大寒 末候

鶏始めて乳す(にわとりはじめてにゅうす)

1月30日〜2月2日頃

七十二侯、最後の一侯は「雞始乳(にわとりはじめてとやにつく)」です。「とや」は鳥を飼っている小屋のこと。「とやにつく」は鶏が小屋に入って卵をあたため始めることを意味しています。

鶏は自然な状態であれば、冬の間、ほとんど卵を産まなくなりますが、その鶏がふたたび卵を抱いている姿を見ることは昔の人々にとって、長い冬が終わりを告げる印であり、大きな喜びでもありました。

数は少ないですが、寒中に産み落とされる卵もあり、その貴重な卵を寒卵(かんたまご)といいます。日数をかけてゆっくり育つため、一年の中でもっとも栄養価が高く、味も濃厚になります。

かつて鶏は食用にされることはほとんどなく、名前の通り、観賞用として庭に放たれ、時を告げる鳥として神聖視されてきました。とくに元旦の夜明けの鳴き声は年明けの重要な印とされていたため、元旦を「鶏旦(けいたん)」と呼ぶこともあります。

「東天紅」は本来、夜明けの空が赤く染まる頃に鳴く鶏の声を表す語でしたが、長鳴鳥(ながなきどり)として知られる鶏の品種名にもなっています。姿も大変美しく、その長鳴きは10~15秒ともいわれ、天然記念物に指定されています。

季節もいよいよ冬の夜明け、また新しい春が始まります。

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