寒露 次候

菊花開(きくのはなひらく)

10月14日〜10月18日頃

日本の野山にはさまざまな野菊が咲き揃い、秋の景色を彩ります。
栽培品種の大輪の菊も見事ですが、野菊を代表するヨメナ(嫁菜)をはじめ、ノコンギク(野紺菊)、ユウガギク(柚香菊)、シラヤマギク(白山菊)など、各地の在来種が放つ素朴な美しさもまた格別です。
朝夕の冷え込みが増す季節、澄んだ空気の下で咲く菊はひときわ凛として映ります。

菊は古くから不老長寿を願う花とされ、旧暦九月九日の重陽の節句は「菊の節供」と呼ばれました。
菊の花を浮かべた酒を酌み交わし、菊の露に長寿を託した句も数多く残されています。

重陽の日には、粟飯や栗ご飯を食べる風習があり、「粟節供」ともいいます。
食用菊は酢の物やお吸い物にも用いられ、ビタミンも豊富で、観賞用としてだけでなく、養生の知恵として暮らしに生かされてきました。

秋晴れの心地よい日を「菊日和」といい、重陽の源流には中国の風習「登高(とうこう)」があります。
香りのよい菊を身に挿し、見晴らしのよい高台に登って景色を眺める。
今でいうハイキングや山登りです。
広々とした景色を見渡し、深呼吸する。
そんな行為もまた「命延ぶ」ことにつながることでしょう。

菊の花が開く頃、秋はいよいよ深まり、行楽日和の美しい季節を迎えます。

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