秋分 末候
水始枯(みずはじめてかるる)
10月3日〜10月7日頃

秋分の末候は「水始涸(みずはじめてかるる)」。
稲作が盛んな日本では、水田の水を抜いて稲刈りに備える頃と解釈されていますが、『礼記月令(らいきがつりょう)』や『淮南子(えなんじ)』には「陰気ますます強くなり水涸る」とあり、乾いて枯色になった秋の情景を表しています。
湿気の多かった夏が終わり、秋らしい乾いた空気に「もののあはれ」が漂います。
青々と茂っていた草木も潤いを失い、千種、八千草と称えられる秋草はさまざまな形で種を残し、ゆっくりと枯れてゆきます。
水そのものが涸れるわけではありませんが、水辺は黄や赤が入り混じる枯れ色に包まれ、澄んだ美しさをたたえています。
「水澄む」「水の秋」といった季語もまた、この時季の水の清冽さを讃えています。
稲は田の水を切って乾燥させていく登熟の時期を経て実りを深め、昼夜の寒暖差が大きくなるほどに味わいを増していきます。
自然のめぐりは見事です。
刈り取りを終えた田は鳥たちの格好の餌場となり、蛙も土中で眠りにつき、やがて静かな冬の景色へと移り変わっていきます。