処暑 末候
禾乃登(こくものすなわちみのる)
9月3日〜9月7日頃

「禾乃登(こくものすなわちみのる)」は稲が実り始める頃という意味です。「禾」は「のぎ」と読み、本来は穂先のぎざぎざした毛を意味する言葉ですが、稲、粟、稗などイネ科の穀物全般を表します。
この時期は引き続き、台風の被害が心配されます。昔の人は台風のことを「野分(のわき)」と呼び、強風が草木を薙ぎ倒す様子を、激しい狼藉(ろうぜき)になぞられました。
田んぼの稲も、台風が過ぎ去ると風の跡をそのまま残すかのように、ぐるぐると渦を巻いて倒れます。この現象を「倒伏(とうふく)」といい、収穫作業が難しくなり、お米の品質を落とす原因となります。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉は、こうした試練を経て無事に収穫を迎えられたことへの感謝の念が、人々の祈りの姿と重なって生まれたものなのでしょう。
旧暦八月一日の八朔(はっさく)は、毎年9月初旬頃にあたり、「田の実の節供」とも呼ばれます。「田の実」は「頼み」に通じ、豊作祈願の意味合いをもつ予祝(よしゅく)の行事でした。
また、八朔そのものがこの日に吹く強風を指すこともあります。富山県の「風の盆」も9月1日から3日に行われ、風を鎮め、五穀豊穣を祈る祭りとして今に伝えられています。
実りの秋を前に、風を鎮め、稔りを祈る心は、今も昔も変わらず受け継がれています。台風の翌日は清々しい晴天を、人々は「野分晴れ」と呼び、希望の景色として眺めてきました。