COOメッセージ

医療用漢方事業を持続的な成長軌道へ戻し、
資本効率を徹底して、グループ全体の価値創造を加速します

代表取締役COO
(最高執行責任者)
医療用医薬品カンパニープレジデント

杉井 圭

「+100万箱ペース」を目標に、医療用漢方事業を成長軌道に戻す

ツムラグループは、経営の前提が着実に変わりつつある新たなフェーズに入っています。資源価格の高騰や円安、労働力不足の影響はここ数年で徐々に強まり、原料・資材・エネルギー・人件費・設備投資などのコストは中長期的に上昇傾向にあります。薬価制度に基づき価格が定められている医療用漢方事業では、従来の取り組みだけでは将来的な収益確保が難しくなることが見込まれます。こうした構造変化に備え、稼ぐ力を持続的に維持するため、事業構造と組織の見直しが重要です。私のミッションは、成長のスピードと持続性を高めることと、生産性の向上を両立させる旗振り役になることだと自覚しています。

まず2026年度から、事業ごとの収益責任を明確化して自律的な成長を促すため、社内カンパニー制を導入しました。

権限委譲によって、意思決定を迅速化するという狙いも込めています。最優先事項は、連結売上高の約8割を占める医療用医薬品カンパニーを成長軌道に戻すことです。そのために私は、COOと兼任で医療用医薬品カンパニープレジデントに就任しました。2026年度の下期までには、中期経営計画の目標KPIである「年間+100万箱ペース」の成長へ引き上げます。そして2027年度は、この水準をさらに上回る数量伸長を目指していきます。

急変する経営環境に対してアジャイルに適応し、持続的な成長を実現するために、短期と中期、長期の視点に立った諸施策を一貫して進めていきます。

カンパニー制の導入

コストアップを上回る売上伸長による利益の確保が、短期の優先事項

短期の視点で最も重要なのは、医療用医薬品カンパニーを成長軌道に戻す、つまり医療用漢方製剤の売上高の伸びをコストアップ以上に確保し、収益力の向上を図ることです。

2025年度の売上高の伸長が停滞した主な理由は、長期化した限定出荷による影響に加え、コロナ禍に情報提供活動が減少していた大病院に活動リソースを集中させたため、売上構成比率の高い診療所への活動が手薄になったことにあります。一方、大病院での取り組みは徐々に成果として現れ始めています。成長の原動力となるのは、「10処方以上および診療領域基本処方を処方する医師の拡大」や、「重点3領域を中心とした情報提供」に的を絞った、継続的な市場浸透活動です。2026年度は、「六君子湯」が機能性消化管障害の国際的な診断基準「ROME V」(コラム参照)に掲載されたことで、需要の拡大が見込めます。さらに睡眠障害の標榜解禁および臨床研究の成果によって、「抑肝散」など複数の処方を普及させる機会が広がっています。

また、営業活動の質と効率を高めるため、AIを活用したデジタル基盤の整備も進めています。蓄積したデータを分析し、MRが優先的に取り組むべき情報提供先や提供内容を提示することで、限られたリソースを効果的に活用していきます。

これらの施策の着実な遂行とデジタル基盤の活用を通じて、売上伸長率の回復と利益確保の確度を高めていきます。

医療用漢方製剤129処方の実売数量計画

「ROME V」への掲載の意義

「六君子湯」のROME Vへの掲載は、ツムラが長年取り組んできたエビデンス創出活動の成果が国際的に評価された事例です。漢方製剤が科学的根拠に基づく治療選択肢として位置づけられることで、医療現場における漢方の理解と信頼の向上につながる重要な成果と捉えています。

睡眠障害への漢方治療の普及拡大

2026年6月の医療法施行令の改正により、医療機関において「睡眠障害」に関する標榜ができるようになり、睡眠の悩みを抱える患者様が受診先を選びやすい環境が整いました。漢方製剤は、幅広い睡眠の悩みや心身の不調全体に働きかける点に特徴があります。睡眠そのものだけではなく、背景にある心身の不調に着目し、日常生活との両立を図りやすい選択肢として期待されています。制度面での後押しと医療ニーズの高まりを背景に、漢方は睡眠医療における有力な選択肢として存在感を高めていくと考えられます。

ROICを全社の重要指標に据えて、資本効率を改善していく

カンパニー制の導入を機に、ROICの目標値を各カンパニープレジデントのKGIとする経営体制へと移行しました。

ROICをKGIに設定した狙いは、中長期的な成長には売上伸長だけでなく、資本効率の改善を並行して進めることが不可欠だと考えているためです。

従来もROICは管理指標として用いていましたが、直接的に改善を実感できる部門が限られていたため、従業員が「自分ごと化」しにくく、改善活動が成果につながりにくいという課題がありました。そこで今回、ROICに紐づくKPIを部門単位で明確に割り当て、「どのKPIを改善すればROICがどの程度向上するのか」を可視化する管理基盤の整備に着手しています。

