啓蟄 次候
桃始めて笑う(ももはじめてわらう)
3月10日〜3月14日頃

桃の花が咲き始める頃
春の陽気に誘われて咲き出す桃の花には、天真爛漫な子供の笑顔のような愛らしさがあります。
桃は太古の時代から気立てがよく、愛される女の子の象徴とされていました。中国では本格的な春を迎える旧暦三月、桃の咲く頃に結婚式を挙げる風習がありました。嫁ぐ娘の幸せな門出を祝う「花嫁の歌」が中国最古の詩経にあります。
桃の夭夭(ようよう)たる 灼灼(しゃくしゃく)たり其の華
之の子于(ここ)に帰(とつ)ぐ 其の室家(しっか)に宜しからん
「夭夭」とは幼くみずみずしいこと、顔の表情がやわらかく、のびのびしている様子を意味します。「灼灼」は花が明るく照り映えることで、桃のようなこの子が嫁げば、その家はきっと栄えるだろうと詠まれています。
ひな祭りは女の子の身代わりに人形を置き、水に流して穢れを祓った上巳(じょうし)の節供がルーツとしてありますが、女子の成長や幸せを願う心は同じです。お雛様の柔和な表情は見ているだけで幸せがやってくるかのようです。
「花笑み(はなえみ)」は人のやわらかい微笑み、花が咲いたような笑顔をいいます。愛らしい桃の花は男女を問わず、心の底から自然に湧いてくるような笑みを誘います。