夏至 末候
半夏生ず(はんげしょうず)
7月1日〜7月6日頃

田んぼの畔に生えるカラスビシャクは古くから半夏(はんげ)と呼ばれ、漢方の生薬としても使われてきたサトイモ科テンナンショウ属の植物です。七十二候の「半夏生」はこの半夏(はんげ)が生ずるという意味で、農家では遅くともこの日までに田植えを終える目安としていました。
そのため日本独自の雑節のひとつにもなっています。「天から毒気が降る」「井戸に蓋をする」「野菜を採らない」などの言い伝えは農作業を休み、身体を労わるための戒めで、蛸やうどんを食べる風習もあります。
カラスビシャクは田んぼの畦や畑に何本かまとまって、にょきにょきと伸びてきます。細い緑色の仏炎苞(ぶつえんほう)が鶴の首のように美しい曲線を描くので、草地の中でもよく目立ちます。名前は人間が使うには小さすぎるので「カラスの柄杓(ひしゃく)」とされたものですが、ほかに狐の蝋燭(きつねのろうそく)、蛇の枕(へびのまくら)などの別名があります。また農家の女性たちがこの根を掘って集めれば、漢方の材料として小遣い稼ぎになったので、ヘソクリとも呼ばれていました。
梅雨の末期は大雨になることもあるため、この頃に降る雨を半夏雨(はんげあめ)といいます。農事暦は元々、こうした身の回りの自然がつねに連動し、精妙につながり合っている様子を観察することから生まれています。
またハンゲショウというドクダミ科の植物もこの時期に白い花を咲かせます。葉の上部が真っ白に変わることから半化粧、片白草(かたしろぐさ)とも呼ばれています。これは虫を呼び寄せるためで、花が終わると葉も緑に戻ります。楚々とした風情があり、夏の茶花にもよく使われる草花です。