小満 初候
蚕起きて桑を食う(かいこおきてくわをくう)
5月20日〜5月25日頃

江戸時代、養蚕は全国で行われ、大きな富をもたらす重要な産業でした。大正から昭和初期にかけて、品質のよい「ジャパンシルク」は輸出の主力製品として高値で取引され、世界市場の6割を占めていた時代もあります。
蚕は1齢から4齢までは脱皮と休眠を繰り返しますが、5齢となってからの1週間は昼夜を問わず桑の葉を食べ続けてから繭を作ります。そのため1日に何度も新しい葉を与える必要があり、この時期の農家は田植えと蚕の世話が重なって、猫の手も借りたいほどの忙しさでした。
猫は蚕を鼠から守るために養蚕農家で飼われていたことから「猫の手も借りたい」という言葉が生まれ、富をもたらす縁起物として商売繁盛の「招き猫」の置物になり、今日に伝わっています。卯月(現在の5月頃)は別名「木の葉採月(このはとりづき)」で、桑の葉を採る月という意味です。
月更けて桑に音ある蚕かな 召波
シュクシュクと蚕の食む音が止まない月の夜。七十二侯の「蚕起桑食」はそんな光景をさしています。蚕が桑の葉を食べる音を「蚕時雨(こしぐれ)」といいます。
サーッと小雨が降っているような、心地よい音です。そんな静かな雨が降ったら、新緑に滴り落ちる青時雨(あおしぐれ)を眺めつつ、蚕が葉を食べる音はこんな音かな、と想像してみてください。