天年

すべての人に言えるのは、生まれついての寿命は多くの場合、長いものだ。
寿命が短く生まれる人は稀(まれ)である。
生まれつき元気で、身体頑強な人でも、養生の術を心がけずに、朝夕に無理をして元気を損ない、日夜に精力を減らすような生活をすれば、生まれつき持っている寿命も保てずに早死にする人は、世間に多いものだ。

益軒さんは、多くの人は長命を与えられて生れてくるので、養生に努めて天寿を全うしてほしいと教えている。


【原文】
「凡(すべて)の人、生れ付きたる天年はおほくは長し。天年をみじかく生れ付きたる人はまれなり。生れ付きて元気さかんにして、身つよき人も、養生の術をしらず、朝夕元気をそこなひ、日夜精力をへらせば、生れ付きたる 其(その)年をたもたずして、早世(そうせい)する人、世に多し。 」

(巻第 1 ・総論・上)