Co-COOメッセージ

デジタルや最先端技術で
個別機能の強化と
全体最適化を図り、
天然物を軸とする
漢方バリューチェーンに
磨きをかけていきます

取締役Co-COO
(共同最高執行責任者)

杉井 圭

AI搭載の新システム稼働により、生薬サプライチェーンの全体最適を実現

ツムラグループの事業は、サプライチェーンの上流が天然物由来の生薬であることが最大の特徴かつ強みでもあるとともに、リスクにもなり得ます。なぜなら天然物ゆえに、含有成分のばらつきや外来性不純物など、栽培や加工過程で細心の注意が必要になるからです。当社グループは、こうしたリスクを軽減できる多くの対策をノウハウとして蓄積しており、この点が他社には真似できない優位性となっています。生産団体との契約方法や独自の安全性基準、長年の研究成果を反映させた栽培・加工技術、天候不順等を想定した産地・産出国の複線化など固有のノウハウが、競争力の源泉となる人的資本、社会関係資本などとして蓄積されています。

しかしながら近年は、将来予測の難しい事業環境に突入しており、時代に適した漢方バリューチェーンの強靭化が必須となっています。中でも喫緊のテーマは、冗長性を備えた全体最適の推進です。漢方製剤の製造プロセスでは、医薬品として「臨床上の再現性」を実現するために、含有成分のばらつきを一定の範囲内に収め、均質性を確保した製品に仕上げる必要があります。従来は、長年の経験を有する従業員が最適解を導き出し、原料生薬の配合計画を担っていました。しかし、人の思考能力には自ずと限界があり、2~4週間先の生産分までの計画立案にとどまっていました。また、通常のオペレーションでは、原料生薬を保管している石岡センター内の在庫状況を中心に判断していたため、局所的な最適化となっていました。

2023年から導入した「生薬調合指示システム」によって、中国で保管する在庫を含む、グループ全体での生薬在庫の成分データを見渡して、最も効率的な配合の組み合わせを、12カ月先の生産分まで自働で立案できるようになりました。このシステムはAIを搭載しており、すぐに使わない在庫の滞留を抑止し、優先度の高い生薬の計画的な選別加工を指示するなど、生産性を高める顕著な導入効果が期待できます。さらに、在庫の適正化や業務効率の向上にとどまらず、栽培工程まで遡って、不足がちと判断された生薬の播種をいち早く指示することも可能になります。日ごと必要な生産・保管能力が明らかになり、上流工程のリスク対応力の向上を図ることができます。私は、このシステムを用いた一連の取り組みを、業務プロセスの全体最適を実現するバリューチェーン改革と位置づけています。将来を見据えた大きな一歩でもあり、当社グループの新たなノウハウになると捉えています。

天然物由来の医薬品に関わるノウハウをさらに高め、中国事業にも発揮

今後の展望としては、研究開発・生薬栽培・製剤・販売の各プロセスで強みを磨き、それぞれが創出する付加価値が足し合わされることで、天然物を軸とするバリューチェーンを一層強化していきます。特に、中国で参入準備を進めている中成薬事業は、日本国内で展開する漢方製剤事業との共通項が多く、バリューチェーンの価値を発揮しやすくなるため、競争力の確立につながるものと考えます。だからこそ、現地企業との提携においては、中国事業における私たちのコアコンピタンスが何なのかを認識した上で、相互連携を深める必要があります。また、天然物由来の医薬品の価値をグローバル市場に広げていくためには、各国の規制・制度への適応も不可欠です。米国における治験など、医薬品を審査する側にとっても例のない新たな一歩であることを踏まえ、相互理解を深めていくことで、少しずつ前進できると思っています。

また、ツムラグループは、「労働生産性2倍」を目指しています。これはコストダウンだけではなく、労働人口の減少を見据えた、安定供給のための対策でもあります。対策の必要性の社内認識は進んでいますが、次期中期経営計画では、あるべき未来の働き方から逆算し、目標達成までの行動計画を策定する構想を持っています。

一方、サステナビリティ課題への取り組みについては、業界に先駆けてTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に対応した分析を進めるなど、活動を促進しています。大量に排出される生薬残渣は、堆肥化や燃料化など資源循環に取り組んでいますが、より一層有効活用する方法や、湿気を嫌う漢方製剤の特性に合致した環境負荷の少ない包装資材の導入など協力会社とともに検討を進めながら、異業種との共同開発などによって、解決策を講じていく考えです。2031年に温室効果ガス排出量を50%削減する目標についても、低炭素・低コストのエネルギーを安定的に確保する方策を検討しています。私たちのビジネスは、企業価値とともに社会との共通価値を生み出す力を併せ持っています。自然環境との親和性があり、総合的に持続可能性の高い事業モデルだと自負しています。だからこそ、新技術の開発や各組織の生産性向上によって、真にサステナブルな企業になることを目指しています。

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