CFOメッセージ

成長投資を着実に実行。
中長期的な企業価値の向上に向けた
「道筋」をつくります

取締役CFO (最高財務責任者)

半田 宗樹

長年培ってきた漢方バリューチェーンが、持続的に収益を生み出す原動力

漢方市場において、薬価収載されているツムラの医療用漢方製剤129処方は、時代の変遷とともに医療ニーズにともなう処方の変動は生じるものの、不要になる処方は存在しません。したがって高齢化や女性の就労機会の増加など、社会構造や疾病構造の変化を取り込むことで、長期にわたって持続的に収益が見込める事業だと言えます。また、ツムラは天然物である原料生薬の栽培工程から管理することで原料の品質をコントロールしており、医薬品としての安全性・有効性・均質性を高める技術とノウハウを保有しています。このツムラならではの無形資産を形成できた背景には、長い年月をかけて原料生薬の栽培・調達から製造、販売に至るまでの独自の漢方バリューチェーンを構築してきた強みがあります。

この20年間で、医療用漢方製剤の販売数量は約3倍に伸長しています。ただし薬価引き下げの影響を受け、販売数量の伸長率=売上伸長率にはなっていません。収益性を高めるには、堅調な売上伸長に対応した生産能力を増強しながら生産性向上などによる原価のコントロールが重要と捉えています。

国内の漢方事業は、原料生薬の多くを中国から調達しているため、為替の影響を受けやすい収益構造になっています。現状は為替予約でヘッジしているものの、抜本的な対策にはなり得ません。長期的には中国事業の売上高を拡大し、国内事業と同程度の規模にすることが、事業構造としてヘッジにもつながると考えています。なお、2023年4月の薬価改定では、急激な原材料費の高騰により不採算に陥っている品目について「不採算品再算定」の適用を受け、当社製品では40処方の薬価が見直された結果、改定率は129処方の加重平均でプラス2.3%となりました。

医療用漢方製剤129処方 販売数量推移

成長機会を確実に捉えるために、スピード感を持って投資を実行していく

これまで国内の医療用漢方事業は年率2~3%で伸長してきましたが、今、新たな成長局面を迎えています。2022~2024年度までの第1期中期経営計画では、年平均の成長率を5%と計画しており、この想定の下で生産設備の増強に努めています。天津で立ち上げる新工場は、1期から3期工事までを計画しており、最終的には国内事業向けの漢方エキス粉末の生産能力を3割以上アップさせます。造粒・包装などの工程の増設を含めると、第1期中期経営計画の3年間は投資規模が大きくなりますが、成長機会を確実に捉えるために、スピード感を持って実行していきます。

一方、長期経営ビジョンでは、前述しましたとおり中国事業の売上を国内事業と同規模まで成長させ、海外売上高比率50%以上を目指しています。生薬プラットフォームでは業界の発展をリードする生薬・飲片企業として中国トップシェアの水準を目指しており、「薬食同源」製品の強化も図っていきます。第1期中期経営計画においては、CAGR30%以上の成長を計画しており、外部販売比率50%超を達成します。製剤プラットフォームでは中成薬企業として業界TOP10に名を連ねるようブランドの確立を目指し、ツムラの品質、エビデンス構築、製造技術のノウハウを活かした事業展開を図っていきます。第一期中期経営計画においては、古典処方をターゲットとし、中成薬事業への参入を図り、基盤構築を進めます。

ツムラの本質的な価値を、ステークホルダーの皆さまへ正しく伝える

中長期的な課題は、CCC※の改善によるキャッシュフロー経営の強化です。この課題に取り組むために、一つの例ですが、グループ全体で戦略的かつ適正な生薬在庫管理を可能にするシステム構築に着手しています。

また、AI・ロボット等の活用による生産性向上は、製造工程はもちろんのこと、生薬の自動選別をはじめ、様々な業務領域において漢方バリューチェーンの改革を進めています。

キャッシュ・アロケーションについては、原資となる営業キャッシュフローの創出に加えて、有利子負債による調達を計画しています。生産能力増強やシステム構築のための成長投資は、長期経営ビジョンの実現に不可欠ですが、株主還元とのバランスについては、今後の事業展開のステージにおいて課題があると認識しており、取締役会において真摯に議論しています。

また、当社のPBR1倍割れという現状は、投資家の皆様からの期待に十分に応えられていない状況でもあり、忸怩たる想いです。その一方で、これまで不透明さがあった国内事業における薬価の問題、中国事業の戦略など、従前とは異なる局面もあり、これまで十分にお伝え出来なかったプレ財務資本の価値などについても、ご理解頂けるように取り組んでいきます。

私の役割は、成長戦略に基づいた計画を定め、中長期的な企業価値向上に向けた「道筋」をつくることだと考えています。そしてもう一つは、ツムラの本質的な価値を、積極的なIR活動等を通してステークホルダーの皆様へ正しく伝えることだと認識しています。これからも、ツムラグループの成長の確からしさをしっかりと示していきます。

  • キャッシュ・コンバージョン・サイクル。仕入債務を支払ってから、売上債権を回収するまでの所要日数を示す財務指標

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