霜降 次候

霎時施(こさめときどきふる)

10月29日〜11月2日頃

金木犀が盛りを過ぎた頃、雨が降ったり止んだりする日が続きます。時を得て、程よく降ることから「時雨(しぐれ)」と呼ばれるようになりました。秋の終わりと冬の始まりを明快に告げる雨です。

「しぐれ」の読みは当て字ですが、「しばらく暗い」という意味で、一時的に空が暗くなることを表わしたともいわれています。七十二候では「霎」と書いて「こさめ」と読ませていますが、古くは「しぐれ」と読まれていました。

降ったかと思うとすぐ止んでしまう通り雨や、しとしと静かに降る雨で、長雨になることも、激しい雨になることもありませんが、ときに雨粒が大きくなり、屋根にあたる音が音楽のようににぎやかに聞こえることもあります。

旧暦十月十二日(11月上旬)は「時雨忌」です。松尾芭蕉が生前、時雨を好んで読み、ちょうど時雨の季節に亡くなったことから季語になっています。

初時雨(はつしぐれ)猿も小蓑(こみの)を欲しげなり 芭蕉

そぼ濡れて寒そうに震える猿の姿が目に浮かびます。多くの人が芭蕉を思い出しながら、心を澄ませ、静かに聞く雨音です。時雨は紅葉をいっそう鮮やかに染める雨として、古くからこよなく愛されてきました。

「時雨煮(しぐれに)」といえば貝や牛肉を生姜で煮た佃煮をさしますが、その語源は蛤(はまぐり)の旬と時雨の季節が重なっていたことと、味がさっぱりとしていて、口の中を時雨のようにすっと通りすぎていくからともいわれています。

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