白露 末候

玄鳥去(つばめさる)

9月18日〜9月22日頃

乙鳥(つばくろ)は妻子揃うて帰るなり 一茶

春、燕は一羽ずつ単独飛行で日本にやってきますが、秋は巣立った若鳥を連れ、数千羽の大集団となって南へ帰ります。
最初は小さな群れが、やがて大きな集団にまとまり、夕空を自在に乱舞する光景は圧巻です。

燕の渡りには河川敷や葦原といった集団ねぐらが欠かせず、「葦原の瑞穂の国」といわれる日本はかつてその環境に恵まれていました。
けれど近年は葦原が減り、竹やぶや街路樹をねぐらに選ぶ群れも見られるようです。

この時季から一ヶ月ほど、北から南へと次々に群れがやってきては入れ替わり、体力のある親たちが先に立ち、幼鳥たちは後半にまとまって渡っていくといわれます。
燕が集団で飛び去る姿を目にしにくいのは、あえて曇天や小雨の中を選んで旅立つためと考えられています。

燕は古来より害虫を食べ、稲作を守る益鳥として豊穣の象徴とされました。
家に巣をかけるのは繁栄の印とも。
また来年、元気に戻ってくることを願いつつ見上げる秋の空。朝夕の気温が一気に下がり、そぞろ寒を感じる頃です。

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