小寒 次候
水泉動く(すいせんうごく)
1月10日〜1月14日頃

「寒九」は寒の入りから九日目(1月13日か14日頃)。「一年でもっとも水が澄む日」、「この日に汲んだ水は腐らない」といわれ、「寒九の水」は薬になる、肌がなめらかになるといわれていました。
実際にこの時期は一年の中でもっとも水質がよく、雑菌が少ないので、お酒もこの季節に仕込んだものを「寒造り」といい、「寒仕込み」のお味噌も雑菌が入りにくく、ゆっくりと発酵していくことで美味しくなります。
またこの日に降る「寒九(かんく)の雨」は豊作の兆しといわれてきました。
魚は脂がのり、ほうれん草やにんじんなどの野菜は寒いほど甘みが増します。干し芋、寒天、高野豆腐、葛粉など、寒さは色々なものを美味しくします。十分な寒さがないと黴(かび)が生えたり、固まらなかったり、日本には十分な寒さなしには完成しない伝統食がたくさんあります。
地上の厳しい寒さはまだ始まったばかりですが、地中深くでは静かに水が動き出し、凍土は下の方からゆっくりと溶け始めています。「水泉動」(しみずあたたかをふくむ)は、そんな地中の水の動きを表しています。はっきりと目には見えないけれど、春に向かうかすかな変化を繊細な目で見つめていた、先人達の眼差しを感じる七十二候です。