立秋 初候
涼風至る(りょうふういたる)
8月7日〜8月11日頃

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞ驚かれぬる」
『古今和歌集』に収められた藤原敏行の歌です。葉が黄ばんで落ちる春は「竹の秋」、青々と繁る秋は「竹の春」といいます。春に生まれた筍は夏の間にすくすくと育ち、秋になるとサワサワと涼しげな音を出して風に揺れます。
立秋は暑さのピークで、夏の峠越え。峠を越えた瞬間に、小さな秋が始まります。日中の暑さはますます増していきますが、朝や夕方にふと涼しさを感じる瞬間があり、かすかに秋の気配が漂い始めます。少しもの悲しいような、名残り惜しいような。今年もまた無事にすぎてゆくという安堵とともに、どこか勢いをなくしていく夏が愛おしく感じられる頃でもあります。
もうひとつ、秋の始まりがはっきりとわかるのは虫の音です。昼間、盛んに鳴いている蝉の声と入れ替わるように、夜の虫の音が日毎に大きく聞こえてきます。朝夕の涼しさと虫の音をめやすに、秋の始まりを感じてみてください。