白露 次候

鶺鴒鳴(せきれいなく)

9月13日〜9月17日頃

「空澄む」は秋の季語で、澄み切った秋の大気を表す言葉です。水も澄んで美しく見えるので「水澄む」といい、虫の声や鳥の声、あらゆる物音がはっきりと澄み切って聴こえる様子を、「物の音澄む」といいます。

鶺鴒は古くから日本にいる身近な鳥で、一年中見ることができる留鳥(りゅうちょう)ですが、秋の季語とされています。「チチ、チチチチ」と鳴くいつもの声が、ある日ふと、冴え冴えと鋭く、響き渡るように感じられることがあります。昔の人はその声にハッとし、澄みゆく秋の気配を感じ取ってきたのでしょう。

鶺鴒はとても夫婦仲がよく、繁殖期以外でもつねにカップルで行動し、飛び立つときは互いに呼び合って移動します。『古事記』にも登場し、夫婦円満の象徴とされてきました。

日本に棲息する鶺鴒は三種類。背中が黒いセグロセキレイ、薄いグレーのハクセキレイ、鮮やかなレモンイエローのお腹をもつキセキレイです。鶺鴒はちょこちょこと歩いては立ち止まり、長い尾をしきりに上下させるしぐさが特徴で、「石叩き」「岩叩き」とも呼ばれていました。

澄んだ大気の中で、自然界の音がいっそう冴えて響く瞬間があります。鳥のさえずり、虫の音、風のざわめき。秋の音にどうぞ耳を澄ませてみてください。

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