小雪 初候
虹蔵れて見えず(にじかくれてみえず)
11月22日〜11月26日頃

「虹蔵不見(にじかくれてみえず)は、清明の末候「虹始見(にじはじめてあらわる)」(4月15日頃)と対になっている一候です。
昔、虹は蛇が空に登って龍になった姿だと考えられていました。龍は雨を降らせ、大地を潤す豊穣の神であり、干ばつのときには龍神を祀って雨乞いの祈祷が行われてきました。龍神は稲作や農耕と深く関わっています。
田んぼを中心とした農耕民族である日本人にとって、空にかかる虹を龍神、水の神として見たのは当然かもしれません。実際に虹は空中に浮かぶ水滴に太陽が当たることで生まれる光のプリズムであり、火と水の神遊びです。
虹は春の田植えの準備が始まる頃に見えるようになり、田んぼの片づけがすっかり終わる頃、見えなくなります。
そのため春の「龍天に登る」と対になる言葉として、「龍淵に眠る」という言葉があります。冬の龍は水の底に潜んで、静かに眠りにつきます。「にじ」の読みは、池や沼の主、「ぬじ」が語源という説もあります。
11月23日は勤労感謝の日として祝日となっていますが、本来は新嘗祭(にいなめさい)の日です。現在も変わらず、天皇が新穀を神に捧げて食す、もっとも古く重要な宮中祭祀です。私たちもお米を作って下さった方々に感謝し、私たちのいのちを支える食べものに感謝する日として慎ましく、清らかな食卓をととのえ、それぞれの家庭で静かに祝う。そんな習慣が復活することを願っています。