穀雨 次候

霜止んで苗出ず(しもやんでなえいず)

4月25日〜4月29日頃

霜が止んで苗がよく育つ頃。

天候も安定し、陽気が増してくる晩春。稲の苗が育ち、青々としてくると、田んぼにはいよいよ水が引かれ、あちこちで代掻きが始まります。

苗代をつくる田んぼには、他の田んぼよりも先に水を引くので苗代水(なわしろみず)、苗田(なえだ)などの季語があります。

水路を開けるため、滔々(とうとう)と水が流れる音が響く「水の春」です。田んぼには、待ってましたとばかりに蛙たちが飛び込んで泳ぎ出します。

苗代時(なわしろどき)、苗代道(なわしろみち)などの季語も、苗代を愛しみ、希望を持って苗代を眺めてきた人々が生んだ言葉です。

水面には鏡のように空や雲が映り込み、田植え前のこの季節は一年でもっとも美しい水の国、にっぽんの風景が広がります。

田植え前の若々しい苗の色を「若苗色」といいますが、田んぼの苗だけでなく、自然界にもたくさんの若苗色があります。

晩春から初夏にかけて見られる黄味がかった新芽や新葉の色はこの季節、いちばんの目のご馳走です。周囲の小さな苗色にも目をとめて、愛しんでいただければと思います。

~生きる、72の季節~/霜止んで苗出ず

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