小暑 次候

蓮始めて開く(はすはじめてひらく)

7月12日〜7月16日頃

暑い夏に泥の中からすっくりと立ち上がり、透き通るような美しい花を咲かせる蓮。青々とした丸い葉にころがる美しい玉の露。蓮は慈悲の象徴、極楽浄土に咲く花とされ、仏像の台座の多くは蓮華座(れんげざ)です。

中国では蓮のことを「荷」といい、日本でも蓮の葉のことを「荷葉(かよう)」というようになりました。「荷葉」は蓮の葉の漢方名としても使われていますが、平安時代は夏を代表する薫物(たきもの)の名で、夏は蓮の香りを模したお香を纏うことになっていました。

睡蓮は水に浮かぶだけですが、蓮は葉も花も、水面から立ち上がってゆらゆらと風に揺れます。その風が「荷風」です。蓮の花にはほのかに甘い香りがあり、蓮池の周りを歩くと、ふんわりと遠くまで漂っています。

永井荷風が16歳のときにお世話になった看護婦さんが「お蓮さん」という名前でした。荷風というペンネームは遠く離れていても一生忘れません、という恋心からつけられたものだそうです。

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