大暑 初候
桐始めて花を結ぶ(きりはじめてはなをむすぶ)
7月22日〜7月26日頃

桐は初夏の5月頃、うす紫のベル型の花を咲かせます。桐は成長が早く、十数メートルの大木になる木で、花はその梢に咲くので地上からは見えにくいことが多いのですが、たわわに咲いて、甘い香りを放ちます。
その花が咲き終わり、7月の大暑を迎える頃、ラクダ色の丸い花芽が目立つようになってきます。この花芽はこのまま冬越しするために丈夫な毛皮にしっかり包まれているので、まん丸い実のように見えています。
これが紋章化されたのが「五三の桐」で、中央が五つで、左右が三つ。かつては菊の御紋と共に皇室が用いるもっとも高貴な紋章でした。桐の木には鳳凰が棲むとされ、神聖視されてきました。やがて武将に許されていき、足利尊氏、織田信長、豊臣秀吉などが桐紋を使用してきた歴史があります。
そして「五七の桐」は中央が七つ、左右が五つで、明治以降から現在まで日本政府の紋章です。500円玉のデザインはかなり写実的な桐ですが、よく見ると花芽ともに咲いている花も描かれています。
桐の本当の実は花芽よりずっと大きな緑色のラグビーボールのような実で、いくつも固まってついています。そして冬になると尖った先端が、まるでカラスのくちばしのようにパカっと割れます。花が咲く時期になっても枝に残っていることが多いので、桐の木を見つけたら確かめてみてください。
つまり桐は花が咲いた後、神楽鈴のようなラクダ色の丸い花芽と、ラグビーボウルのような実が両方ついた状態がずっと続いているということになります。七十二候の「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)は、このラクダ色の丸い花芽の方をさしています。
そして「桐一葉」といえば、初秋の季語。大きな桐の葉がパサっと一枚、落ちるのをみて秋の訪れを知ることで、「一葉落ちて天下の秋を知る」は自然界の小さな動きをみて全体を見たり、先を見通したりすることとされています。