小満 末候

麦秋至る(ばくしゅういたる)

5月31日〜6月4日頃

麦が収穫期を迎えます。麦畑が黄金色に染まる風景が広がることから「麦の秋」「麦秋」は初夏の季語になっています。

麦は稲とは逆で冬には芽を出し、寒さの中で地を這うように緑の葉を見せていますが、暖かくなる晩春から初夏にかけて、一気に背丈を伸ばします。緑色の穂があっという間に色づいてきて、ざわざわと風に揺れるので麦嵐(むぎあらし)、麦の波などの季語もあります。

麦の穂が実る頃に雨が降ると穂が腐ったり、カビを発生させたりすることがあり、収穫に大きく影響するため「麦食らい」といいます。「麦雨(ばくう)」も美しい表現ではありますが、農家にとっては迷惑な雨でした。

江戸時代、煎茶は高価なものであったため、麦茶は庶民が手軽に飲める夏の飲み物の定番でした。現代は冷やして飲むことが多いですが、昔は温かいお茶として飲まれていたので「麦湯」と呼ばれ、屋台も流行したそうです。

また当時は参勤交代の武士に身体の不調を訴える人が続出し、故郷へ戻ると自然に治ることから「江戸患い」と呼ばれるようになりました。人々が日常的に白米を食べるようになると「江戸患い」は町人の間にも広がりました。

田舎では麦や雑穀を食べるのが当たり前で白米は夢のような食べものでしたが、麦飯や蕎麦を食べると病気が治ることも次第に知られるようになっていました。そのため武家では脚気が出やすい夏になると、使用人たちに麦飯をふるまう風習があったそうです。

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