大雪 次候
熊蟄穴(くまあなにこもる)
12月11日〜12月15日頃
「熊蟄穴」は大雪の次候です。雪が積もり始めた山を遠く眺めながら、熊が眠りにつく姿を想像してきた先人たちの心は、「熊穴に入る」という冬の季語となって息づいています。
七十二候は「桜始開(さくらはじめてひらく)」「玄鳥至(つばめきたる)」など、実際に見ることができるものがほとんどですが、熊が眠りにつくところを人間が目にすることは決してありません。熊だけでなく、リスやヤマネなど、山に棲む多くの生きものたちが眠りにつくことを想像させる一候です。
母熊は冬眠中の一月ごろに出産し、何も食べずに乳を与えながら、子熊を育てます。すっかり痩せ細って穴から出てくるその姿は「熊穴を出づ」という春の季語になっています。
熊の好物は、春の山菜や新芽、初夏のベリー類、秋のドングリやクルミなど、季節によって変わります。長い冬眠の前に十分に食べる必要がある熊が、お腹が満たされずに里山をうろつく姿はせつないものです。近年では、熊が暮らせる豊かな森を取り戻すため、ドングリやクルミの木を植える取り組みも少しずつ広まっています。
さまざまな生きものたちが眠る冬の山は、閉ざされた厳しさの中に、命をそっと包み守る優しさを宿しています。古来、人は深山(みやま)を神々の坐(ざ)す場として仰ぎ、畏敬の念を抱いてきました。
熊が眠る姿に思いを馳せるとき、懐深い自然の営みに、静かな祈りの心が湧いてきます。

