清明 次候
鴻雁北へかえる(がんきたへかえる)
4月9日〜4月13日頃

いかでわれ常世の花のさかり見て ことわり知らむかへる雁がね 西行
春霞立つを見捨ててゆく雁は 花なき里に住みやならへる 古今和歌集
百花繚乱の晩春を迎える頃、渡り鳥たちは北へ向けて旅立っていきます。こんなに美しい花々が咲く季節に、鳥たちはなぜ花を見捨てて北へ帰るのか、と昔から多くの歌人が歌を詠んできました。
渡り鳥たちは敵に見つからないように雲にまぎれるように帰っていくことから、この季節の曇り空を「鳥曇り」といいます。姿は見えなくても雲の中から声だけが聞こえることもあり、別れを告げるかのような哀愁のある声が人々の心をとらえてきました。別れを惜しみつつ見上げる春の曇り空です。
水辺をにぎやかに彩っていた水鳥たちの姿が次第に消えていき、最後に残るのはカルガモです。カルガモはカモ類の中で唯一の留鳥で、日本で子育てをします。
「帰雁」「鴨帰る」などがこの季節の季語ですが、「軽鳬(かる)の子」という季語もあります。親のあとを必死で追いかける愛らしいカルガモのヒナたちの姿に思わず笑みがこぼれます。