この基盤を活用しながら、P/L中心の業績管理から、投下資本を含む全体最適の視点に立った、確度の高い経営管理へとマネジメントを進化させていきます。とくにヘルスケア事業と中国事業では、成熟領域と新規領域を明確に切り分けて、成熟領域の事業はROICを用いて厳格に管理していきます。一方で、新規領域は成長を優先し、投資の回収を中長期で捉えるマネジメントを実行します。

収益性の改善と、それに続く成長モードへの移行を果たすため、私自身が深く関与しながら、ROICを現場の改善行動を後押しする共通言語として機能させていきます。

生産性向上を軸に、業務の変革と組織基盤の強化を図る

中期の時間軸では、営業利益率の向上がテーマになります。そのために、製造・営業・研究を含むバリューチェーン全体の生産性を高めていかねばなりません。足元のコスト上昇は短期間では収束しないという前提で、利益を確保し成長軌道を持続するには、生産性の向上策が最も確実な推進力になるからです。そこでツムラグループは、デジタル技術やロボティクスを活用した業務の変革と、人財の能力向上という二つのアプローチで、生産性を高めようとしています。

例えば、製造の領域では、新たな技術を取り入れた新工場の建設に加え、レイアウトや設備条件に制約のある既存工場でも、ロボット技術やデジタル技術を導入し、省投資型で自働化、省人化を進め、生産性を高めていきます。また設備投資計画を精査し、既存設備の延命や段階的な投資に切り替えることで、総投資額の抑制・平準化とROIC改善の両立を図ります。

営業の領域では、「ツムラ漢方マイスター制度」のもとで認定者を増やし、漢方医学に関する深い専門知識を持つMRを育成するとともに、AIを活用した活動効率の改善を進めています。また、オンライン面談や未面談医師への情報提供と新たなコミュニケーション機会の創出を可能とするツムラ漢方オンラインMRの活用で、ターゲット施設への情報提供機会を拡大し、限られた人的リソースをより付加価値の高い活動へ振り向け、営業生産性の向上と市場浸透の加速を両立していきます。

研究開発活動では、医薬営業本部のMRがいち早く察知した臨床現場のニーズを研究テーマに採り込み、「現場起点のR&D」への転換を図ります。この転換により、開発スピードと研究成果の質を高めていきます。

さらに、人財の能力向上としては、経営戦略に基づき策定した「人財ポートフォリオ」に沿った人財育成策を軸に、多様な人財の活躍促進や適所適財の要員配置を進めています。これらは、組織基盤の強化と生産性向上を同時に実現する施策です。中期的な見地に立ってこれらを推し進め、収益性と資本効率を高め、ROIC向上につなげていきます。

グループの全体最適化と多様な人財の力で、長期経営ビジョンを実現

長期的な時間軸で、価値創造の循環サイクルを拡大していくには、グループの大黒柱である医療用医薬品カンパニーの着実な成長が前提になります。この中核事業が軸になり、グループ全体の成長力が高まる好循環を生み出していく考えです。つまり医療用医薬品カンパニーは、ツムラのゆるぎない屋台骨であり、医療用漢方事業が安定的な収益を創出することで、グループ全体の成長を支える「価値創造の基盤」という役割を担っています。

そしてCOOを務める私のミッションは、当社グループの全体最適を実現することにあります。経営判断と業務執行を担う上で全体最適を徹底し、経営資源の重複や非効率を排除しながら、限りある資本と人財を成長領域に集中させることで、長期的な企業価値の向上につなげていきます。
まずは私自身がグループのハブとなって、営業とR&Dの連携強化やカンパニー間の連携を促し、成長領域の基盤構築と、品質管理・供給体制の最適化を実現します。

医療用医薬品カンパニーでは、2026年度のカンパニー制導入を契機に、「スピードとチャレンジ」を重視した事業運営へと転換しました。変化の激しい環境に迅速に対応するため、適切なリスク管理のもと、試行錯誤を前提としながら、挑戦を促す組織風土の醸成にも取り組んでいます。意思決定の迅速化に向けては、月2回のカンパニー経営会議で集中的に決裁を行う体制とし、実行までのリードタイムを大幅に短縮しました。また、同会議ではグループ経営戦略会議の内容も共有し、現場に近いマネジメント層が全社の動きを把握できるようにしています。医療用医薬品カンパニーを安定的に成長させ、ヘルスケア・中国事業の新たな挑戦をサポートしながら、グループ全体の価値創造力を高めていきます。

なお、私は2026年4月にツムラアカデミーの学長に就任しており、次代を担う経営リーダーの育成体制強化も、重要なミッションとなりました。すでに当社の次世代経営人財養成の仕組みである「T-Next」を通じて、一定の育成は進んでいるものの、年齢・性別・専門領域の偏りがあり、多様性の確保が課題になっています。今後は、個性や創造性を伸ばす育成体系へと進化させ、多様な視点とチャレンジ精神を持つ経営人財の層を厚くしていきます。

何よりもまず、部門間の柔軟な連携と、多様な人財の力を、事業の成長に結びつけ、急激な環境変化にも揺らぐことのない収益基盤を確立します。そして長期経営ビジョンの実現を、より確かなものにしていきます。

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