合は、指針や法律に従って、 研究対象者の皆様から適切に同意を取得することを原則としておりますが、 同意の手続きを行うことが困難な場合がございます。このような場合は、倫理指針や法律に則り、 これらのヒト由来試料・情報を研究に使用することを公開しております。 これらの情報につきましては、下記のリンクよりご覧いただけます。

なお、ツムラでは研究対象者の方々が特定できないように、匿名化されたヒト試料・情報を入手し研究に用いておりますので、 研究利用の中止をご希望される場合は医療機関へご相談ください。